【私たちに身近な大自然!神秘と魅力の宝庫】オンタリオ湖|#数字で見るシリーズ|第二特集

【私たちに身近な大自然!神秘と魅力の宝庫】オンタリオ湖|#数字で見るシリーズ|第二特集

五大湖の1つであり、トロントに住む人にとっては身近にあるオンタリオ湖。まるで海のように大きく美しく、自然の偉大さを感じさせる。そんな湖の歴史や生態について、実は知らないことも多いのでは?今回はオンタリオ湖の神秘と魅力について、数字から深掘りして見ていこう。

#01.世界13位 四国サイズの大きさ

カナダとアメリカの国境付近に連なるスペリオル湖、ミシガン湖、ヒューロン湖、エリー湖、そしてオンタリオ湖からなる五大湖。その中で面積では最も小さいのがオンタリオ湖だ(7320スクエアマイル=1万8960平方キロメートル)。地球規模で見てみると世界13位の大きさを誇り、日本でいうと四国と同じくらいのサイズ。それだけ大きなものがトロントに面していると考えると、いかに大きいのか想像しやすいだろう。

深さではどうかというと、五大湖の中では平均深度を基準にすると2位、最大深度を基準にすると3位。平均深度が283フィート(86・2584メートル)で、最大深度は802フィート(244・45メートル)だ。これは世界的にはそこまで深い湖というわけではないが(世界1位はクレイター湖で592メートル)、自然の神秘を感じるのには十分だろう。

#02. 1万年以上をかけて形成された歴史

 オンタリオ湖の歴史について少し紹介しよう。湖が今の水位、形、水の流れなど最終的に確立されたのは約1万1000年前のことだと言われている。もともと最初は湖ではなく、単に厚さ2キロの氷床があるだけだったという。しかし温暖化したことで数千年をかけて氷が解け始め、雪解け水が地表のくぼみを埋めることで徐々に幅を広げた小さな川になった。この小さな川がおよそ2万年前の氷河期の大陸氷床の力強い動きによってさらに広がって形を変え、最終的に今のオンタリオ湖になったのだ。

氷床が解けるにつれて動植物は氷が後退することでできた不毛の地へと北上することになり、先住民族が土地に住み狩猟をしたり農業を営んだりし始めた歴史へと繋がる。

トロントのスカボロー地区に「スカボロー・ブラフ」という断崖になっている観光地がある。これは古い氷河堆積物や湖の堆積物などが交わることでできたものだ。その他にも、キングストンには岩だらけの海岸があり、ハミルトンやアメリカ側のメキシコ湾には広大な砂浜があるが、それらは湖の持つこの長い歴史の中で形成されてきたものだという。

#03. 名前がついたのは1641年

 オンタリオ湖という名前の由来は、北米の先住民族が使う言語の1つであるイロコイ語から来ていると考えられている(いまだに専門家の間でも定かではない)。意味は「美しい湖」や「きらめく水」だ。

湖を最初に訪れたと言われているヨーロッパ人は、1615年のエティエンヌ・ブリュレというフランスの探検家だ。その後多くのヨーロッパからの入植者がカナダの土地にやってくるわけだが、オンタリオ湖という名前が入植者たちによって付けられたのは1641年のことだった。この名前は1656年には北アメリカの地図に登場していて、オンタリオ湖はカナダの国の歴史よりも長い360年以上の歴史を持っていることがわかる。その事実から、必然と「オンタリオ州」という名前はオンタリオ湖が先に来ているということもわかるだろう。しかし現在の名前になる前にいくつか別の名称もあったようで、例えば1712年の地図には「ラック・フロンテナック」とフランス語の名前も載っていた。

湖の歴史を語る上で、これらヨーロッパ人たちの影響はとても大きい。当初はナイアガラの滝があるために他の湖と切り離されていたオンタリオ湖は、1830年代にウェストランド運河が開通したことで他と繋がりを持つことができるようになった。

#04. カナダ人口25%の生活を支える水

 オンタリオ湖はカナダの人口約4000万人のうち4分の1にあたる1000万人もの人々の生活に深く関わり、必要不可欠な資源になっている。カナダではトロントをはじめ、ハミルトン、キングストン、オークビルなどの地域に面し、そこに住む人々に美しい景色と豊かな資源を提供しているのだ。

