数字でみるカナダ・トロント第二弾 2022|特集「カナダライフのヒント・キャリア編」

数字でみるカナダ・トロント第二弾 2022|特集「カナダライフのヒント・キャリア編」

 カナダ最大都市トロント。この街にはキャリアや仕事を求めて、カナダ国内そして世界中から人材が集まってくる。働く上に置いて大切なのが、ワークライフバランスだ。読者の皆さんのライフスタイルを豊かなにするであろうトロントの魅力を数字で見てみよう。

女性が働きやすい街 世界No.1

2021年のブルームバーグの調査で、トロントが世界で一番女性が働きやすい街だと認定された。世界の15都市を比べる基準として安全、産休制度、収入、平等、通勤のしやすさなどが重視された。15の都市にはシドニー、シンガポール、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ソウル、東京などが含まれた。トロントは平等さ、産休制度、収入の高さで高いポイントを得たが、通勤のしやすさではポイントが低かった。ストリートカーや地下鉄は便利だが、他の都市に比べると老朽化や乗り換えの利便さなど課題があると考えられる。

 カナダで平等さや産休制度が重視されるのは移民の受け入れに理由があるという。カナダに移民する人の多くは男性だが、女性も年々増えてきている。その女性の多くが20代から50代の働き盛りの年齢である。彼女たちが移民先で働き口をスムーズに見つけることや、出産や子育てが困難だともっと住みやすい所に引っ越してしまうことが国の調査でわかっている。そのためカナダでは移民女性に手厚いサポートをする制度に力を入れている。

安全な都市世界2位

 経済雑誌The Economistの「Safe Cities Index 2021」でトロントが世界で2番目に安全な場所だとランキングされた。この調査では身の回りの安全だけでなく、デジタル・セキュリティ(オンライン環境においての安全性)、ビルなど建造物の耐久性、市民の健康、自然災害などからの安全性も分析されている。一位のコペンハーゲンとのポイント差はわずか0.2ポイントというとても惜しい結果だが、カナダで唯一ランキングに入っている都市であることは誇らしい。

 トロントは特にインフラの面でポイントが高かった。それは街の歩きやすさや鉄道システムの安全さなどが考えられる。身の回りの安全性が良い理由を一つあげるとすると、カナダでは銃規制がされていることだろう。そのためアメリカのように銃撃事件が縦続きに起こることはない。だが銃犯罪が全くないわけでなく、カナダの犯罪のおよそ2.8%に銃が使われていると言われている。

CNタワーの高さ

 カナディアン・ナショナル・タワー、通称CNタワーは1976年の完成以来トロントのシンボルとして街を飾ってきた。2007年まで世界一背の高い建築物として知られてきたが、ドバイのブルジュ・ハリファや中国広東省の広州塔(カントン・タワー)などの建設により世界一位の座から退くこととなった。

 CNタワーはイベントごとに色が変わるのが見どころ。2月にはバレンタインの赤いハートのイルミネーション、アース・デーには緑のライト。最近では、ロシアから攻撃されているウクライナの平和を願うためにウクライナの国旗の黄色と青のライトと、ピースマークがライトアップされていた。展望台に上がると、カフェやレストランもある。「360」というレストランは、72分かけて名前通り360度ゆっくり回転する。レストランにあるワインセラーは世界で一番高い場所にあるワインセラーとして有名。500種類以上の世界のワインが保管されているほか、CNタワーでしか飲めないオリジナルワインも楽しめる。

カナダの 人口の25%は トロントから 160km以内に住んでいる

 トロントはカナダで1番、そして北アメリカでは4番目に大きい都市である。トロントの人口は約300万人で、GTA(Greater Toronto Area―Hamilton、Peel、York、Haltonを含むトロントを中心とした大都市圏)の人口は約650万人だと言われている。カナダの国全体で見ると、全人口のなんと4分の1がトロントから160km以内に密集しているという。

 トロントから160kmという距離は、大体ダウンタウンからナイアガラ・フォールズまでの距離。これを日本の感覚で比べると、東京都内から茨城県水戸市、または新大阪駅から名古屋駅くらいの遠さだ。カナダはこんなにだだっ広いのに、これだけもの人口が一つの街に集まっている。そう考えると家賃が高くなりつつあっても少し納得してしまうのでは?!

