「経験がない」ということの怖さ、「経験した」ということの足かせ|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第124回】

 ロシアとウクライナの先の見えない戦争は未だに終わらず、日本は円安の影響を受けて、物価上昇が今までの日本ではありえない形で進んでいます。海外は日本以上に物価上昇が続いていると聞いていますが、日本では今まで経験のない形での危機が訪れていると感じています。

 「経験がない」ということは本当に怖い事で、東日本大震災も「津波」という言葉や事象は学びで知っていても、実際にそれを経験した事が私たちはありませんでした。「経験がない」と何が起こるかというと、「想像が出来ない」「予想が不可能」という事になります。

 津波に対して想像が出来ないと、逃げたらいいのか、どこに逃げれば正しいのかなど、瞬間的な判断が出来ません。いつもの延長で車に乗って避難する人が多数出ました。もちろん、通常時ならいいのでしょうが、地震と津波警報で道路は渋滞、それを待っている間に津波が到達して流された方も多くいました。途中で気づいて走って逃げた人もいますが、普通車に乗っていたら、外の様子はあまり今の車ではわからないので、それも大きな被害につながりました。

 ただ「経験した」ということも大きな足かせになりました。「前の津波ではここまでは波は来なかったから大丈夫」「今まで波など来たことなかったから大丈夫」この経験から来る安心によって、今回の東日本大震災ではお亡くなりになったお年寄りもかなりいました。あとは、経験しているからこそ、年老いた今の自分では「逃げ切れない」と理解し、若い人を逃がし、自分はそのまま置いて行ってもらったお年寄りもいたそうです。

 その決断をする、残る方も、逃げる方も、結果的につらい思いをすることになりました。特に生き延びたほうは、手を離した自分を今でも責め続けているのです。でも残ってお亡くなりになった方は、もうその言葉は聞けませんが、私が同じ立場なら、若い世代が生き残って本当に良かったと思えるはずです。

 でも、当事者はそうは考えられません。経験していない、経験している、どちらでも良い事は少なく、つらいことが多い自然災害。だからこそ、自然災害が来ないことが一番いいのですが、こればかりはそうはなりませんので、自然災害が来た時に、どれだけ冷静に考えられるか、行動できるか、これにつきると思います。

 日本にいればどこでも災害は起こります。だからこそ、普段からそうなったとき、と想像し、想定し、生きることが大切だと私たちは学びました。日本全国、世界中がそのような心掛けで生きていければいいなと思います。

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