ミッション、ヴィジョンを打ち立てる|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第55回

ミッション、ヴィジョンを打ち立てる|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第55回

 先月、ラーメン雷神が属するざっ串グループは全店を休業し、コロナ以降はじめて、実に3年ぶりのハワイへのカンパニートリップを敢行しました。昨年は良い結果を残し、従業員もこのつらい3年間を耐え抜いてくれたので、みんなにとって慰労の旅になったと思います。また、普段から店舗を滞りなく運営してくれているみんなに対して利益を還元できたという点で、僕も非常に嬉しいです。

 先月は売り上げに対する認識について書きましたが、残った利益をどのように使うのか、という問いに対して、それを従業員に還元するというのはクールな使い道のひとつだと思います。

 さて、今回は先月の予告通り、雷神のミッションとビジョンについてのお話です。

 会社やお店のミッション、ビジョンというと、もしかしたらピンと来ない方もいるかもしれませんが、事業目的や会社理念、経営方針に相当するようなものだと捉えてもらうとイメージしやすいかもしれません。すなわち、ミッションとは会社が達成すべき最上位の目標であり、それは会社の存在意義とも密接に関係し、ひいては従業員のモチベーションにも関わり得る大きな枠組みです。またビジョンとは、組織や個人の考え方を規定し、あらゆる意思決定や経営判断の基礎となり、なすべき事を明確にして個人をエンパワーメントするような指針であると言えます。

 この10年、雷神をより良い組織に、さらに強いチームにと励んできましたが、このたび策定したミッション、ビジョンは、この先の10年、さらに雷神が大きな飛躍を遂げるために必要不可欠な要素であると確信しています。

「『美味しい』のその先へ」「従業員の心身の健康と幸福」「人と人、個人と社会とのつながり」

 この度、雷神が掲げたミッションとは、「『美味しい』のその先へ」、「従業員の心身の健康と幸福」、そして「人と人、個人と社会とのつながり」です。

 その心は、ラーメン屋として、「美味しい」を提供する上で、レシピやオペレーションを改善し続けてより高みを目指すのはなおの事、来店してから退店するまで、さらにはもっと広い視点でのあらゆる顧客との接点で、どのように「美味しい」を超えた感動体験を生み出せるのかを探求し続けます。

 また、顧客に満足、感動を与えるだけではなく、従業員を日々消耗させることなく、個人の尊厳を重んじ、何が個人の幸せに寄与するのかを追求し続け、様々な立場や価値観を尊重し、従業員の多様な働き方と、豊かな生活を模索し続けます。

 さらには、従業員同士、そして顧客に対して誠実に向き合い、地域への社会貢献を行い、近隣住民や関わる人すべてに幸せをもたらすよう、長期的な視点をもって事業を継続し続けていきます。

 なんだか仰々しい感じもしますが、要するに、「美味しい」を超える感動体験を生み、従業員を大切にし、社会とのつながりを築きます、という宣言です。

「想像と創造」「試行錯誤」「愛をもって和をなす」

 ビジョンは、「想像と創造」、「試行錯誤」そして「愛をもって和をなす」という三本柱にしました。

 こちらは、夢や希望をもって明るい未来やありたい姿を想像し、創造する。その上で、成功の裏には数々の失敗があり、失敗の裏には同じ数だけの挑戦があるのだから、失敗を許容し、挑戦を重んじる。また、ポジションパワーや、態度で組織を運営せず、論理で進むべき道を示し、情熱で組織を動かす。というような意味が込められています。

 どうしても組織の根幹にかかわるステートメントであるため、抽象度が高い話になってしまいますが、これを1~2年かけて具体的な行動に落とし込み、徐々に組織全体に染みこませていくのが当面の目標です。
 長いスパンでの計画になりますが、時間は地続きですので、5年後、10年後に現在を振り返ったとき、このミッション・ビジョンがなければ、今の雷神はないだろう、と思えることを願ってやみません。