ドローンによる未来の配送の可能性|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第58回

ドローンによる未来の配送の可能性|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第58回

先日、日本の次世代ドローンの研究開発をおこなうスタートアップ・エアロネクスト社が、ドローンによるラーメンの配送の実証実験を行いました。岩手県岩泉町で行われた実験では、町内の道の駅から対岸の施設に道の駅で調理された味噌ラーメンを配送し、汁をこぼすこともなく配送できたことが確認されたそうです。

同社は過去に山梨県小菅村で吉野家の牛丼をドローンで配送するなどの実績があり、フードデリバリー会社の出前館と業務提携を結ぶなど、ドローンを活用した課題解決に取り組んでいます。

ラストワンマイル問題と地方が抱える課題

ドローンによるフードデリバリーが現実になるとすれば、いよいよ未来がやって来たという感がありますが、こういった流れが加速する背景には近年よく耳にするラストワンマイル問題、そして地方が抱える喫緊の課題があります。

ラストワンマイル問題とは、配送の最終拠点から顧客の家までの最後のルートで生じている問題のことです。Eコマースの台頭によって配送の取り扱量が増大しているにも関わらず、ラストワンマイルでの人手が圧倒的に足りておらず、また、配送会社間の競争による送料無料や、再配達の手間などが送料に見合っていないというような諸問題があります。地方が抱える課題としては、買い物弱者、医療弱者、モノが届かないというような物流弱者など枚挙にいとまがなく、さらにその深刻さは人口減少や少子高齢化によってますます加速しています。

しかし、日本も国としてただ手をこまねいているわけではありません。これまでは、無人地帯のみ飛行が可能でしたが、昨年12月には有人地帯で補助者なしでの目視外飛行が可能なレベル4が解禁されました。国土交通省はこのレベル4の解禁をうけて、ドローンを活用した配送実証事業の公募をしました。

未来の世界はルワンダにあった!

このように、国や企業がまだ見ぬ未来の世界を夢見ているわけですが、遠く離れたアフリカのルワンダでは、実はすでにこのような未来が実現しています。ルワンダに拠点を持つアメリカのベンチャー「Zipline」は、2016年から事業を展開しており、それまで2時間かかっていた血液の配送をわずか15分でドローンで配送することに成功しました。最高時速はじつに130キロ、最長で80キロ先にある病院に緊急で必要になった血液を届けています。

なぜルワンダにおいて米国企業が活躍しているのかと言うと、一つはアメリカにはドローンに対する厳しい規制があります。また、ルワンダは爆発的な経済発展を遂げており、特にIT関連の目覚ましい成長を経て、ITインフラが整備されていたのです。さらには「Zipline」はルワンダ政府と包括契約を結んでおり、配送に関わる費用は国が払うので病院側に負担はありません。このようにいくつかの条件が重なり、今では一日平均30件、毎日休みなしに血液を飛ばしているそうです。

日本に話をもどすと、技術的にはすでに述べたように実証実験をクリアしていますが、まだまだ単体で採算を取ることは難しいらしく、運用のコストダウンが当面の課題の一つでしょう。しかし、そうも言っていられない状況や地方の過疎地などがこれから増えて行くと、おのずと大量生産が必要になりますので、そうなるとコストダウンも可能ですし、ビジネスとして成立するタイミングが必ず訪れるのだと思います。逆に大都市では、まだまだUberなどのサービスで人が動いた方がコストも安く、そういった景色を見られるのは少し先の話かもしれません。