勝ち負け、成功と失敗の本質|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第37回

勝ち負け、成功と失敗の本質|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第37回

 6月のパティオ営業の再開に引き続き、7月の半ばより店内営業が認められ、ようやく飲食業界にも明るい兆しが見えてきました。デルタ株の流行や各国の規制緩和処置により、世界的に感染者は増加傾向にあり、ふたたび規制が敷かれる国もあるようですが、オンタリオ州は他の国や地域に比べて、かなり慎重な対策を取ってきました。

 長い間、我慢を強いられてきたこともあり、このまま経済が回復していくのを願うばかりです。

 さて、飲食店にたくさんのお客さんが戻ってきましたが、業態や店舗形態によって、戻り方がまちまちな印象です。変数が多く、どういった業態が良くて、どういった業態が良くないのか、というような明言は避けますが、お客さんの戻りが思わしくない場合は、きっちりとその原因を探る必要があります。そして、もしたくさんのお客さんで賑わっていたとしても、それはそれで注意が必要かなと感じています。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは、プロ野球の野村克也監督が引用していたことで有名ですが、もとは江戸時代の武芸家・松浦静山の言葉です。武芸家として大成しながら、大名としても財政難に陥っていた藩をV字回復させたりと、武芸のみならず経営手腕も持ち合わせた人物がこういった言葉を残しているのが実に興味深いです。勝ちに不思議の勝ちありとは、なぜそれが上手くいったか説明は出来ないが、どういうわけか勝ってしまう事がある、ということです。一方、負けに不思議の負けなしとは、負けはいつも論理的に説明がつき、負ける要因が必ずどこかにあるものだ、という指摘です。

〝つまり、いまここで飲食店が繁盛したからと言って、それが不思議の勝ちであって持続するかはわかりません。逆に、繁盛していなければ必ずどこかに原因がある、と考えるのが経営の役割になります。〟

「成功はアート、失敗はサイエンス」

 同様の言説は他にもあります。メガネの製造販売を手掛け、日本のみならずアジアを中心に世界展開を広げるオンデーズの田中修治社長は、「成功はアート、失敗はサイエンス」と語っています。成功はアートのように再現性がなく、成功するための確実な方法というものは存在しないが、失敗は常に理屈や理由がはっきりしていて、失敗のパターンというものが存在する、といった意味合いです。

「欲しいのは偶然の成功ではなく、失敗の原因です」

 また、Perfumeのライブ演出やBjörkのライブの映像演出、日本国内外のビッグネームのMVも手掛けるメディアアーティストの真鍋大度氏も、「Trial and Error」という映像作品中で「欲しいのは偶然の成功ではなく、失敗の原因です」という言葉を残しています。ARやプロジェクションマッピング、ドローンなどの最先端技術を駆使した表現にこだわる彼ならではのユニークな視点です。

〝全くちがう業界にいながら、人を率いて、業界の最前線を走る彼らが、奇しくも同じような思考で成功と失敗に向きあう姿勢は、やはり示唆に富んでいます。〟

 これらの言葉を肝に銘じ、雷神を運営していきたいと思います。最後に、ラーメン雷神はというと、店内営業を再開して久しぶりに常連さんを気持ちよくお迎えしながら、相変わらず、冷凍ラーメンのデリバリー事業も続けています。そちらはそちらで、「トルジャのコラムを読んでいます」と声をかけていただいたり、「応援しています」と激励していただいたり、いつも皆さんから元気をもらっています。引き続き、変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。