ダウンタウン・コリアタウンから広がる病みつきになる「韓国鍋」|#食の編集部|特集「かわいいけど残念な国民的アイコン!カナダグース 」

ダウンタウン・コリアタウンから広がる病みつきになる「韓国鍋」|#食の編集部|特集「かわいいけど残念な国民的アイコン!カナダグース 」

寒さが深まるトロントの街で、ふと恋しくなるのは、体の芯まで温めてくれる鍋。世界各国の鍋が集まるトロント。唐辛子の香り、海の旨味、とろけるチーズ。韓国の家庭や酒場で親しまれてきた鍋料理には、素材の力と人のぬくもりが詰まっている。甘辛チーズが誘うダッカルビ鍋、潮の香りが立ちのぼる海鮮鍋、スパムと麺が踊るプデチゲ、骨付き肉の旨味が沁みるカムジャタン。ソジュ片手に今夜はトロントのコリアタウンで“韓国鍋”を囲もう。

Seor Ak San

甘辛×濃厚チーズの渦に、箸が止まらない
Korea Houseで出会う、至福のチーズダッカルビ鍋。

 韓国料理の王道「ダッカルビ」にたっぷりのチーズを絡める。日本でも一昔前にブームになった“チーズダッカルビ”。 Korea Houseの一鍋は、その“とろける濃厚さ”を超えて、あとを引く深い味わいで記憶に残る。

軸になっているのはコチュジャンのコクと甘辛。そこへトマトの酸味で輪郭をつけたスープが加わり、洋風のまろやかさへとスライドしていく。柔らかく煮含めた鶏肉、くったり甘いキャベツ、もちっとトッポッキ。そこへ熱でとろけたチーズが巻きつく瞬間、甘味・辛味・旨味・乳脂の重なりが一気に立ち上がる。

食べ方は単純、しかし飽きない。具材をひと口、チーズをひとすくい、スープを少し。辛味が追ってきたら、再びチーズで丸める。終盤は“追いチーズ”で濃度を上げるのもいいし、締めにご飯を落としてリゾット風にまとめるのも幸福だ。鍋の底に溜まった旨味を余さず回収できる。

ダッカルビは本来、鶏肉と野菜をコチュジャンベースで炒める春川(チュンチョン)発祥の庶民料理。そこへチーズを合わせる発想は近年の人気アレンジだが、Korea Houseの鍋仕立ては“つまみ良し、食事良し”で、酒場的な楽しさをしっかり抱いている。

店はトロント・コリアタウンの老舗。気取らない雰囲気の中で、湯気ごと頬張るのが似合う。寒い夜に、友人と、家族と、熱を分け合いながらどうぞ。

Korea House 666 Bloor St W

海鮮と唐辛子が奏でる、冬のごちそう鍋
Jin Dal Lae Koreanの「ヘムルタン(海鮮鍋)」を味わう。

ベースは蟹の出汁が芯になったコチュジャンスープ。真っ赤な見た目に反して、口に含むと意外なほど澄んだ味わいで、じんわりと体の内側から温かさが広がっていく。そこに加わるのは、エビ、イカ、貝類、そして旬の野菜。具材がぐつぐつと煮込まれるたびに旨味が重なり合い、スープの輪郭が少しずつ丸みを帯びていく。

蟹の殻から溶け出す濃厚な旨味、アサリやムール貝の出汁、立ちのぼる湯気に、唐辛子の香りが重なっていく。ピリ辛のスープに、海鮮の旨味がしっかり溶け込んでいる。Jin Dal Lae Koreanのヘムルタンは、一口ごとに味の深みを感じる鍋だ。

まずスープをひと口。唐辛子の刺激が喉を抜けるころ、蟹の甘みが追いかけてくる。次に、具材をすくってチョンヤン(青唐辛子)の香りを添えると、よりキリッとした辛さが際立ち、箸が止まらない。

豆腐はスープをたっぷり吸わせてから頬張るのが正解。唐辛子と海の旨味をまとったタンミョン(韓国春雨)は、つるりとした食感で、鍋の中のすべての味を運んでくれる。

そして最後のお楽しみは、鍋の底に残った“旨味の宝庫”。ご飯を入れて軽く煮立てれば、濃縮された海鮮スープがまるでリゾットのような一品に変わる。香ばしいおこげができた頃が食べごろだ。

