People. 16 vol.3「Put yourself in someone’s shoes」Katsuya Ichikawaさん フラワーショップ勤務|カナダワーホリを超えた今

 ワーホリで得たモノ、自分を変えてくれたコトの一つは何にも変えられない「経験」だ。

 全ての事が初めてで言葉も違えば習慣も違う、人種も沢山のトロント。そんな中にほぼ無防備で飛び込んだ自分は沢山の事に衝撃を受け感動し人生観を変えられた。

 自分の価値観を大きく広げてくれたプライドパレード、そして最高に楽しくてカナダ滞在を延長するきっかけになったのはモントリオールジャズフェスティバルだ。

 まずプライドパレード。その時は職業別にグループでパレードが進行していった。そこで「あぁ、かっこいいな」と思ったのは消防士、警察の団体が現れた時だ。当時、日本ではそういう人たちがLGBTQを公にすることなんてなかったと思う。しかしトロントでは自分をありのまま表現できる。パレードに参加しているどの人もオープンにそして最高に楽しそうに行進している姿が印象的だった。

 その後モントリオールに引っ越した後もプライドパレードを見に行った。トロントで感動したのでパレード開始前から見学しているとザワザワと人が集まってきてパレードの先頭の方に楽器を持った人たちが列になっていった。

 少し静かになったかと思うと先頭のスネアドラムを肩にかけた小柄な黒人の男性が背筋を伸ばしドラムを叩いた。その日は快晴。正にドラムの音が青空に弾けた様だった。鳥肌。クソカッコよかった。さっきまで笑って話していたのにドラム叩き始めたらめちゃくちゃ真剣な顔。気づいたら感動して涙が出てきた。そしてその時、日本でも一人一人が本当の自分を気兼ねなく表現できたら良いな。その手伝いをしたいなと胸が熱くなった。

 今日本に戻り、一本一本個性が違う花や植物を通して人に安らぎや感動を伝えていきたいと思えているのはカナダでの経験があってこそだ。LGBTQだけでなく多様性が求められる今、相手の立場になって考えてみる(to put yourself in someone’s shoes 他者の靴を履く)という努力を全員ができるようになればなと思う。

 そして多様性と言う以前に「違うことが当たり前」になり少しでも世界が平和に近付きたくさんの個性を持った人がクリエイティブに生きられる様になる一端を担っていきたいと改めて感じる。