第11回 日本円とカナダドルの為替レートを読み解く|みらいのカナダ株式投資大作戦

第11回 日本円とカナダドルの為替レートを読み解く|みらいのカナダ株式投資大作戦

今回は日本円とカナダドルの関係について紹介します。最近のカナダドル高に関心をお持ちではありませんか?

 今から約1年前の2020年5月、1カナダドルは約76円でした。一方、2021年5月には1カナダドル90円に達しており、1年間で15円近くも「円安カナダドル高」が進みました。
 2020年にカナダドルを買っておけば、とちょっと後悔しています(笑)

 日本円とカナダドルのレートを決める要因の1つに、日本とカナダの金利差があります。加えて、コモディティ(商品)価格も両国の為替レートに影響を与えています。一緒にみていきましょう!

金融緩和の縮小に動くカナダ市場

 為替レートの前に、最近のカナダ市場の話題を紹介します。金融緩和の縮小を意味する「テーパリング」に関するニュースです。

 カナダの中央銀行であるカナダ銀行は、2021年4月21日の金融政策決定会合で、国債購入の減額を決定しました。この決定を受けて、1カナダドルは約86円から、わずか10営業日ほどで90円台まで値上がりしました。

 2020年にコロナの感染拡大が始まった時、カナダを含む先進国は金融緩和を行いました。金融緩和とは、国債の買い入れを行ったり、政策金利を下げたりして、市中に出回るお金の総量を増やす政策です。この政策は、コロナの感染拡大で経済に大きな影響が出ることを防ぐために行われました。

 それから1年経って、カナダはアメリカを含む主要国の中で最初にテーパリングを発表したので、驚きを持って受け止められたのです。

債券の金利差と為替レートの関係

 では、なぜテーパリングの発表で、急激に円安カナダドル高が進んだのでしょう?

 テーパリングは、国債の価格と利回りに影響します。債券の価格と利回りは逆の関係になりますので、国債の買い入れをやめると債券価格は下落し、債券金利は上昇しやすくなります。

 すると、常時低金利な日本に比べ、カナダの金利は相対的に魅力になるため、円を売ってカナダドルを買う投資家が増えていきます。

 最近1年間の日本とカナダの10年国債の金利差を見ると、2020年3月の「コロナショック」の後に金利差は急速に縮まりました。この時は円高カナダドル安でした。その後、2020年の後半から2021年にかけて金利差は拡大し、同時に円安カナダドル高の傾向が強まってきました。

 このように、両国の金融政策と、それに伴う国債の金利差は為替レートに影響します。今後の為替レートを占う上で、日本とカナダの金融政策がどこを目指しているかを気にかけておくと役立ちます。

コモディティ価格はもう1つの強気要因

 日本円とカナダドルのレートを決める要因で忘れてはいけないのが、コモディティ(商品)価格の動向です。コモディティ価格の上昇はカナダドル高の要因の1つです。

 前月号で紹介したように、カナダ市場は石油や天然ガスの他、木材、農作物等の各種商品が豊富で、それらの価格変動がカナダの経済に大きな影響を与えます。

 例えば、2021年4月から5月にかけて木材価格が高騰しています。コロナの感染拡大以降、米国で木材需要が高まった結果、米国の材木先物は歴史的な高値を記録したのです。カナダは世界有数の木材の輸出国なので、この恩恵を受けています。

 過去、コモディティ価格が高い時は、カナダドルも強い傾向にあります。例えば、コモディティ価格が高かったリーマンショック前後は、カナダドルの強さを示すカナダドルインデックス(CXY)も現在よりも高めでした。

 実際の為替レートは、特にリーマンショック後の日本円が強かったため、円高カナダドル安になりました。しかし、対ドルではドル安カナダドル高となり、コモディティ相場の終焉とともにカナダドルは安くなっていきました。

 2020年後半から2021年にかけてもカナダドルが強さを増すと同時に、コモディティ価格も上昇してきました。現在の相場においても、過去と同じようにコモディティ価格との相関が見られます。

まとめ

 今回は日本円とカナダドルの関係について紹介しました。

 日本はどうか微妙ですが、アメリカや欧州は今後テーパリング議論が進んでいくのでは?と思っています。コモディティ価格の上昇も落ち着いてくれば、カナダドル高もひと段落するかもしれませんね。

 今後の世界経済とコロナの行方は要注目です!