母の日を前に、カーネーションなどの花を贈ろうと考えている人もいるのではないだろうか。特別な時に特別な人へ贈りたいと思う美しさを花は持っている。今回はそんな魅惑の花や美しい庭といったキーワードに加えて、少し幅を広げてカナダに生息する植物といったものまで数字で見ていこう。
#01. 投票数80%を占めた非公式国花「ゴゼンタチバナ」
日本の国花は桜と菊、アメリカの国花はバラ。ではカナダの国花は?実はカナダ、国として国花をいまだに定めていない。2017年にカナダ建国150周年を迎えた際、それを記念して国花を決めようというキャンペーンが実施された。その中で投票数の80%を占める1万人以上の人が投票したのがゴゼンタチバナ(Bunchberry)だった。世界第2位の面積を誇る広大なカナダの全州で見ることができる希少な花の1つで、正式に国花にしてほしいという請願まで議会に提出されたものの、残念ながら承認されることはなく、いまだに国花は正式には決まっていないというのが現状だ。
多くの人が選んだゴゼンタチバナという花は一体どんな花なのだろうか。高さ5~15cmで、葉の数は4~6枚。白く美しい花が咲くのは必ず葉が6枚のものだけとされていて、葉が4枚だと次の年には花が咲くだろうと考えられているとか。毎年6月頃に花を咲かせ、夏の終わり頃になると赤い実ができる。カナダやロシアなど北半球の中でも北方にある地域によく生息するとされている。オフィシャルとして国花には選ばれなかったが、カナダ国民が考える“国花”として覚えておきたい。
ゴゼンタチバナ
- 非公式のカナダの国花(投票1位)
- カナダの州全部に生息
- 毎年初夏に花を咲かせる
#02. 1965年
カエデの葉を国旗に採用
メープルリーフで有名なカナダ。カナダの国旗は「サトウカエデ」というなんとも日本人の名前のような木の葉を描いていて、みなさんもご存知の通り、この木の樹液がメープルシロップの原料になっている。国旗に描かれた葉をよく見てみると、葉のトゲと枝の合計12個でカナダ10州プラス2つの準州が表されている。
そもそもなぜサトウカエデの木がカナダの国旗に採用されたのだろうか。調べてみると、カナダを開拓した昔の人たちが、やはり厳しい冬に耐えられそうにないほど苦しい思いをしていた時のこと。先住民の教えにより、寒い冬をカエデの樹液をすすって飢えをしのいだというなんとも胸を打たれるストーリーがあったとのこと。そういったストーリーをもとに、今の国旗のデザインができあがったのは1964年(国旗として採用されたのは1965年)だ。
今ではカナダの発展に欠かせない大きな存在となっているカエデの木。貴重な木材製品としても貢献し、カナダのメープルシュガー産業は世界的にも大変大きな役割を担っている。
カエデの葉が樹木のエンブレムに認定されたのは1996年と、実は最近のことだ。世界には150種のカエデが存在していると言われているが、そのうち10種がカナダに生息している。カナダのどの州でも見ることができるほど、メープルリーフの存在感は大きい。
カナダ国旗の歴史
- カナダの国旗=サトウカエデの葉
- 1965年国旗に採用
- 1996年国の樹木のエンブレムに採用
#03. メープルシロップ生産量 1億kg超
カナダのシンボルでもあるメープルリーフから得られるメープルシロップだが、カナダ政府が発表したデータ(最新が2022年)によると、世界のメープルシロップ生産量の約78%をカナダが占めている。そのうち92%がケベック州産ということで、2位のニューブランズウィック州(約5%)と大きな差をつけている。カナダ国内で多くのカエデの木を見ることができると有名なケベック州だけに納得だ。
生産量はここ15年ほどで急激に増加している。Statistics Canadaのデータによると、2008年には3083万キログラムだった生産量は上がったり下がったりを繰り返しながらも安定して右肩上がりに伸びていき、2022年には過去最高生産量を記録。前年より約3600万キログラムも多い1億460万キログラムを生産し、天候に恵まれたこととメープル産業が安定して拡大を続けていることから最高の数字を叩き出したと分析されている。ちなみに、2022年のメープルシロップの大きな輸出相手国はお隣アメリカで61.9%、日本も5位で4.6%を占めた。
#04. チューリップの人気1位
1億本以上生産
街の中にある花屋やスーパーマーケットの中にある花コーナーを見てみると、さまざまなカラフルな花が並んでいる。花束をプレゼントする文化が日本よりは一般化しているであろうカナダだが、ではどんな花が人気なのだろうか。