ヘムルタンは、韓国では“家族で囲む冬のごちそう”。トロントで迎える寒い夜に、辛さで体を温めながら友人と家族と味わってはどうだろう。

Jin Dal Lae Korean 647 Bloor St W

老舗で味わう、やさしいホルモン鍋
Korean Village Restaurantの鍋で感じる、ホルモンの滋味。

1978年創業、トロント・コリアタウンの老舗。韓国料理をベースに、どこか和のやさしさを感じさせる味わいが特徴で、地元の常連客や著名人にも長く愛され続けてきた。店内には賑わいの中にも穏やかな空気が流れ、まるで家族で囲む食卓のような心地よさがある。

鍋の主役は、丁寧に下処理された牛の小腸。火にかけると、脂の甘い香りがふわりと立ち上がり、スープに深いコクと旨味を溶かし込んでいく。ぷりっと弾む食感、噛むほどにあふれる肉汁。そこにキャベツ、ニラ、もやしなどの野菜が加わり、脂の濃厚さをやわらかく受け止めてくれる。

控えめな塩味のスープは、脂の旨味を引き立てながらも重たくならず、最後までするりと飲み干せる軽やかさ。太めの韓国麺がその旨味を余すことなく吸い込み、一緒に口にすれば、まるで出汁を食べているかのような満足感が広がる。

脂の甘み、出汁のコク、野菜の旨味、ホルモン鍋の魅力は、噛むごとに変わる表情にある。すべてがひとつの鍋の中で調和し、体の芯から温まる幸せをくれる。
日本のもつ鍋にもどこか通じる余韻をぜひ楽しんで欲しい。

Korean Village Restaurant 628 Bloor St W

ソウルの下町の味を、Bloorで。
The Owl on Bloorのプデチゲ

 鍋のふたを開けた瞬間、立ちのぼる香りはどこか懐かしい。スパム、ソーセージ、ハム、インスタント麺。“部隊鍋(プデチゲ)”と呼ばれるこの料理は、朝鮮戦争の時代、米軍基地から流れてきた食材を韓国流にアレンジして生まれたという。

ハムやソーセージをたっぷり詰め込み、コチュジャンで辛味をつけ、野菜と餅、豆腐を加えてぐつぐつと煮込む。庶民の知恵と工夫から生まれた、いわば“寄せ鍋の原点”だ。

The Owl on Bloorのプデチゲは、こってりしながらも不思議と上品。その理由は、スープのベースに使われる牛骨だし。コク深く、まろやかで、旨味がしっかりしているから、スパムやインスタント麺といった“ジャンク”な要素さえひとつの料理として溶け合ってしまう。

まずスープをひと口。甘辛い香りが舌を包み、次に麺とソーセージをすくって頬張る。牛だしの旨味が口の中いっぱいに広がり、チーズをのせれば、さらにまろやかな余韻が加わる。煮詰まるほどに味が深くなり、最後にはご飯を加えてスープの旨味を余さず楽しむのが、この鍋の醍醐味だ。

プデチゲは“王道中の王道”と呼ばれる韓国の庶民鍋。The Owl on Bloorの一鍋には、その歴史と親しみやすさ、そして確かな美味しさが詰まっている。トロントの冬の夜、気取らず囲むには、これ以上の鍋はない。

The Owl on Bloor 700 Bloor St W

骨ごと味わう、旨味の極み
The Owl on Bloorのカムジャタン

スープの中から、骨付きの豚肉が豪快に顔を出す。韓国の庶民鍋の王道、カムジャタン。The Owl on Bloorの一鍋は、他の店と比べても見た目のインパクトに負けない、深い味わいで知られている。

ベースはじっくりと煮出した豚骨スープ。そこに、唐辛子と特製コチュジャンを合わせ、香り高く仕上げている。辛味の奥には、骨から滲み出たコクと甘みがしっかり感じられ、見た目よりもずっとまろやかで、思わずスプーンが止まらない。