1000万本トロントに植えられている木の数

 トロントは都会のイメージが強いが、実は市の土地の25%は森林だという。市には実に1000万本の木が植えられているという。市の土地の18%以上が公園で、箇所数でいうと1500以上もある。ドッグランだけでも73ヶ所設置されている。夏には水遊びができる公園もあるので子供連れにも嬉しい。

 トロントの公園は一つ一つ個性があり、スケールもだいぶ異なる。こじんまりしたParketteと言われるものもあればHigh Parkのように巨大な公園もある。無料で入れる植物園があるAllan Gardensや、日本のようにお花見が楽しめるTrinity Bellwoods Parkもある。

 トロントの公園は住民に優しいだけでなく、実は自然と昆虫にとっても良い環境作りがされていることも魅力の一つだ。世界でハチの数が激減している中、トロントでは「Pollinator Protection Strategy」という計画が導入されている。公園などの自然スペースを有効活用することでハチが住みやすい環境を作り、彼らが花や果実に花粉を運ぶ手伝いをしている。今度ハチを見かけたら、怖がらずにゆっくり彼らの仕事を観察してみてはいかがだろう?

1896kmヤングストリートはかつて 世界一長いストリートだった

 1999年までYonge Street(発音は“young”と同じ)はギネス世界記録で世界一長いストリートとして認定されていた。ダウンタウンのQueen’s Quayから始まるこのストリートの最北端の場所がどこかという議論が長年続けられてきた。ヤングストリートは実際60kmしかないという説もあれば、まだ1,896kmあって世界で一番長いと信じる人もいる。

 長さはさておき、トロントの歴史で最も古いストリートだというのは確実らしい。Yorkという街が作られた18世紀後半から今の名前で存在していたと証明づける書籍が残されている。1960年代にはBloor StとYonge Stが交差するYorkvilleエリアがライブミュージックで栄え、バーやホテルなどがたくさんあり賑やかだった。1970年代にはEaton Centreショッピングモールがオープンし、40年間の運営にピリオドをうち、2010年に今の象徴的な建物に建て替えられた。近年ではYonge-Dundas Squareも近代化され、ニューヨークに似た街並みで観光名所として知られるようになった。

30km PATHの長さ

 トロントのダウンタウンで地下鉄を使う人ならPATHという文字をよく目にするだろう。PATHはダウンタウンにある地下街の名称で、主要なオフィスビルやモールをつなげている。その歴史は1900年にもさかのぼるそうだ。コロナ前は1200もの店やレストランがあり、平日のお昼間はランチや食後のコーヒーを楽しむ会社員らで賑わい、1日にPATHを使う人の数はおよそ20万人だと言われていた。

 TTCの駅に直結しているので、雨や雪に濡れることなく最寄りのビルなどにつけることが魅力的。もちろん信号もないのでスムーズに行動することができる。こじんまりした靴下屋や床屋が並ぶ風景は、どこか日本の地下街によく似ている。だが、ひとつ日本との大きな違いは、平日の3時以降や週末になると多くの店が閉まり始め、人もあまりいないので賑わっている平日に行く方が断然面白い。

287ヘクタール トロント動物園の敷地の大きさ

 世界でもよく知られるトロント動物園では合計5,816もの動物が飼育され、種類だけでも500近くある。敷地面積は287ヘクタールでカナダ最大の動物園だ。敷地内にはいくつかティム・ホートンズがあり、どこを歩いていても赤いテイクアウトのコップを持っている人ばかりなのが実にトロントらしい光景だ。

