カナダCOVID-19パンデミックダイアリー 池端友佳理さん

コロナ禍のなかで過ごした日々と気持ちの変化、見つめ直されたライフスタイルや仕事の価値観、家族との過ごし方などそれぞれの人生観について綴ってもらう。
“溢れる涙。気持ちを支えてくれたのはナーサリーの子どもたちからビデオメッセージ”

池端友佳理さん

 トロントで多くの子どもたちを預かっている「池端ナーサリー」を経営する池端さんもパンデミックによって大きな困難に直面した。大変な不安と疲労が襲う中で支えてくれたのは子どもたちと職員、そしてそばにいてくれたご主人だった。

 現在は、未曾有の事態で培った迅速な行動と的確な準備を活かし、慣れた環境に甘える事なく、責任ある行動と判断を持って今後何が起こってもまた同志一丸となって、乗り越えて行こうと決意している。

まさかこんなにも長く辛いステイホームが続くとは予想していなかった

 3月の緊急事態宣言前、感染者も増え消毒方法などを変えたり、ナーサリー独自で対応を考えていたものの、一刻一刻と世の中の状況が変わって来ていたので、閉園にした方が良いのか、それともニーズに対応すべく現状(開園)を維持した方が良いのか、判断に苦しんでいた時でしたので、正直、緊急宣言が出た時はもう悩まなくても良いかとホッとしたのを覚えています。しかし、その時はデイケアセンターは2週間の閉鎖との案内でしたので、騒ぎもすぐに落ち着き、また開園出来ると軽く考えていました。

 ビジネスへの影響は一言で言うと打撃的でした。収入は全くのゼロに近い状態になってしまったものの、月々の定期的な固定出費は続きますから、その時の不安と失望感は非常に大きかったです。それでも、毎日朝から晩まで返金やメールなど保護者へと職員への対応、政府機関へ提出しなければならない書類業務など、日々時間に追われていましたし、政府の援助も明確にされず時間だけは過ぎて行き、私も心身共に疲労感は極度に達していました。

絶望の淵で諦めない気持ちを奮い立たせてくれた子どもたちの声と職員の励まし

野外での卒園式
野外での卒園式

 心身ともに疲労が続いていた時、ナーサリーの子どもたちからビデオメッセージが届きました。私たちを励まそうとしてクラスの保護者の方々が団結して子供たちの可愛くて優しいメッセージをつなげてビデオにして下さったものです。

「ナーサリーに行けなくて寂しい。先生たちに会えなくて悲しい。早くナーサリーで遊びたい。みんなに会いたい。ナーサリーが大好きです!」と、子どもたちが口々に言ってくれるビデオ。これを何度も、何度も、何度も繰り返し見ました。ずっと涙が溢れ続けていました。そしてたくさんの勇気とパワーを頂きました。

「初めて立たされたこの先の見えない恐怖と不安感は私だけではない。この地球上全ての人が同じ思いでいる」と考えた時、今私がパニックになればこの波を乗り越えていけないと思いました。「ナーサリーが無くなれば困る人たちは沢山いるんだ。子供たちが帰ってくる場所がなくなってしまうんだ。どんな事があってもナーサリーを守らねば!」と言う思いで一心でした。

 また、かけがえのないものを得た…と言うよりは実感したのが「子どもたちのためにもみんなで力を合わせてこの状況を乗り越えましょう!出来る事は何でもします!」と言ってくれた職員が周りに沢山いてくれた事です。

ハロウィンのソーシャルディスタンスパーティー
ハロウィンのソーシャルディスタンスパーティー

閉園中も笑顔でそばにいてくれたご主人マークさんさんの存在

 6月のナーサリー再開まで、オンライン・プログラムは続き、こうした繋がりは普通に行き来したり一緒に遊べることができなくなってしまった子どもたちにとって日本語環境を楽しく目で見て学べる環境は、非常に大切なものであったと確信しています。

 閉園中もナーサリーにはしょっちゅう行きましたが、子どもたちのいないもぬけの殻のナーサリーには居るのも辛く、寂しい思いが込み上げる毎日でした。しかし、これを良い機会とし、主人のマークがリノベーションをし始め、私もいつかまた戻ってくる子供たちの笑顔や笑い声を思い浮かべながら、その手伝いをしていました。そして、そこには何も言わなくても一緒に手伝ってくれる職員の姿もあり、それもまた心温まる思い出となっています。

 最初から最後までいつもそばで笑顔で私を支え、励まし、笑わせ続けてくれたマークの存在はとてつもなく大きかったです。自分もビジネスの事で大変な状況だったのに、私の愚痴に付き合ってくれたり、八つ当たりも流してくれたりと感謝してもし切れません。

他に類を見ない迅速なナーサリー再開は入念な準備を重ねてきた職員たちの努力の賜物

 オンラインで子どもたちの姿を見ただけでも胸がいっぱいで言葉に詰まっていた私ですが、実際にナーサリーが再開した日、嬉しそうに戻ってきてくれた子どもたちの笑顔を見て、もうそれだけで全ての重くしんどい思いが吹っ飛んで行きました。感無量の思いとはこの事ですね。でも、ハグしたい気持ちでいっぱいだったのに、それが出来ず残念でした!

 何よりも、いつもは大々的にするメインイベントである卒園式・卒園コンサートも今年は規模を小さくして野外で行いましたが、一生に一度の思い出深い式となり、やって良かったと心底思いました。

 デイケアの再開が発表され、私たちはその二日後にナーサリーの再開を果たすことが出来ました。この迅速な再開が出来たのはトロントでもほんの数カ所だけでした。私たちはいつ当局からGoが出ても良いように、パンデミック中に全ての準備を完璧に整えて、待ちに待っていた結果なのです。それは、職員一同の努力の賜物であり、パンデミック中も温かい言葉をかけて支え続けてくださった園児のご家族皆様のおかげです。感謝の気持ちは決して忘れる事はありません。