【第19回】国際離婚とペアレンティング・コーディネーター|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

【第19回】国際離婚とペアレンティング・コーディネーター|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 カナダでは、両親の離婚後も双方の親が共に子の成長に関わることが、子にとって最良である、という考え方が定着しています。前回この考え方を背景とした共同親権、そして「子がそれぞれの親とどのように50%づつの時間を過ごすのか」の例を紹介しました。

 日本では、離婚後はどちらかの親が子の単独親権者となるので、共同親権に懐疑心を持つ方もあるでしょう。しかしカナダでは、共同親権を基準に親子関係を築いてゆかなければなりません。

 そこで今回は、共同親権での子育ての成功を支援するペアレンティング・コーディネーターについて、エキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。

コー・ペアレンティング

 両親の別居に伴い、子は様々な変化を受け入れなければなりません。両親と同時に過ごす時間がなくなり、それぞれの親と個々に過ごすことは、その変化の最たるものです。

 しかし、親自身が離婚という大きな転機を迎えているとき、我が子の心のケアが十分ではないと悩むこともあるでしょう。カナダで国際離婚を経験することになった日本人ならなおさらです。

 50/50共同親権は、両親が協力して子育てをするので、「コー・ペアレンティング」と呼ばれます。けれども、離婚に至る法手続やひとり親としての慣れない新生活など、想像を絶するストレスを抱えている両親にいったいどれほどの協力が期待できるでしょう。

ペアレンティング・コーディネーター

 そんなとき強い味方となるのが、ペアレンティング・コーディネーターです。

 特別な教育を受けて資格を取得した家族法弁護士などが仲介役として、両親の意思の疎通を促し、問題を解決に導いてくれます。そして、親が「子にとって何が最良なのか」を常に考えられるよう働きかけます。

 共同親権では、父親と母親の軋轢が子に影響を与えがちです。感情は冷静な判断を曇らせます。ペアレンティング・コーディネーターは、その豊かな経験から偏りのない視点で、親たちに的確な助言を与えてくれるのです。

ペアレンティング・アグリーメントと日本での休暇

 そんな助言にしたがって作成されるペアレンティング・アグリーメントは、「子供にとって何が最良なのか」に特化した計画書です。この計画書で、日常生活からお稽古事、休暇の過ごし方まで事細かに定めます。

 国際離婚を経験した日本人は、離婚後も子供を連れて日本を訪れたいと切望します。しかし相手方がフライトリスク(日本に行ったまま帰ってこない危険性)を疑い、この願いを聞き入れないことも珍しくありません。

 けれども「祖父母ら日本の家族と交流し、親の故郷の文化や歴史に親しむこと」は、子にとって最良であると見なされます。ですからフライトリスクが証明されない限り、夏休み一ヶ月程度の日本での休暇は、ペアレンティング・アグリーメントに組み込まれるのが一般的です。

 カナダでフルタイムの仕事に就いているなど、カナダ社会との深い関わりが示せれば、フライトリスクを疑われる可能性は低くなります。つまり親が離婚後、カナダでの生活をできるだけ早く確立することが「子にとって最良である」と言えるでしょう。

「50/50共同親権とは、親権を50%ずつ分けるというよりも、むしろ子に対する責任を100%持つ親が二人いると考えてはどうでしょう。つまり50%×2ではなく100%×2なのだと」と、あるペアレンティング・コーディネーターが話してくれました。

 たしかに、子と一緒にいないときも親は常にその子の親なのですから、常に親としての誇りを保てる言動を心がけるべきなのかもしれません。 

 共同親権やペアレンティング・アグリーメントに関するご相談は、日本語でのサポートが一貫して受けられるネイソンズ、シーゲル法律事務所にお問い合わせください。

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。