枯渇性エネルギー → 再生可能エネルギー|特集「キラリと光る北米デジタルトランスフォーメーション」

枯渇性エネルギー → 再生可能エネルギー|特集「キラリと光る北米デジタルトランスフォーメーション」

ポストコロナ時代のカナダ・デジタル経済と加速する再エネ普及

 世界有数のエネルギー資源国であるカナダ。エネルギー産業はいま、再生可能エネルギーや脱炭素化、蓄電池による電力分散化など大きな変化に直面している。米大統領選挙でもクリーンエネルギー経済の実現は争点の一つでもあった。再生可能な風力や太陽光、電力貯蔵施設の設置などカナダでも今後ますます注目されるエネルギー産業を紹介する。

#01
電力を「貯める」ことで生まれる可能性

 トロントに拠点を置く企業「Peak Power」は電力コストの変動に対応するべく、電力を「蓄積する」というシステムを開発した。需要や供給のレベルにより変動しやすいという懸念点がある、電力コスト。今回「Peak Power」が開発したシステムは、価格が比較的低い時に電力を貯蓄し、必要な時にそれまで貯蓄した電力を使用するというものだ。金銭のように、「電力を貯める」という画期的なアイデア。即時に使用しないことで、より持続的な電力の供給と利用のシステムを構築することが狙いだ。現在は、州の傘下にある「Ontario Power Generation」や自動車メーカーなどともタッグを組み、電気自動車などにおける電力使用の効率化に取り組んでいるという。

#02
蓄電池の「パワー」を家庭にも!

 Peak Powerと似たような事業ではあるが、電力を貯蓄するためのプロジェクトに取り組んでいる最中の「NRStor」。具体的には、バッテリーのようなシステムに大量の電力を貯蓄プロジェクトだそうだ。このバッテリーの開発により、二酸化炭素の排出量削減やコストの削減の両方が期待されている。このシステムは商業用に向けてはもちろんのこと、家庭用に向けても提供されるそうだ。さらに、NRStorは現在、世界的な電気自動車メーカーのテスラと共に、停電などの非常事態に備えられるバッテリーを家庭用に開発している。これに限らず、オンタリオ州をはじめとするカナダ各地でも電力の効率化にまつわる様々なプロジェクトを遂行しているそうだ。これらのプロジェクトに共通することは「電力の貯蓄」であり、よりサステナブルなエネルギーの使い方が期待されている。

#03
二酸化炭素を「捕まえる」新たな取り組み

 ブリティッシュコロンビア州に拠点を置くクリーンエネルギーの企業「Carbon Engineering」。この企業が注目されることになったきっかけは9月中旬。今や誰もが知る「Shopify」に自社のソリューションを提供することが明らかになった。

Carbon Engineeringが手掛けるプロジェクトの大きな目標は「二酸化炭素を排除する」ということ。この大胆な目標に賛同したShopifyは、Carbon Engineeringの「二酸化炭素を空気中より直接捉え、排除する」というソリューションを2021年の8月より活用することを予定。空気中より排除された二酸化炭素は、より環境に優しい資源を再び作るために活用されるという。Carbon Engineeringの技術はニューヨークタイムズやエコノミストを含む多くの主要メディアにも取り上げられ、その話題性の高さが窺える。カナダ政府も掲げている、「ネット・ゼロ・ターゲット」を成し遂げるべくその期待が高まりつつある技術だ。

#04
カナダにおける電気自動車の製造をさらに加速させるために

 9月末に出されたある記事によると、トルドー首相とオンタリオ州のフォード首相を筆頭に、これからカナダにおける電気自動車の製造がさらに加速する見込みだという。米自動車メーカーの「フォード」がオンタリオ州のオークビルに設置している製造プラントに5億カナダドル(およそ400億円)もの額が投資がされるとの情報も寄せられている。フォード首相は電気自動車の製造・開発に対し、「(電気自動車に使われるバッテリーを)他から持ってくるよりもここで製造したい」とカナダでの一貫した製造へ意欲的な姿勢を見せている。これが現実となれば、既に競争において優位に立っているアメリカとの差を縮めることも期待されている。報道によると「産業におけるゲームチェンジャーになる」と、そのポテンシャルの大きさはすでに明らかだ。

#05
酸素と水素で生まれる新たな再生可能エネルギー

 トロントに拠点を置く企業「dynaCERT」はエンジンをはじめとする内燃機関をより環境に優しくするための事業を手掛けている企業であり、この企業が開発している技術の一つ「HydraGEN」が再生可能エネルギーへの動きを加速させる可能性を秘めているということで注目を集めている。「HydraGEN」は、電気分解を用いて酸素と水素を作り出し、これらの元素を燃焼のために供給するという画期的なテクノロジーだ。トラックなどの大型車両にも応用されることが期待されている。また、このような大型車両からのデータ収集なども手掛け、エンジンなどの燃料の効率性を計測することで二酸化炭素の排出量の削減などにも貢献しているという。多くの専門家が「新型コロナの感染拡大により、資源の転換は今まで以上に加速する」と言っている中、HydraGENのようなクリーンテック(環境問題解決とテクノロジーの融合)は、これからさらに注目を集めると期待が寄せられている。

