日本のラーメンシェフがカナダで進化を遂げる時 通堂ラーメン 伊藤ゆうじさん インタビュー[人生のBEFORE AFTER]|特集 カナダライフBEFORE AFTER

所持金20ドルからスタートしたトロント生活

 地元である鹿児島から、福岡、そしてトロントへ。それぞれの土地に柔軟に溶け込みつつも、ご自身のブレない軸を持っているゆうじさん。日本を飛び出したラーメンシェフがトロントで働くことになったきっかけ、ラーメンへのこだわり、今後の目標について熱く語る。

ー通堂ラーメンで働くことになったきっかけを教えてください。

 約1年前に渡航費のみを握りしめてこちらに来た当時は残金が20ドル、“How are you?”がわからないくらいの英語力という状態で、急いで仕事を探す必要がありました。以前福岡にいた時、豚骨ラーメンの店で働いていたこともあり、自分で美味しいラーメンを探して食べ歩き通堂ラーメンに出会い、働かせてもらうことになりました。

いざラーメンの世界へ…!
ゆうじさんの作るラーメンの魅力

ーラーメンの世界でお仕事を始められたのはいつですか。

 18歳の時に地元の鹿児島から福岡に上京しました。福岡らしいことを求めて行き着いたのが豚骨ラーメンでした。

ーラーメンの世界の〝修行〟とはどのような感じですか?

 私の場合はトッピングや餃子から始まり、段々と職人さんに付いてイロハを教わるようになりました。スープ作りに時間をかけるお店だったので「全過程のスープの味を舌で覚える」というスタイルでしたね。その後はメンマや麺の湯切りなど本格的なラーメン作りを覚えていきました。

ー職人の世界ですね!一人前になるにはどのくらい時間かかるのでしょうか。

 私自身まだ一人前ではないですが…。初めて店長をやらせていただいたのは働き始めて4年目の頃でした。

ーゆうじさんにとって、ラーメン職人と素人が作るラーメンでは何が決定的に違うと思いますか。

 私にとって重要なのは〝トータルバランス〟です。 例えば使いたい麺に合うスープを作ったり、命ともいわれる〝かえし〟と全体のバランスを考えたり、トータルオーガナイズできるのが職人ではないかと思っています。

ーそんなゆうじさんが惚れた通堂ラーメンの魅力を教えてください。

 メインの豚骨ラーメンは土台のしっかりしたスープと〝かえし〟とのバランスが良いところが魅力です。スープは甘みのある香りがして、良い複雑味があると思います。当店にしかない沖縄そばも他では食べられない特殊な麺と優しい味が特徴です。

トロントならでは?!
シェフにとって刺激的な環境

ートロントに来て最初に色々なラーメン店を巡ったそうですが、感想はいかがでしたか?

 想像していたよりもレベルが高かったです。コンセプトのしっかりしたお店が多い印象で、勉強になります。

ーお店には好みや感覚の違う様々な国の方が来店されると思います。お客さんからのフィードバックについてどのように感じていますか?

 多くのお客様がスープまで完食してくださり嬉しい限りですが、時にはネガティブな感想もあります。全ての方に合わせられないのは仕方ないことですが、フィードバックはしっかりと受け止めたいと思います。期間限定メニューなどで様々なお客様にアピールしていきたいと考えています。

ートロントには様々な国の飲食店がありますよね。このような街は料理人にとってどのような刺激があると思いますか?インスピレーションが湧いたりするのでしょうか?

 とても刺激的です。食材の新しい使い方に気づいたりもします。日本では色々な国の料理を食べるタイプではなかったのですが、こちらでは中華料理、韓国料理、フレンチ、イタリアンなどを楽しんだり影響を受けたりしています。当店はリトルイタリーにあるので地域の特色に合ったアプローチもしていきたいです。

ー海外でもラーメンを食べ慣れたファンが増え、求められるレベルも高くなって来ているのではないでしょうか。日本と全く同じようにできない難しさはどのようにカバーされていますか?

 丁寧さやラーメンへの愛情がとても大切だと考えています。仕事を教わった職人さん達に比べると私はまだ駆け出しですが、彼らよりいいものを作ろうという気持ちでやっています。

多国籍ならでは、エリアに合った個性ある店舗を!

ー通堂ラーメンを今後どのようなお店にしていきたいですか?

 オーナーともいつも語り合っているのですが、多店舗を展開した上で、1店舗ごとに個性を出したいと考えています。出店するエリアのニーズに合わせて特色を持たせつつ、レギュラーカスタマーの方にも色々な味を楽しんでいただけるようなお店にしたいです。

ラーメンのみにとどまらない?!今後のビジョン

ーゆうじさんの今後の目標ついて教えてください。

 実はバンドをずっとやっていて音楽をもっと極めるために鹿児島から福岡へ行きました。もちろん今でもトロントで音楽活動を続けています。もちろんラーメンは好きなので今後も続けていきますが、バンドも本気で取り組んでいます。作り手として傾ける情熱や熱さはラーメンも音楽も変わらないと思っているので、どのフィールドでも自分のスタイルで生計を立てられる人になりたいです。


日本でも多数店舗を構える 沖縄発の「琉球新麺 通堂」

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