初めて唯々なにもない平原地帯から、いきなり岩肌の聳え立つ雄大な山々を見たときの感動は今でも忘れられません、と語る横田さん。この感動をぜひ多くの方にも味わってもらいたく、通年で観光ガイドならびに、夏はハイキングガイドとしてロッキー山脈の魅力を案内している横田さんにバンフとカナディアンロッキー、そして先住民の歴史について語ってもらった。
プロがおすすめする絶対に行った方がいい観光名所とレアスポット
#01 一般車両では行く事が叶わない湖
「モレーン湖 (Moraine Lake)」
レアスポット
- ミスタヤ渓谷 (Mistaya Canyon)
- パンサー滝 (Panther Falls Trail)
- 早朝モレーン湖
- 早朝ルイーズ湖
- 夜中の星空(オーロラの観れるチャンスがあるかも!?)
世界遺産
「カナディアン・ロッキー」山脈の大自然
「ロッキーマウンテン」は米国モンタナ州の北部からカナダ・ジャスパーの北部までの長さ1450キロメートル、幅は120キロメートルの山脈です。現在バンフやジャスパーと呼ばれているエリアはかつて赤道に近く温暖で広大な内海だったが、これらの内海は15億年間に進出と後退を繰り返し周りの大陸から土砂が堆積され、北米プレートの西への動きと太平洋プレートの東への動きのぶつかり合いで7億年前から数センチずつというゆっくりした地殻変動があり断層を伴い隆起してきた。当時のロッキー山脈は9000メートルの高さがあり、凹凸の少ない大きな丸い丘の様であったと推測される。
現在は過去に4回程の氷河期によって氷河が移動するたびに山々削り谷間を侵食しながら平原地帯に土砂を運んでいたので、現在のような3000メートル前後の山々とななった。
ロッキーで見られる化石
先カンブリア時代の泥岩(Burgess Shale)からは体に硬い部分を持たない軟体海洋生物の化石も発見されている。
それぞれ異なる時代の地層から三葉虫、植物化石や古生代の生物化石も出ていたり、カルガリーの東方面に位置するドラムヘラー街ではジュラ紀、白亜紀の地層から恐竜の化石も見つかっている。
このように先カンブリア紀、古生代、中生代の地層から様々な生物の化石が発見されていることで有名である。
先住民(Aboriginal)の歴史を知る旅
2016年のカナダ統計局によると、カナダには約167万3780人の先住民が暮らしている。
- ファーストネーションと言われる北米インディアン約97万7235人
- メティスと言われる先住民とヨーロッパ人の両方を祖先とする人々約58万7545人
- イヌイットと言われる北極地方の人々6万5025人
- 政府非公認ファーストネーション約4万人
現在カナダには、約3371の居留地(Reserve)が存在し、ファーストネーションの民族は619で、独自の言語を使っているグループは50以上とされる。
ツアーや施設を通してその歴史を知る
カルガリーでは100%先住民経営の「ペインティドウオーリアーズ」で、文化体験、憩いの隠れ家、グランピング、週末サバイバル体験、薬草探しの散策、アーチュリー等のアウトドアプログラムを体験できるものもある。
アルバータ州「フォートエドモントン公園」
先住民体験施設があり、生きた歴史を展示する博物館としてはカナダ最大級でこの地域の先住民であるファーストネーションやメティスの伝統的な暮らしを見ることができる。
「ロイヤル アルバータ博物館」
人類史ホールがあり先住民に由来する、資料1万8000点が収蔵されている。
「トーキング ロック ツアー」
この地域の地質学的に不思議な場所を巡るツアーを開催している。
「エドモントン リバー バレー ディスカバリー ツアー」
市内や川沿いのハイキングを楽しむことができる。
歴史を知る
これまで虐殺や弾圧、同化政策を乗り越えて、差別や貧困に喘いでいた多くの先住民部族が、部族自治権を行使して居留地にカジノを誘致し、莫大な利益を作り出し、その収益の一部は、インフラ整備や住宅事情を含む生活環境の改善、そして雇用や教育機会の増加、言語教育や伝統文化の復興、地域の活性化に役立ててきた。
しかし未だに居留地の貧困は深刻で、73%のファーストネーションの居留地の水道システムは危険な状態、118のコミュニティーでは煮沸しなければ水道水を飲めないという実情がある。
