「あれから12年。震災を語り継ぐ」|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第128回】

この原稿を書いているのは2023年3月11日。今年も東日本大震災の日がやってきました。

あれから12年。政府主催の追悼式などは無くなり、県や市町村単位の追悼式は残りましたが、年々規模は縮小しているようです。

午後2時46分、今年も黙とうを捧げました。毎年3月が近くなると、本当にあの東日本大震災を強く思い出します。

そんな中、岩手県では、「命の言葉 私が繋ぐ」として、釜石市の鵜住居小学校3年生の女の子が最年少の伝承者に名乗りをあげました。この子は震災後、2014年3月11日生れの9歳。運命の日に生まれた事を自分の使命と感じ、お母さんがやっている震災の語り部を小さいころから見ていて、それを引き継ぎたいと決心したようです。

震災を語り継ぐ。震災から12年も経過すると、震災を経験していない人が多くなり、記憶の風化や慢心が出てきます。震災を語り継ぐ、ということは、その悲しみや辛さも語り継ぐのですが、それ以上に、震災で得た教訓を未来に語り継ぎ、同じような被害を出さないようにすることが大切です。震災を経験していなくても、この子のように、震災を未来に語り継いでいく、という決心をしている若い子は岩手県には多いと感じます。

原稿を書いている私はリアルに震災を経験した人間として、死ぬまで震災の事を語っていきます。しかし、それには限度があります。そこを未来に大きな時間を持つ若い人たちが語り部になってくれることで、かなり先の未来まで語り継がれていきます。それは、また次の世代、そしてその次の世代へと物語はバトンタッチしていくのです。

「家族を信じて、みなが命てんでんこで逃げてください」このようなたくさんの教訓を語り継いでいく9歳の女の子。私も陰ながら応援していきたいと思います。東日本大震災から12年。まだまだ日常に戻れない人もいます。そして日常に戻る前に亡くなった方も多くいます。

もう12年。
まだ12年。

私たちは震災の経験を語り継ぎながら、さらに前を向いて進んでいきます。どうか応援をよろしくお願いします。