「言語教育を通じて、人々の人生を 豊かに(Enrichment)したい」二階堂 香瑠さん カナダ在住 13年|カナダで起業!「スモールビジネス・オーナーの挑戦」

二階堂 香瑠さん カナダ在住 13年

EBLS –Enrichment Bilingual Language Services
設立年: 2016年 / 事業内容: 日本人留学生・社会人への英語指導、言語学習に関する教育相談、企業等における英語研修の受託

【プロフィール】 TESLカナダ公認英語講師。2児の母。大学時代に英語教育に興味を持ち、教員免許を取得、教師を志す。2008年、言語教育の理解を深めるためにトロント大学の大学院に留学。卒業後、トロントの語学学校で英語講師として働く。2015年、トロント大学の教職課程に再入学し、翌年オンタリオ州の教員免許を取得。2016年、日本人のための語学学校EBLSを設立。www.ebls.ca

言語教育を通じて、人々の人生を豊かに(Enrichment)したい

THE 一問一答

起業して何年と何ヶ月
5年と2ヶ月
人生のモットー
その道に先人がいないなら、自分が道を作ればいい。
自分はどんな経営者だと思う?
経営者らしくない経営者
カナダで起業してよかったこと
組織の一員というよりも、一人の人間として見てくれる。子育てしながらでも仕事がしやすい。英語環境があるので、生徒さんたちの英語の成長がはっきり見られる。
影響を受けた実業家・ビジネスパーソン
Stephen Covey氏、Uri Galimidi氏、堀江裕介氏
注目している事業・サービス
グローバル人材の育成、超スマート社会における情報教育、プログラミング教育
リタイアは何歳で?何したい?
教えることへの興味が消えない限り、生涯現役でいたいです。

起業前

 トロントの民間の語学学校(ESL)で日本人留学生に英語を教えていました。その前は、日本の塾で正社員の講師として小学生から高校生に英語を教えていました。

カナダで起業したきっかけ

 ずばり、以前働いていた学校の閉鎖です。日本人英語講師というカナダでは珍しいポジションで働いていたので、同じような職がすぐ求人に出るはずもなく、ならば自ら起こすしかない、というのがきっかけです。立ち上げた当初は受講生が全くいなくて、留学エージェントさんに挨拶回りに行ったり、学校に来てくれそうな生徒さんたちが集まる場所に直接営業に行ったりしていました。他にも、カリキュラム開発のために何度も無料の模擬授業を行って、生徒さんたちの反応を見ながらニーズ分析を行っていました。

カナダで事業を営む理想と現実

【理想】
・順調な顧客獲得!
・バケーションはしっかり取得!
・育児と仕事は両立!

【現実】
・講師の人材確保の方が難しく、生徒数を大幅に増やせない…。
・バケーションを取っても仕事が気になり、仕事道具は必携…。
・完璧な両立はできなくても良い、という心境に…。

これまでの苦労や挫折

 自営業を営む人に「あるある」だと思いますが、子育てをしながらの自営業は大変なことが多いです。スモールビジネスゆえに、経営者自らが行わなければならない仕事の方が多いですし、子どもがいると仕事ができる時間が制限されてしまうので難しいです。子どもを預ける費用も安くないので悩みの種ですが、それ以上に、多くの時間を仕事に奪われてしまうので、子どもの成長の大事な時期に、自分のやっていることは正しいのだろうかと思ったりもします。この問いは当面消えることはないのですが、いつか振り返った時に「これで良かったんだ」と思いたいですね。

コロナ禍でのビジネス。未曾有のパンデミックの中でサバイバルしていくために大事なこと

 留学業界はコロナによって大打撃を受けた業界の一つですが、この状況下で生き残るためには、柔軟な姿勢を持ちつつも会社の本質を見失わないこと、だと思っています。例えば、コロナの影響で教室を開けることができない、そうなると「じゃあオンライン授業だ」というのが自然の流れです。これは柔軟に対応した形と言えますが、オンラインというのは市場を世界に移すということなので、これまでとは比にならないほどの競争にさらされます。そのような時に、会社の本質を確認することが大切なように思われます。パンデミック下でも需要のある分野を見つけて、そこで新事業を展開することも可能かもしれませんが、会社の本質と異なることをやると、競争の中で会社の資源を無駄に消費することになり、結果的に学校としての魅力を失ってしまいます。それではいけないと思うので、学校が得意とするものを冷静に見極め、しっかりと本質を確認しながらこのパンデミックを乗り越えていきたいと思います。

長く教育業界に携わってきた経験から考える次世代のための社会や未来

 当たり前のことかもしれませんが、一人ひとりが自分の頭で考え、行動し、何かを生み出す社会になって欲しいと思います。情報を容易に取得できる時代になると、考える機会が少なくなるのではと懸念しています。実際、若い世代の生徒に何か質問をすると、ネットで入手した情報を切り貼りしたような回答が返ってくることが多いのですが、情報は何かを考えたり、作り出したり、何かの行動につなげたりするための手段として活用して欲しいです。

 言語の面においても、AIや自動翻訳機の技術向上が進めば、個人が外国語を運用する必要がなくなり、外国語を学ぶ必要はないと説く人が出てくると思います。ですが、外国語学習とは、その言語を通してその国の文化であったり、人の考え方であったり、あるいは、自国の言語や文化を見つめ直したりする機会になるので、外国語を学ぶ機会は未来にもあって欲しいです。理想ですが、テクノロジーは言語学習の効率化を図ったり、これまで見えなかった進歩を可視化するツールとして用いて、個人は外国語学習を続けて欲しい。そうすることで、他言語・他文化への理解、さらには、多様性の受容や多文化共生社会などにつながることに期待したいです。グローバル化の時代にはこれがとても重要なことに思われます。

2021年の挑戦

 挑戦というか「願望」ですけれども、早くコロナが収束して、留学業界全体に活気が戻って欲しいです。トロントは魅力に満ち溢れた都市ですから、多くの留学生がここで英語学習のみならず様々な異文化体験をして、その経験を日本に持ち帰って欲しいです。

拝啓 10年後のキミへ

 失敗を恐れずに挑戦をすることは大切だと言いますが、過去の失敗はちゃんと成功につながっていますか?