「カナダ産の食材を取り入れた日本料理」在トロント日本国総領事館シェフ 鈴木春菜さん インタビュー|特集「カナダ食学」

〝カナダ産の食材を取り入れた日本料理を提供することによって、普段食べている食材でも違った味、風味になるということを伝え、和食文化をさらに広げたい〟

 トロントの日本国総領事館公邸でシェフを勤めている鈴木さん。日本の調理師学校を卒業後、今回共演した在ホノルル日本総領事館の牧野雄太シェフの創作和食レストランで修行し、和食について学んだ経験をもつ。公邸では日本食材のみならず、カナダの食材を使った日本料理を提供することを心がけている鈴木シェフに実演ショーの舞台裏を振り返ってもらいながら、公邸料理人として日本食材と日本料理に向き合う姿勢について語ってもらった。

テーマは、日本食材を使い西洋の食卓に向けた料理の提案

 実演をしている時に、観客のみなさんが食材と調理の仕方にとても興味を持ってくれているというのが伝わりました。また実演を見るだけでなく、試食を通して日本食材の良さが伝わったのではないかと思います。ショーが終わってから観客の方々とも話をしたのですが、お肉を海苔で巻いて食べるのはビックリだったという感想や、どうやって作るのかと調理法まで聞いてくれる方もいて嬉しく思いました。これをきっかけにカナダの方々がこれまで以上に日本の食材を使って、調理する機会が増えると嬉しく思います。
 
 牧野シェフがハワイにいるので、カナダと時差があったため話し合いをするのも中々上手くいきませんでした。そんな中でも、スタッフの皆様に協力していただき、食材の調達や、どんなコンセプトにするのかまとめていきました。せっかく牧野シェフがハワイから来てくれるので、日本とカナダ、そしてハワイを合わせた料理にしようということでメニューを進めていきました。最初の料理でもハワイの塩を使っています。

 メニューは牧野シェフが得意な創作和食となっています。カナダの方々にも身近に感じてもらえるようなメニューを作ることを心がけました。メニューが決まってからは、日本の担当の方と、輸入できる食材について打合せしたり、カナダの食材を伝えるためにテレビ通話をしながら市場を回ったりしました。入手できないものがあったらメニューを一部変更するなどして、3か月以上かけてようやくメニューが完成しました。

 ショーで紹介した食材の他にも日本には素晴らしい食材がたくさんあります。さまざまな食材がカナダでも浸透して、日本料理はもちろんですが、今回のようにアレンジすることによって他の多様な食べ方でも美味しく食べられるということを知ってもらえたらと思います。

多様な食文化・食習慣を有するお客様をおもてなしする公邸料理人としての心構え

 日本料理は風味を大切にするので、カナダの食材を使ってもそれが伝えられるように心がけています。また、お客様によって日本食への関わりが変わってくると思うので、その方にあったメニュー構成にするようにしています。あまり日本食を食べ慣れていない方には、伝統的な献立にして日本料理を知ってもらえるように努めたり、日本に住んでいたことがある方であれば、その地域の特徴的な食材などをメニューに入れて構成するようにしています。

料理人としての気づき

 カナダに来る前は、どんな食材があるのか不安だったのですが、食材の豊富さには驚きました。また、日本よりもオーガニック食材が多く売られており、食材への関心が高いと感じました。同じ野菜やフルーツでも、日本で売っているものと味や食感が全然違っているものもあるので、どの種類のものが日本料理に合うのか試しながら使っています。

カナダにおける日本料理・日本食材の可能性

 カナダにはたくさんの日本食レストランがあります。日本からこんなに遠く離れたカナダにこれだけ日本食が広がっているのは素晴らしいことだと感じています。今回のレストランショーでもあったように、日本の食材は日本料理だけでなく、他の料理でもとても美味しく扱うことができます。それが浸透して、様々な料理店で日本産の〇〇ですと紹介してもらえるようになれば、さらに日本食が発展していくのではないかと思います。

今後の目標

 カナダにいる間にまだまだたくさんの方々に料理を振る舞うことになります。伝統的な日本料理を提供し、和食の文化を広げていくきっかけにしていきたいと思います。また、カナダ産の食材を取り入れた日本料理にすることによって、普段食べている食材でも違った味、風味になるということを伝えていけたらと思います。