風邪に抗生剤って必要?!そもそも抗生剤って何に効果があるの?

風邪に抗生剤って必要?!そもそも抗生剤って何に効果があるの?

寒い日の続くカナダ。風邪をひいたり、咳が長引いている人も多いよう。患者様の中には、日本から持ってきた処方薬や友達からもらったという薬を服用してみたという人がいます。市販の風邪薬くらいであれば自己判断で服用しても問題ないことがほとんどですが、以前に貰った抗生剤が余っていたり、念の為と日本から持参されているということに驚かされます。そもそも日本でもカナダでも抗生剤は処方薬であり、必要に応じて処方されているはず。予備があるということ自体に問題があります。そもそも抗生剤ってなんなの?今日はそんなお話です。

抗生剤とは

抗生剤や抗生物質と呼ばれている薬は、抗菌剤の同義で使用されていることがほどんど。英語ではAntibioticsと訳されます。抗菌剤の他に抗ウイルス薬(Antiviral drugs)や抗真菌薬(Antifungal drugs)なども次々と開発され、総合的に抗生剤・抗生物質と広義で使用されることもあります。ここでは抗菌剤という意味での抗生剤のお話をしていきます。

医師が抗菌剤を出してくれない?!それはこんな理由から

効果が期待できないから

年中を通して多くの人がかかる風邪。一般的に風邪はウイルス感染による上気道感染症。抗菌剤は効果がありません。もちろん、中耳炎や気管支炎、肺炎などの細菌感染を併発した場合は、抗菌剤は有効であり処方されます。風邪で1週間ほどで快方にむかわない場合や高熱や息切れなど別の症状が出たり、回復どころか悪化したという場合は再診するように、と指導されるのはその為です。

副作用があるから

どんな薬でも副作用があります。肝臓や腎臓に負担がかかるだけでなく、アレルギーが起こる可能性もあります。また、抗菌剤は悪い菌を攻撃するだけでなく、腸内の善玉菌にも影響します。抗菌剤を飲んで下痢になるという人も少なくありません。また、女性の場合は細菌バランスが崩れることにより、カンジダ膣炎を発症するケースもあります。

耐性ができてしまうから

抗菌剤のむやみな又は誤った服用は、耐性菌を作る原因となります。耐性菌ができてしまうと抗菌剤は効かなくなり、その耐性菌が広がってしまうことも懸念されます。

抗菌剤を処方されて絶対にやってはいけないことの原因と対処法

抗菌剤を処方される場合、「必ず飲みきってください。」と医師や薬剤師より指導されます。それでも症状が回復したと自己判断でお薬を止めるという方は多くいます。それ、危険です。1回2錠と指示されたのに、1錠だけ飲むなども危険です。飲みたくないなら、最初から全く飲まない方がマシ。

抗菌剤は菌を死滅させる為に服用します。一部の菌が死に症状は回復、一部生き延びた菌が、その抗菌剤に対しての耐性をつけてしまうことにつながります。抗菌剤が市販薬として販売され乱用されているインド、近年耐性菌が多く発生し、抗菌剤が一切効かないというケースが発生しているというニュースが話題になりました。

近年、耐性菌が世界で拡大方向にあるということで、世界保健機構(WHO)も耐性菌対策として正しい抗菌剤の服用に関する啓蒙活動を行っています。

私たちにできること

①求めない

抗生剤を出して欲しいと医師に迫る患者様も少なくありません。医師が抗菌剤を出さないのには、上記のような理由があります。

②飲むならきちんと飲む

服用方法はしっかりと守り、最後まで飲み切りましょう。自己判断で服用しないこと。

③もらわない

人の処方薬はもらわない。

④あげない

人に自分の処方薬はあげない。

鶴 慶子さん(RN-日本、RPN-オンタリオ州)

日本で9年看護師経験を積んだ後、渡加。ジョージブラウンカレッジナーシングコースを卒業後、オンタリオ州看護師免許を取得。現在はトロント市内の医療機関で看護師として勤務する傍ら、日系コミュニティー向けの医療サポート会社WELLNESS KIZUNAのクリニカルディレクターとして活躍中。