アメリカ大統領選に向けて何か起きるのか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

アメリカ大統領選に向けて何か起きるのか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 2020年11月3日に4年に一度のアメリカ大統領選が行われる予定だ。トランプ氏再選か、民主党の代表、バイデン氏がその座を奪取するのか、史上初の最高齢者同士の戦いはコロナと中国、更には経済問題に人権問題と様々な切り口とテーマを抱えながら本格選挙戦に突入する。見どころ満載、突っ込みどころ満載のこの地球儀ベースで注目される一戦、どうなるのか考えてみたい。

バイデン氏が本当に優勢か?

 いくつかある世論調査を見ると本稿を書いている8月上旬ではバイデン氏が10ポイントほどリードしている。そして主要メディアは一部を除いて左派的で民主党寄りなので「バイデン大統領の世界」を打ち出そうとするものすらある。だが、公平な目で見るとこの10ポイント差はほとんど意味をなさない。何故ならバイデン氏が良いと思う人は消去法的選択が多いからだ。

 つまり、トランプ氏が前回の大統領選同様、世紀の大逆転をする可能性は大いにあるし、そのキャスティングボートもトランプ大統領が握っている。ある経済紙に戦後一期しか大統領を務められなかったのは3人しかおらず、その共通点は失業率が高かった、だからトランプ大統領の再選は赤信号だとある。これは記者のポイントずれだろう。

 コロナが始まる前までは歴史的な低失業率だったわけでコロナで180度変わった雇用統計の変化をトランプ氏の経済失策とするのには無理があり公平感を欠く。また、少なくとも7月までみれば雇用統計は3カ月連続で回復しており、経済も一時の慌ただしさからは落ち着き始めている。

トランプアメリカンドリーム

 「トランプ アメリカンドリーム」というドキュメンタリーがある。2018年に制作されたもので、今ネットフリックスでも見ることができる。これを見るとトランプ氏の性格と野望と戦略がよく理解できる。確実に言えることは彼は己に勝つことだけを考えている。そしてそのためにはかなり無理な手段も厭わない。彼は負けを認めず、必ず復讐をする。これをトランプ氏の個人の性格と考えるか、典型的アメリカ人の国民性を表しているとみるかで全く違う様相になる。私は少なくとも後者のエレメントはあるとみている。だからこそ、良きあのアメリカの再来を願っている人たちが絶大な支持をしている。

民主派はなぜ盛り上がってこない?

 では、民主派はなぜ、いま一つ盛り上がってこないのだろうか?これは民主党の選挙戦を通じてはっきりわかっていたことだが民主党なのに個人主義と分断社会が強く表れ、民主党としての一枚岩の結束感がなくなっているからであろう。20名以上が乱立した大統領選立候補者は老若男女、出身母体と主義主張はバラバラで協調関係を作れなかった。それとなぜか最後に残った3名の有力候補者は当選すればいずれも史上最高齢の大統領になる方々ばかりであった。

 アメリカは可能性とチャレンジに燃え、若くしてリーダーになるというイメージがある。出生率も他国に比べ高く、若い移民層の受け入れもしているにもかかわらず、なぜか大統領候補者が高齢化している点に強烈な矛盾を感じている。つまり、若年層の無関心派が増大し、大統領選挙はつまらないエンタテイメントの一種と捉えているのだろうか?

 そうなるとトランプ大統領は逆に有利になる。何故なら彼がこれからどのような方向性も打ち出せるからだ。一般的には大統領選は内政重視が原則とされる。つまり、経済や福祉などの充実を訴えるわけだ。今回はコロナという特殊な要因が予想を難しくした。そして内政は株価対策とコロナのコントロールが決め手となろう。少なくとも現時点で株価対策は問題ない。あとはコロナだがこれはアメリカだけが悪いわけではないしワクチンはもう間近だろう。

キーワードは対中外交と地球上の不和

 とすれば今回は例外的に外交がモノを言うかもしれないと思っている。つまり、対中外交問題を徹底的に盛り上げていけばアメリカ国民に一体感を持たせることが可能になる。実はすでに議会では対中問題は共和党のみならず、民主党も重要な課題だと考え、バイデン候補も厳しい対中政策を打ち出し始めている。しかし、強硬策ならトランプ大統領の右に出る者はいないだろう。

 ネタは多い。香港問題、台湾擁護、南シナ海問題、Tik Tok問題、WHO脱退、そして宙ぶらりんになっている貿易問題がある。これらは全部中国が絡む。米中合戦はアメリカ国民からすれば勧善懲悪のハリウッド映画仕立てであって、この問題で盛り上がればトランプ氏への支持は回復しやすくなる。

 もう一つは地球上の不和だ。世界中で様々な歪が出ているがトランプ大統領は常に一定の口出しをしている。かつて本人は世界の警官にはならないといった。私は数年前、アメリカは世界の検察になったと申し上げた。今は世界に対する「モノ言う投資家」と申し上げた方がいいかもしれない。不和をうまく自分に有利になるよう取り込む天才的才能をもっていることは上述のドキュメンタリードラマを見ればお分かりいただけるはずだ。

 個人的にはトランプ氏の再選は厳しいと年初の大予想から言い続けてきた。が、最近はコイントスぐらいの確率かもしれないと思いつつある。つまり、トランプ氏大逆転の余地が出てきたということだ。この秋は選挙の行方から目が離せない。そしてビジネスや投資をしている皆さんには極めて影響が大きい。トランプ氏再選の方が経済にはプラスになるはずだ。さて、結果はいかに。