そんな湖の水源はナイアガラ川だ。エリー湖から流れ出るナイアガラ川を水源に、セントローレンス川へと流れる。水位は他の湖と同様に季節や年間降水量の変化などによって異なり、水位が変動することでむしろ湖の生態系に良い影響を与え広大な湿地帯を生み出し、生態系を維持することができていると考えられている。

塩水ではなく淡水(フレッシュウォーター)であり、五大湖全体での話にはなるが世界の淡水のうち21%を五大湖が占め、北アメリカにおいては84%を占める。ちなみにオンタリオ湖の現在の水量は推定では393立方マイル(約1638立方キロメートル)に及ぶ量だと考えられている。これだけの水量を有するから、カナダ、そしてアメリカで市民の生活用水としても多く利用されているのだ。

#05. 120種以上の魚と300種以上の植物生息

 オンタリオ湖は栄養分が豊富なため、さまざまな生物、動植物が生息している。植物の生態系を支えているのが、湖岸線に沿った砂浜だ。砂浜には315種類以上の植物が生息していて、これらが砂丘システムを安定させて侵食を防いでいる。また、湖中には藍藻類、緑藻類など植物プランクトンやウォーターリリーなどの水中植物や雑草も生息している。

もちろん魚類も豊富に存在している。外来種が入ってきたことによって大きな打撃を受けた種もあるが、在来種であるレイクトラウトやタイセイヨウサケ、外来種のギンザケなど120種以上を見つけることができる。オンタリオ湖といえばキングサーモン(マスノスケ)の釣り場として知られているが、実はキングサーモンはオンタリオ湖が原産ではない。最初にオンタリオ湖に入ってきたのは1873年のことで、1970年代になって初めて持続可能な漁業として確立された。キングサーモンが入ってきた理由は、ニシン科の外来種で繁殖がかなり進んでしまったエールワイという大型魚を捕食することだったという。

また、湖にありがちな「伝説の生き物」というのもその存在が信じられている。地元の伝説だけではなく開拓者らによる話や現代の目撃談などもある巨大なヘビのような怪物は、他の五大湖でも目撃証言があることから、本当にいるのではないか…と存在をリアルに感じさせる。

#06.240年前の難破船など秘宝眠る

海のように大きなオンタリオ湖とあっては、“秘宝”も多く眠っていると噂だ。ヨーロッパからの入植者が多かった時代、オンタリオ湖を含め五大湖は多くの人の通り道だった。特にキングストンにあたっては歴史的に軍事戦略の要塞だったこともあり、18、19世紀には多くの船が激しい砲撃戦にあったという。それらの歴史から、難破船や湖底に沈んだ財宝などいくつもの話が残っている。例えば18世紀にあった七年戦争によってフランス軍の砲艦から失われた金塊が、キングストンから西へ約1時間のプリンスエドワード群の砂浜に今も埋もれているという地元の言い伝えがあるとか。また、沈んだ船に給料箱が積まれていた、海賊が襲撃した際に銀貨の入った樽が紛失したこともあったなど噂は絶えない。

難破船が実際にオンタリオ湖から見つかったこともある。「HMSオンタリオ号」というイギリスの軍艦は、今から240年以上前の1780年10月31日のハロウィーンの夜に沈没した。この沈没船は水深150メートルを超える場所で2008年に発見され、ほとんど無傷で良く保存された状態だったため「五大湖で発見された唯一の完全無傷のイギリス軍艦」と呼ばれている。専門家らは、オンタリオ湖の冷たく新鮮な水が船の腐敗を遅らせ、湖底に沈んでいたのにも関わらず保存状態が良かったと考えている。

#07. 水が流出→流入までに平均6年

湖には「滞留時間」と言って、水が流入してから流出するまでの時間を測る指標がある。もちろん湖の大きさや周りの環境によってその時間は大きく変わるが、オンタリオ湖の場合は平均滞留時間が6年と言われている。これは湖の水量と平均流出量に基づいて計算された期間だ。ちなみに世界で最も長い滞留時間は、南極大陸のボストーク湖で1万3300年。五大湖だと、スペリオル湖はサイズに比例して滞留時間が191年とかなり長い。

