ギリホリの末に私が選んだ道

ギリホリの末に私が選んだ道

私は2009年末に初めてトロントにワーキングホリデーでやってきた。いわゆる30歳の「ギリホリ」だった。カナダに来るまでに既に約9年看護師としてガツガツ働いていた為、リフレッシュ留学のつもりで1年間よく遊んだ。イエローナイフにオーロラを見に行ったり、キューバに行ってビーチで泳いだりと「ホリデー」を満喫していた。

日本でシフトワーク&残業続きの仕事をしている時には想像できないくらいにお気楽な体験をたくさんし、1年間はあっという間に過ぎ去った。遊ぶと決めて来たワーホリ生活だったが、なんだか「後悔」が残った。何かの縁でたどり着いたここカナダで、何か「達成したい」と思うようになり、カレッジに行ってみようと思った。さて何を勉強しよう?やっぱり看護師?でも、日本語でも言い間違い、聞き間違いが大きな医療ミスを引き起こす可能性があるのに、カナダで看護師になるなんて無理無理と少し諦めモードに入っていた。

じゃあ何をすればいいのだろう?私は才能もないのに「デザイン系にでも行っておけばいいか?」とか、Excelの関数機能もまともに使えないのに「これからの時代はITでしょ」などと色々血迷った。でも、実際に働く自分を想像した時、頭に浮かんだのはやっぱり看護師だった。看護師を目指そう!私は心に誓った。

とにかく長い長い道のり

カレッジに入るにしても、まずは英語をどうにかしなければならない。ESLでカレッジに入るための勉強を始め、その後カレッジのPre-Health Scienceと呼ばれる医療系の本科コースに入学する為の準備コースを修得する必要があった。準備コースとはいえ、授業についていけるのだろうか?30歳過ぎで今更、学生としてやっていけるのだろうか?と不安でいっぱいだった。案の定、先生が言っていることが全く理解できない。物理の授業なんて日本語でも分からないのに、英語で説明されても分かるはずがない。でも後には引けなかった。すでに高い授業料を1年分収めたし、親戚や友達にもカレッジ入学宣言をしてしまっていた。もう頑張るしかない。

10歳以上年下のクラスメイトに助けてもらったり、人生初の勉強で徹夜も経験し、どうにかPre-Health Scienceコースを終了。無事にPractical Nursingのプログラムに入ることが決まった。嬉しい反面、まだあと2年かと少し凹んだ時期もあったが、またもや授業料をもう払ってしまっていた為、腹を括った。2年間のプログラムは確かに大変だった。

愚痴を書き始めたら、TORJA1冊分くらいになるだろう。振り返れば早かった3年と言いたいところだが、実際に長い長い道のりだった。すでに9年も正看護師経験があるんだし、カレッジではそれを英語で復習するくらいと思っていたが、実際得たものは復習以上だったように思う。あのまま日本に帰国し、病棟勤務に戻っていれば、今頃は病棟主任くらいに出世していたかもしれない。それもそれで良い選択であったようにも思う。でも「ギリホリ」でカレッジすら遅すぎると思っていた自分が、まだまだ新しいことにチャレンジしたいと思えるのは、この辛かったカレッジ時代を乗り越えたからだろう。

曖昧且つハッキリとした人生の目的

今思えば、カレッジに入学を決めた頃、私は英語で医療専門用語をペラペラと操る自分を想像し「目標」としていた。しかし、それは目標というよりは、ただの願望であることにカレッジに入学後気づかされた。それからは各学期、小さな目標を持つことで、最終的にカレッジを卒業するという目標を達成出来たのだと思う。苦手な科目もBは最低取るなどのクリアな目標を持つことで、その時すべき事が明確になった。カレッジ生活も2年ほど経った頃、カレッジ卒業という目標の先を考えた。カレッジの先にあるものは…

学費に大金を注ぎ込み、30歳代前半を恋愛もせずに勉強に費やしたこの3年間の先にある人生の目的は…行き着いた先は、困っている人を助けたいという、なんとも曖昧な18年もの前に17歳だった私が看護学校に入学を決めた時と同じ人生の目的に辿りついた。やっぱりこれが天職だ。高かった学費は価値のある自己投資となり、費やした時間は達成できたという自信となった。今はその曖昧且つハッキリとした人生の目的をまっとうするべく、また小さな目標を持って前進あるのみと日々自分を奮い立たせている。

勇気の第一歩

最近、ワーホリや新移民の方で、日本では看護師など医療従事者だったという方からの相談をよく受ける。日本で英語を活かした仕事に就きたい、カナダで看護師になりたいなど、様々な願望を持っている方が多い。それぞれの状況に合わせ、目標がクリアになるようにアドバイスもさせてもらっている。

もちろんワーホリで来た人の中には忙しく日本で働いたので、カナダではゆっくりホリデーを満喫しようと思っている人も多い。カナダにいる間は、今まで頑張った分いっぱい休んで遊んで、日本に戻ったらまた夜勤もバリバリこなすぞ、というのも良いと思う。カナダに渡航した理由は人それぞれで、1年間どう過ごすのかも人それぞれ。しかし、漠然とした願望があるならば、3年後、10年後の目標を少しでも明確にし、それに向かって一歩踏み出してほしい。頂上が見えないような山でも、その山がどんな山なのか今は分からなくても、登頂しなきゃそこからの景色を見ることは出来ない。それには麓から一歩一歩登るしかない。職業が違ってもそれはみんな同じだ。留学をより有意義なものにする為には、まずは小さくても良いので目標を定め、初めの一歩を踏み出す「勇気」が1番必要なんだと思う。

WELLNESS KIZUNAでは、多くの日本人看護師留学生・新移民の方を対象に、看護師セミナーや無料のカウンセリングを提供しています。インターネットではなかなか情報が得られないカナダ看護師留学。弊社では、カレッジや大学の看護学科留学の経験者が、カナダでの看護師免許取得についてだけでなく、短期の看護留学についても様々な角度からアドバイスを行っています。すでに帰国されている元ワーホリ看護師さんがどのような形で就職されているのかなどの情報交換も行っておりますので、お気軽にご相談・ご連絡ください。

鶴 慶子さん(RN-日本、RPN-オンタリオ州)

日本で9年看護師経験を積んだ後、渡加。ジョージブラウンカレッジナーシングコースを卒業後、オンタリオ州看護師免許を取得。現在はトロント市内の医療機関で看護師として勤務する傍ら、日系コミュニティー向けの医療サポート会社WELLNESS KIZUNAのクリニカルディレクターとして活躍中。

WELLNESS KIZUNAではクリニックの紹介、受診時の通訳など、すべて日本語でサポートしております。海外旅行保険をお持ちの方は、受診費、薬代、通訳費を含むすべての費用を弊社が立替し、保険金申請も代行致しますので、お金を一切出すことなく、受診頂けます。気軽にご相談ください。