 園内にはカジュアルにベビーカーを押しながら歩く子供連れの人がたくさん見かけられるが、動物園を全部歩くとなると実は10kmも距離があり、かなりの体力がいる。動物と動物の間の距離はさほど遠くなく簡単に歩けてしまう。だが、坂道もあるので園内をいっぺんに全部歩きで制覇しようと考えているなら、次の日は筋肉痛になることを覚悟しておいた方が良いかもしれない。もちろん、歩きたくない人のためはZoomobileというシャトルも運行されているのでご安心を。

100トロント 公共図書館の 分館の数

 トロントの公共図書館は世界でも最も忙しい図書館システムの一つだとして知られている。別館だけも100館あり、年間の利用者数は550万人を超える。市民の68%(およそ104万人)が図書カードを持っている。トロント公共図書館で一人が借りる冊数は世界のどの図書館よりも多いらしい。コレクションには1000万以上の本や、CD、DVD、eBookなどがあり、英語だけでなく40ヶ国語の書籍などが楽しめる。デジタルコンテンツも充実しているため、図書館に足を運ばなくてもアクセスできる。

 別館は一つ一つユニークなのが魅力的だ。例えば、歴史的建造物の中にあるQueen/Saulter Branchやアウトドアスペースも設けられているBloor Gladstone Branchが特徴的だ。他にはネットでトロントを調べると必ず出てくるToronto Reference Libraryがある。デザインが「映える」図書館は実は日系カナダ人の建築家レイモンド・モリヤマ氏がデザインしている。彼はOntario Science CenterやBata Shoe Museumも手がけている有名な建築家だ。様々な雰囲気を楽しめるトロント公共図書館の別館の中でお気に入りを探してみては?

1849年 トロントの 公共交通機関(TTC)の始まり

 トロントで初めて運営された公共交通機関は、セントローレンス・マーケットからヨークビルまでヤング・ストリートを移動するためのWilliams Omnibus Bus Lineだった。それから1861年に路面電車を導入することが発案され、最初は民間の事業が運営していた。1920年にToronto Transportation Commission(TTC)が発足され、その事業の一部を乗っ取った。1921年から1953年の間にサービスは拡大し、35もの新しい路線が作られた。トロントから郊外へのアクセスも配慮され、23の路線が足された。路面電車は第二次世界大戦中にガソリンが自由に代えなかった時代に人気を得たという。

 1954年に今のToronto Transit Commissionという名前に変わり、市が完全に運営するようになった。今では路面電車のほかに地下鉄とバスがあり、少し昔まではトロント・アイランドへのフェリーや郊外行きのグレー・コーチ線もTTCが管理していた。Wheel-Transという障害者用の送迎サービスもあり、電車やバスにアクセスしにくい人たちの交通もサポートしている。今ではニューヨークとメキシコの公共交通機関に続き北アメリカで3番目に大きなシステムとして知られている。

52台 Casa Lomaにかつて 設置されていた電話の数

 カサ・ロマは北アメリカに唯一ある城だ。1914年にカナダの大富豪ヘンリー・ペラットが巨額を注ぎ込んで建てたが、彼が実際にこの豪邸に住んでいたのはわずか10年だった。戦後の不景気のためペラットは家を手放し、その後ホテルとして使われたのちトロント市が観光名所して管理・運営している。ゴージャスな内装はもちろん、カナダの歴史が詰まっていることも面白さの一つだ。当時では珍しかった電灯が5000個、電話が52台もあり、城のあらゆるところに設置されている。市の電話のほとんどがこの邸宅の中にあったそうだ。

 その他、家の中に水洗トイレや風呂があること自体珍しかった時代に、ペラットはたくさんシャワー口のついているカスタムデザインのシャワーを取り寄せている。第二次世界大戦中、カサ・ロマはイギリスの軍事兵器の保管所として使われていた。そのため城の3階では主に戦争博物館のようにたくさんの展示物や写真を見ることができる。単なる素敵なお城に見えるかもしれないが、実は奥が深い名所である。