オンタリオ湖の滞留時間が他の湖よりも短いのは、サイズもあるが五大湖の水が全て最終的にはオンタリオ湖に流れ着くという理由もあるようだ。五大湖の水はオンタリオ湖を通り、北東からセントローレンス川を通って大西洋に出る。左下に位置するエリー湖はナイアガラ川を通ってオンタリオ湖に流れるので、オンタリオ湖に集まる水が多いのだ。五大湖の淡水を大西洋に流すという役割を担うオンタリオ湖は、五大湖においても重要な位置付けにあることがわかるだろう。

#08. 100のビーチと2000の島々

オンタリオ湖には100以上のビーチがあり、夏になると多くの人が湖の美しい景色を楽しみにやってくる。例えばプリンスエドワード群にあるサンドバンクス州立公園もよく知られたビーチの1つであり、その他にも最も人気のあるビーチの1つがトロントの北側にあるバリーという町にあるワサガ・ビーチだ。このビーチは世界で最も長い淡水のビーチとして有名だ。

ビーチだけではなく、湖上にある島の数も多い。およそ2000に及ぶ島が存在し、湖の北岸約3キロメートルに浮かぶアマースト島、東側に位置するギャルー島、プリンスエドワード湾の北西にあるワウプース島などが知られている。その中でも最大の島はセントローレンス川への入り口に位置するウルフ島で、長さ約29キロメートル、面積は48平方マイル(平方124.319キロメートル)、住民の数は約1400人だ。

#09. 200年以上続く海上輸送

オンタリオ湖の海上輸送の歴史も長く、年間数十億ドルを生み出す大きな産業になっている。200年以上も続く海上輸送業は、年間数百万トンの製品や資材をアメリカとカナダに運び、五大湖への玄関口であるオンタリオは100以上の港への海上貿易に必要不可欠な役割を担った場所だ。特にニューヨーク州側にあるオスウェゴ港は、最大級に大きなタンカーや貨物船の荷物の積み下ろしができる整備が整っている。

#10. 51kmを泳ぐスイマー73人

まさかのオンタリオ湖を泳いで渡った人たちがいる。solo swimsというWebサイトによると、これまでに水泳にチャレンジし成功したのは73人だ。最初に挑戦したのは、1954年9月に当時16歳だったマリリン・ベルさんだ(カナダ人)。ニューヨーク州側から、当時有名な長距離スイマーであるフローレンス・チャドウィックさんとほぼ同時に泳ぎ始めた。しかしチャドウィックさんは途中で体調不良により棄権せざるを得なかったものの、ベルさんは見事51キロメートルの距離を泳ぎ、湖を泳いだ史上初の人物になった。記録は20時間55分で、当時数十万人がベルさんのゴールを見守ったという。

彼女を皮切りに、その後実は毎年のように湖を泳ぐスイマーがいる。今年も7月から8月に7人が挑戦。41歳のカナダ人女性、ジェシー・ハレウィッチさんが22時間かけて泳ぎ切った。

#11. 平均10℃程度の水温ビールに最適?!

 オンタリオ湖の水温は季節や天候によっても変わるが、夏は23℃程度、冬は2℃程度だ。この淡水かつ低い水温は、実はビールを冷やすのに最適だと言われているとか。というのも、ビールを冷やすのに最適な温度は10℃より低めと言われていて、オンタリオ湖の平均水温と似ているからだ。

醸造会社もたくさんありカナダで大人気のビールだが、2017年にトロントのある男性がオンタリオ湖でキンキンに冷やされたビール瓶を発見したことが話題になった。

男性によると、ビーチの砂に埋もれて逆さまになっていた小瓶を2つ見つけたという。キャップが錆びていてどの銘柄かはわかっていないが、キャップに残っていたかすかな緑色からピルスナービールではないかと考えたそう。また、ビールメーカーがロングネックボトルに切り替えたのは1980年代初頭のことで、今回発見された瓶はそのボトルとは異なるため、少なくともその時代よりも前のものだろうと推測されている。

その時代の人たちはビーチでビールを飲むことを好み、実際に湖にビールを入れて冷やすということもしていたとか。その時に入れたものを長い間忘れてしまっていたのかもしれないが、それが数十年後に冷やされた状態で発見されたというのは驚きである。