売上の向上、現場主義|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第50回

売上の向上、現場主義|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第50回

 ラーメン屋にとっては厳しい夏が終わりを告げ、しだいに忙しさが増していく今日このごろです。年明けのコラムで新年の抱負を語ったとおり、今年は現場に立ってガシガシ改善をくり返し、非常に良い状態で、かつコロナの影響をほとんど受けずに繁忙期を迎えられることをうれしく思います。

 現場に入るようになっておよそ半年、基本的なことを愚直にやり続けてきただけですが、それだけでもちゃんと売上の向上につながっているのをひしひしと感じます。というわけで今日は、簡単なようで難しい、難しいようで簡単な、売り上げアップの方法と現場主義についてです。

自分たちのラーメンのスタンダードを知り、ひとつひとつ仕組み化する

 熱いものは熱々で、冷たいものはキンキンに冷やして、というのは料理の基本として知られていますが、これ一つとっても、実行しようとすると意外と大変なものです。

 しかし、ぬるいラーメンほどまずいものはないので、スープや丼はもちろん、味付け玉子を一定の温度でキープしたり、仕込んだスープはしっかり冷やしてから保存するなど、温度管理に関して様々な工夫を凝らしています。

 そのほか、食材を過剰に抱えることなく、仕込みの量を日々調整しながら、出来るだけ食材はフレッシュに保ち、チャーシューなどは出来るだけ直前にカットする。

 毎日、味見をして麺の茹で時間を微調整して、スープの状態もチェックして、日々の細かな変化を見逃さず、自分たちが提供しているラーメンのスタンダードを知る。そういったことをひとつひとつ仕組み化して、愚直に続けていると、おのずとスタッフの基準が上がり、提供している商品のクオリティが徐々に上がっていくのが見てとれます。

 サービス面にしても、まずは笑顔でお客さんと接し、目を見てちゃんと挨拶をする。全員でお客さんを出迎えて、全員で感謝の気持ちを伝えてお見送りをする。料理にしても、サービスにしても、そういった基本的なことをおろそかにせず、愚直にやり続けるというのが、経験上、売上の向上にとって最も効果的な策のようにおもいます。

思えば、飲食店に限らず多くの事業にとって、現場において、基本的なことをきちんとやり続けるという姿勢はとても大切なことではないでしょうか。

 テスラのイーロン・マスクは、現場主義をつらぬき、工場をおとずれ、店舗に行き、顧客と話すことの重要性を日頃から説いています。寝袋を工場やオフィスに持ち込んでそこで寝泊まりし、徹底的に現場にこだわるというエピソードはよく知られていますが、逆に、財務管理やミーティング、その資料作りなどに時間を割くことは本質的ではないと痛烈に批判しています。

 ビジネスにおいての主戦場は現場です。その意味で、問題も解決策も、オペレーションの改善やクオリティ向上のヒントも、全ては現場にあります。

 日々、現場でスタッフやお客さんと接する中で、常に新たな気持ちで、現状にたいして「なぜ?」という疑いの視点を持ち、トライアンドエラーをくり返し、粛々とやるべき事をやるだけ。それが、何事においても成功の近道のように思います。