200カ国 トロントに住む人の国籍の種類

 トロントに住んでいる人の50%がカナダ以外の国で生まれたという。その数に似て56%のトロント人口の母国語が英語だそうだ。英語の次に多いのは中国語(CantoneseとMandarin)で50万人以上の間で使われている。そのほかタガログ語、イタリア語、ポルトガル語などたくさんの外国語が飛び交っている。トロントには140もの「Neighborhood」がある。「Neighborhood」は直訳すると「近所」になってしまうが、「~エリア」や「~界隈」を意味する言葉でもある。

 例えば、ケンジントン・マーケット、レスリービル、ダンフォースなどは全て「Neighborhood」で、トロントの場合界隈がBIA(Business Improvement Area)として成り立っている場合も多い。BIAはテナントらが集まってそのエリアをどう盛り上げていくかを協力して考えていく役割があり、日本語でいうと町内会や商店街組合のような存在である。多国籍なトロントでは、チャイナタウン、リトルイタリー、リトルポルトガルなど国籍にちなんだNeighborhoodとBIAがある。本場の味が楽しめるレストランやカフェはもちろん、道路の標識などに英語とフランス語以外にその国の言葉で表示があるのもトロントならではだ。

6万5,617人 トロント大学に在籍している大学生の数

 2021年度のトロント大学St. George Campusの在学生の数は6万5,617人だった。そのうちの 4万5,370人が大学生、 2万247人が大学院に所属していた。ミシサガとスカボローのキャンパスにもキャンパスを持つこの大学には、合わせて2万7,130人の生徒がカナダ以外の170の国から学びにきている。ダントツに多いのが中国人で、その次にインド人、アメリカ人と続く。

 全体の生徒数もキャンパスの多さもカナダNo.1だ。カナダのランキング一位の大学だが、世界の大学に比べても18位という有名さだ。トロント大学では700もの学部から専門を選ぶことができる。大学院でも300の学部が存在する。その学びをサポートしてくれる図書館の数も40館あり、大学のライブラリー・システムは北アメリカで3つ目に大きい図書館システムとして知られている。

25% ハリウッド映画の 25%がトロントで 撮影されている

 昨年トロントを含むオンタリオ州でテレビや映画制作に関わっていた人はおよそ4万8千人いるという。照明技術にあたる人、大工、セットデザイン、衣装など、2020年に比べて雇われた人の数は38%も増えたという。2021年には394ものテレビや映画の撮影がオンタリオ州で行われ、そのうちの274が国内の制作だった。残りの120ものプロジェクトは国外、すなわちアメリカなどなどの制作だった。国外のプロジェクトだけでも15億カナダドルの利益をもたらしている。これは国内の9億6500万円よりもはるかに上回っている。

 トロントは以前からハリウッド映画の撮影場所として人気があった。ハリウッド映画のおよそ25%がこの街で撮影されているという。ニューヨークやボストンなどの東海岸の街に似た外観がセットによく使われている。例をあげると『グッド・ウィル・ハンティング』や『ヘアスプレー』がある。北アメリカ唯一のお城、Casa Lomaも『シカゴ』や『X-men』など、たくさんの作品に登場する。

76万トン トロント市内で 一年間に出る 家庭ゴミの量

 トロントの人口は300万人近くで、市内から出る家庭ゴミは年間で76万トンだという。人口で最も近い日本の都市は大阪市で、大阪市の令和2年度のゴミ処理量(焼却量)は86万トンだった。その次に大きい都市はゴミを減らす活動に力を入れてきた名古屋市で、家庭ゴミの年間量は58.8万トンだったという。ゴミについてはどの国や都市も同じような問題を抱えている。

 例えばオンライン・ショッピングの普及で段ボールの量が絶えない中、新聞や雑誌などの印刷物の量が減っている。コロナになってからはテイクアウト、デリバリー・サービス、ミール・キットなどがよく使われるようになり、便利になりつつもゴミが増えていくばかりだ。トロントではリサイクルをより簡単にするため「TOwaste App」というアプリが開発された。このアプリではどんなアイテムでも検索でき、どのように捨てる、またはリサイクルしたらいいのか調べることができる。ゴミの収集日や時間、そして寄付を受け付けている場所の紹介などもあり、ゴミに悩んだ時はまず見て欲しいアプリだ。