歴史的なトラウマも暗い影を落とし、1883年から1969年に施行された「インディアン奇宿学校」の制度により、約15万人の先住民の子供達が強制的に居留地から引き離され、先住民の伝統文化や言語を消す「同化教育」を受けた。言い換えれば、文化的ジェノサイドを目的とした政策であったとも言える。
「リトルビックホーンの戦い(Battle of the Little Bighorn)」
1876年6月25日、モンタナ州北部を流れるリトルビックホーン川流域でアメリカ陸軍と北米先住民との戦いである。ジョージ・アームストロング・カスター(George Armstrong Custer)の率いる第七騎兵隊700名余りが全滅した。当時はアルバータ州南部にいた先住民達が応援に駆けつけていた。
癒しとハイキングの魅力を堪能できる
レイクルイーズ
ロッキーの宝石と謳われる美しい湖「レイクルイーズ」は、午前中に行かれるのが順光で良い。
クローフット氷河
カラスの3本指のように山頂の氷原から氷河が流れている。
ハーバード湖
穏やかな朝はレイクルイーズ方面の山々が湖面に映される。
水鳥湖
春と秋に渡り鳥が飛来して羽休みをする湖。
ボー湖
ここからボー川がロッキー山脈を後に平原地帯を流れハドソン湾から大西洋に注いでいる。
ペイト湖
山の中腹から見下ろす四季折々違った色に見える湖。
ビックヒル展望台
山の中腹から見下ろす雄大な景色。
ミスタヤ渓谷
おすすめレアスポット「ミスタヤ渓谷」は、ペイト湖と水鳥湖から流れて来た水量により深い谷間を形成した渓谷。
ウィーピングウォール
春先は雪解けにより水量の多い滝だが、夏頃からは水量も少なく涙のような滝。
パンサー滝
おすすめレアスポット「パンサー滝」
片道1.3キロ、標高差76メートルの優しいコースだが、雨の日は奨励できない。滝の近くは石灰岩紛のコースで濡れると粘土のように滑る。午前中の太陽の日が当たる時間帯が一番おすすめ。
モレーン湖
ロッキーの秘境と呼ばれるほどの美しさで、一日位ても飽きない。ただし、一般車両では行けないので、ツアーまたはシャトルバスを利用すること。時間的には10時頃を目安に行くと、湖面まで太陽の陽が届き美しさが増す。
雪上車観光
地球上で現在も残る氷河の上を唯一散策出来るツアー。
エメラルド湖
エメラルド色の美しい湖、天気が良ければカヌーが楽しめる。
パーカーリッジ
「パーカーリッジ」
片道2.4キロ、標高差250メートルの優しいコースで、尾根伝いまで行くと反対側にはコロンビア大氷原から流れ出る、9キロの長さを誇るサスカチワン氷河を見下ろすことができる。
スカイウォーク
断崖絶壁に設置されたガラス張りの渡り廊下を歩いてくるスリル満点のコース。
タカカウ滝
北米で一番豪快な滝で、落差は350メートル。午前中は逆光で虹が見られないので、おすすめは午後遅く。
温泉
景色の良い硫黄温泉。
バンフ スプリングス ホテル
森の中に佇む古城の様なホテル。
オハラ湖のハイキング
一日42名様しかシャトルバスに乗れない厳しい場所だが、天空の湖と言われている程の秘境。
キャッスル山展望台
ロッキーの観光で最初に立ち寄るお城の様な山とボー川を見る観光スポット。
バンフ
朝早くに行くことがおすすめ。夕方からは長者の列ができる。乗馬は、一時間のコースがあり、川を渡ったりゴルフコースを回って来る優しい乗馬で、川下り、透き通った川を下って行く初心者用のコースだ。
横田 文夫さん(Alpine World Tours)
1952年生まれ、1971年高校卒業と共にカナダに2年間の農業研修生として渡加。一時帰国を経て、次男に実家の酪農家を任せてふたたびカナダに戻る。カナダに戻ってからはバンフのお土産屋さんで働き、スキーやゴルフを楽しむとともに、日本からのお客様を山歩きに案内している。1987年に会社を設立、1995年に「The Association of Canadian Mountain Guides」ハイキングガイドのライセンスを取得、2001年には「Mountain Parks Heritage Interpretation Association」国立公園ハイキングガイドライセンスを取得。