カナダCOVID-19パンデミックダイアリー 深田 崇之さん

コロナ禍のなかで過ごした日々と気持ちの変化、見つめ直されたライフスタイルや仕事の価値観、家族との過ごし方などそれぞれの人生観について綴ってもらう。
〝みんなが家族や友人、パートナーを守るために必死なんですよね。不安定な環境の中、明日どうなるかもわからないまま、笑顔で周りの人を励まして頑張っているんですよね〟

深田 崇之さん

1月半ば頃から抱いていた危機感

 実はコロナの状況は今年に入って1月半ば頃から注意深く追っていました。仕事では製造業に携わっており、部品の何割かを中国から仕入れなければいけないので、中国の状況次第ではビジネスに支障が出てしまうので、ほぼ毎日ニュースなどをチェックしていました。

 旧正月を境にして中国で感染が爆発的に増え、ロックダウンに入ったのを知った時は背筋が凍りましたね。仕入れうんぬんより、その爆発的な感染者数の増加に危機を覚えました。カナダでは幸運なことに爆発的な増加はなく、医療機関がパンクという話も聞かなかったのは不幸中の幸いだったと感じています。でも、いつどこで感染するか解らないウイルスなので、怖いですね。

 カナダもパンデミックになり自粛期間が始まりました。もともと内向的なので、家に籠るのは苦痛ではなく、ゆっくり本を読んだり、自炊や趣味のピアノに打ち込みました。内向的とはいってもやはり刺激は必要だったので、仲間と創設したヤングプロフェッショナルの団体「MUSUBU-JYP」を介して週に一度はオンライン・ソーシャルの場を設けて何人かで他愛もない話や情報交換の場を作ったりして、コミュニケーションを図っていました。

MUSUBUメンバーとZOOMミーティング
MUSUBUメンバーとZOOMミーティング

在宅勤務も仕事とプライベートのスペースを明確にしたことで「オンオフ」の切り替えに成功

 仕事に関しては、幸運にも職を失うことはなく、在宅勤務は始めは環境に戸惑いましたが、自分のオフィスを家の中にオーガナイズして「このテーブルは仕事用」、「この場所は運動用」、「ソファーはリラックスだけ」と、区分けすることによって色々と上手くいくようになりました。家の中で働くと仕事とプライベートの境目が薄れていくので、物理的なケジメを作ったおかげで「オンオフ」が上手くできました。そして自宅で働いているという事を利用して仕事の効率を上げるために、基本的に寝る以外は仕事の連絡が入るようにしました。おかげで中国やメキシコ等の工場、現場で働いている人たちに指示を随時出せたので、ロストした分を少しだけでも巻き返すことができました。同時に、指示を出すだけでは足りない事態はどうしてもあるので、その時はPPE(Personal Protective Equipment)を身に着けて自ら現場に赴き、製品監査の手伝いやトラブルの対処をしました。

 現場も入口には注意書きがあり、マスク無しでは入場禁止のほか、上長による検温と消毒液で手を洗うことが徹底されていました。オフィスやラボ内では使用した台や、触った物は必ず消毒をするという決まりもできていました。このような変化を直に目にしたので、いかに会社としても今回の新型ウイルスが脅威なのかを実感しました。

会うたびに、ありがとうと全力の笑顔

 みんなが家族や友人、パートナーを守るために必死なんですよね。不安定な環境の中、明日どうなるかもわからないまま、笑顔で周りの人を励まして頑張っているんですよね。そう考えるといつも会うスーパーの店員さんや、行きつけのお店の店主などに心の底から感謝の気持ちを抱くようになりました。会うたびに、ありがとうと全力の笑顔で言うのですが、悲しい事にマスクのせいでその笑顔がほとんど相手には見えないのです。ですから代わりに最近は他愛のない話をして、ジョークを飛ばして最後に誠心誠意の気持ちを込めて“Thank you very much! Have a lovely day and Stay safe!”と言うようにしています。

「人の成長を促すプラットフォームを作る」ことがコロナ禍を経て掲げた目標

 先日「MUSUBU-JYP」は、トロント日本商工会と合同で「カナダで起業するにあたって」というテーマで勉強会を5日間に分けて行ったのですが、ズームで参加してくれた方々がみなさんそれぞれ優秀でモチベーションも高い方々でした。そしてパンデミックで時間が増えたコロナ時代をチャンスと見て、成長しようとしている姿勢はたくましさを感じ刺激をもらうことができました。そこからアイデアを得たのですが、この先バーチャル上で勉強会の延長線上のようなものを作れたらと思いました。コロナ渦を経て掲げた目標というのは人の成長を促すプラットフォームを年内につくるというゴールです。