#06
再生可能エネルギーを乗用車以外の乗り物にも

 バンクーバーに拠点を置く「Ballard」はクリーンエネルギーにまつわるソリューションを提供。中でも、Ballardが手掛けている、環境を改善するべく期待されている新たなエネルギー源、燃料電池が注目を集めている。大手の自動車メーカーであるアウディと共に開発した燃料電池。大手の自動車メーカーと開発したということもあり、様々な乗り物に活用されることが期待されている。自動車のみならず、船舶や航空機などにも応用することが可能だそうだ。これにより、今まで二酸化炭素の排出量を削減することが困難とされていたバスやトラックなども、より環境に優しい乗り物になることが期待されている。2013年よりパートナーシップを結んでいたこの二つの企業。今回の取り組みにより、再生可能エネルギーが多くの乗り物にも普及することがより現実味をおびることになる。

#07
捨てられるはずの廃水を再利用する新しい浄水システム

 廃水を再利用するためのテクノロジーを開発する企業「Swirltex」。工場などから排出される廃水を浄化するためのフィルターが中心的なプロダクトだ。水に含まれた汚物を「浮力」の違いにより除去するという画期的なテクノロジー。今までの浄水技術では限られた汚物しか取り除くことが出来なかったが、Swirltexのテクノロジーにより、様々な種類の廃水を効率的に浄化出来るという。また、他の浄水テクノロジーより少ないエネルギー量を使用しているため、環境にも優しいそうだ。多くの産業において問題視されている「水」や「汚水」の課題。中でも、石油などを採掘する際に出る汚水がカナダをはじめアメリカでも大きな問題になってるという。しかし、こうしたテクノロジーにより、再利用出来る「水」が増え、農業や工業に再び還元されることが期待される。

#08
鉱業をより「サステナブル」に

 機械学習や人工知能(AI)を活用し、鉱石の粉砕に使われるエネルギーの効率化を図る技術を開発しているのがブリティッシュコロンビア大学(UBC)に拠点を置く「Motion Metrics」だ。UBCの他にも、クイーンズ大学やサイモン・フレーザー大学など複数の教育機関とも提携している期待の企業だ。あまり環境に優しいイメージがない「鉱業」をよりサステナブルなものにするべく、事業を手掛けているMotion Metrics。肉眼に見える色よりさらに幅広い波長の光を捉える「ハイパースペクトルイメージング」を用いたセンサーや、物体の中にある粒子の分布を計測する「粒度分布測定値」などを活用することで、鉄鉱石の採掘や粉砕に用いられる機器の効率化を図るという。この技術は粉砕機のみならず、シャベルやトラックなどにも応用されるというので、「鉱業」全般のエネルギー使用により良いインパクトを及ぼすことが期待されている。

#09
Shopifyが期待を寄せるサステナブルなビジネスの数々

 今や世界的にも有名で、その勢いが止まらないカナダの「Shopify」。そのShopifyが、持続的、サステナブルなプロジェクトへの投資を目的とした新たな基金「Shopify Sustainability Fund」を設立した。この基金を通して、Shopifyはクリーンテックにまつわる事業を手掛ける11の企業に500万アメリカドルもの額を投資。中でも、二酸化炭素の排出量削減に注力している企業に目をつけているという。また、今回の投資先となった11の企業のうち、三つはカナダに拠点を置くベンチャー企業だそうだ。Shopify Sustainability Fundの関係者は「私たちが将来さらに成長するためには低炭素社会を実現しなければならない」とコメント。大企業による率先により、低炭素社会がより近い将来に実現されることが期待されている。

#10
温室効果ガスを測る上空の「センサー」

 モントリオールを拠点にする企業「GHGSat」は、排出されている二酸化炭素の量を計測する事業を展開する企業だ。そんなGHGSatは最近、およそ3900万カナダドルもの資金を調達した。様々な企業に対し、それぞれの工場や農場における温室効果ガス排出量の計測を可能にするソリューションを提供しているGHGSat。衛星と上空に設置するセンサーにより温室効果ガスの排出量を計測するという。今回調達された資金は、GHGSatが二酸化炭素の量を計測するために用いられる衛星を作り、打ち上げるために運用されるそうだ。GHGSatの最高経営責任者(CEO)はメディアの取材に対し「投資家の我々に対する関心と信念に感謝する」と前向きにコメント。GHGSatが手掛けるような技術のさらなる普及により、温室効果ガスの量の現状把握と共に、将来的な温室効果ガスの排出量の削減に期待が寄せられている。

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