大ぶりにカットされた、“カムジャ”の語源でもあるじゃがいもが、スープの旨味を吸い込み、ほろりと崩れる瞬間がたまらない。そしてこの店のカムジャタンは、マンドゥ(韓国餃子)やたっぷりの野菜が添えられ、ボリュームも満点だ。

まず骨付き肉を箸でつまみ、ゆっくりとほぐす。長時間煮込まれた肉は驚くほど柔らかく、骨からするりと離れる。その肉をスープと一緒に頬張ると、辛味・脂・旨味が一体となって体の芯まで温かくなる。白ご飯と一緒に食べてもスープの濃厚さがちょうど良く中和され、最後の一口まで飽きることがない。

もともとカムジャタンは、豚の背骨やじゃがいも、野菜を煮込んだ庶民的なスタミナ鍋として、韓国では酒場の定番。寒い夜、仲間と鍋を囲みながら焼酎を傾ける、そんな時間をぜひ過ごしてみてはいかがだろう。

The Owl on Bloor 700 Bloor St W

辛くない韓国鍋は、牛肉ときのこの旨味がやさしく溶け合う
Seor Ak Sanのプルコギきのこ鍋

トロントの韓国料理ファンに長く愛されている Seor Ak San。Bloor West の一角で静かに湯気を立てるこの店の鍋は、どれも素朴で温かい。
中でも人気なのが、甘辛い牛肉とたっぷりのきのこを合わせた、プルコギきのこ鍋だ。

スープのベースは、サーロインビーフをマリネした際ににじみ出る旨味と、野菜から滲み出る出汁。そこに醤油とコチュジャンをほんのり効かせ、まろやかな甘辛さに仕立てている。最初のひと口で感じるのは、牛肉のコクと香り、そしてきのこの自然な旨味。きのこの食感がスープに層をつくっていく。

鍋の中には、春雨(タンミョン)や餅、彩り豊かな野菜がたっぷり。時間が経つほど味がしみ、最後には具材すべてがひとつに溶け合う。辛味は控えめで、スープを飲み干したくなるほどのやさしい味。ピリ辛鍋が苦手な人にもおすすめで、食べ終えるころには体の芯からぽかぽかと温まる。

プルコギ鍋の魅力は、その“バランス”にある。肉の旨味、きのこの香り、野菜の甘み、どれかが主張しすぎることなく、全てが穏やかに寄り添い合う。最後はスープにご飯を落として雑炊風に。しみ出た旨味を余すことなく味わう、その瞬間こそが最高のご褒美だ。
心をほっと落ち着かせたい、そんな一夜にぜひどうぞ。

Seor Ak San 357 Spadina Ave

ジャンクなのに、やみつき。チーズとスパムが溶け合う
Seor Ak Sanの若者定番鍋「プデチゲ」

トロントで韓国料理といえば、Seor Ak Sanを外すことはできない。学生や若いカップルでいつも賑わうこの店で、一番人気の鍋といえば、やはり プデチゲ(部隊チゲ) だ。

たっぷりの肉と野菜、豆腐に、ソーセージやスパム、そしてインスタントラーメンまで入ったその鍋は、見た目からしてボリューム満点。表面にとろけるチーズがかかり、湯気の中でゆらめく姿は、見ているだけで食欲をそそる。

味のベースは、唐辛子とコチュジャンで仕立てたスパイシーなスープ。ピリッとした辛味の奥に、肉の旨味とチーズのまろやかさが広がり、どこか洋風の濃厚さを感じさせる。口に運ぶたびに、ソーセージの塩気、ラーメンの食感、とろけたチーズの甘みが交互に押し寄せる。

韓国戦争の時代、米軍基地から流れてきたスパムやソーセージを使って生まれた庶民の鍋「ブデチゲ」。そのルーツがあるからこそ、「少しジャンクで、でも温かい」味わいが、若い世代にも響くのだろう。

食べ方は自由だ。ラーメンをすすり、チーズを絡め、スープをすくって。辛味が強くなってきたら、白ご飯を入れてひと息。鍋の終盤に、旨味を吸ったスープとチーズが一体化し、マック&チーズのようなまろやかな甘辛さに変わる。

気取らず、笑いながら、みんなでグツグツの鍋を楽しみたい時にぴったりだ。

Seor Ak San 357 Spadina Ave