カナダで2022年に切り花(葉や枝をつけたまま切られた花)にされた花は、全国で3億1760本だったことが、Statistics Canadaのデータからわかっている。最も多かった種類は、1億3460本のチューリップ。次いで7410万本のガーベラ、2660万本のキンギョソウ(波打つような花びらが金魚の尾びれにひているとされる花)、2190万本のキクと続く。
2020年以降、パンデミックの影響からガーデニングや植物栽培の人気が高まったということもあって、2022年の温室や苗床などガーデニングに関連するものの売り上げは前年より7.6%増加したという(売上51億ドル)。同様に、花の販売額も増加傾向を見せている。2022年の販売額は前年より6.7%増えて20億ドルだった。
#05. 国内に1万7000種の樹木や花
広大な面積を持つカナダには、生息している植物や花の数もかなりのものだと想像できるだろう。カナダ環境省によると、カナダには約1万7000種の樹木や花、コケなどの植物が確認されている。ツクシやシダのような維管束を持つ植物のうち約3300種がカナダで生まれたものであり、800種以上がカナダ以外の場所で生まれ、のちにカナダに外来種としてやってきたとされている。
例えばオンタリオ州南西部のカロリニアン森林地帯でしか見ることができないポポーという樹木は、とても珍しい木だ。ミツバチではなくカブトムシによって受粉し、カスタードやマンゴーのような風味を持つ珍しい果実を実らせる。また、同じくオンタリオ州で見ることができるベンバラサワギキョウという花は、真っ赤で見事な花を咲かせることで有名だ。湿原に多く生息し、夏に花を咲かせる。
Current Resultsというさまざまなデータを集めた会社が公表したデータを見ると、カナダには花が約4100種、針葉樹が40種、シダ植物が約210種、コケ類が約1300種存在していることがわかる。動物を含めると約8万種が同じ国に共存しているカナダは、やはり自然とワイルドライフであふれた地域だと言えよう。
カナダ = 1万7000種(樹木、花、植物)
- 花4100種
- 針葉樹40種
- シダ植物210種
- コケ類1300種
#06. 世界の庭ランキングBC州ブッチャートが7位
春といえば、やはり多くの美しい花を楽しむことができる季節でもある。では世界ではどんなガーデンが人気があるのか。
ジャパンレールパスがグーグルレビューやインスタグラムのハッシュタグ数などをもとに点数化し、独自で世界各地のガーデンをランキング化したデータがあるのだが、その中でカナダのブリティッシュコロンビア州にあるガーデンが7位にランクインした。
選ばれたブッチャート・ガーデンは、花の都とも名高いビクトリアにある100年以上の歴史を持つ庭だ。春はチューリップやスイセン、6月下旬からは数百種のバラ、秋は日本庭園の紅葉、冬は柊の赤い実など一年中さまざまな花や植物を楽しむことができるので人気だ。グーグルでの評価は4.7と世界的にトップクラスの高評価を受け、インスタグラムのハッシュタグは10万以上とSNSでの人気も高いようだ。
ちなみにこのランキングで1位になったのは、オランダのリッセにあるキューケンホフ公園で、インスタグラムのハッシュタグ数は約70万と桁違いだ。それを超えるハッシュタグ85万を記録している日本の新宿御苑は、第2位に入った。
#07. 1000種を生活に利用した先住民
カナダに住む先住民たちは、おおよそ1000種類以上の植物を食用、薬用、さまざまなものに使う材料として文化的な儀式や神話に利用してきた歴史がある。その過程で先住民たちが学んだ植物に関する知識が、今の先住民やそれ以外の人々の生活に役立っているものも数多くある。
ヨーロッパ人がカナダに足を踏み入れる前まで、先住民は食用作物の栽培を行っていた。「三姉妹」と呼ばれるトウモロコシ、豆、カボチャの他、ヒマワリなども栽培されていたとされる。500種以上の野生植物が食料として食べられていて、根菜類やベリー類、キノコ類など現在と同じようなものが食べられていたと考えられている。
また、500種以上の植物が医療的な用途に使われていたという。治療のための薬草療法が出来上がっていたとされ、例えば針葉樹のお茶を飲む治療や、皮膚のただれや発熱など多くの病気治療に効果的だったとされている。
掘立て小屋やカヌーなど道具を作る際にも多くの樹皮を使っていた。衣服の材料にもなり、樹木の樹脂を接着剤や防水剤として使用することもあったという。
先住民 = 1000種類の植物使用
- トウモロコシ、豆、 カボチャなど栽培
- ベリー類やキノコ類も
- 針葉樹からお茶を作り治療
- 傷や発熱などに薬草治療
- 衣服の材料
- 樹脂を接着剤代わり
- 道具の材料に
#08. 建国150周年を祝う
白と赤の「チューリップ」
カナダ建国150周年を迎えた時のことを覚えている方であれば、「カナダ150チューリップ」、別名「メープルリーフチューリップ」を聞いたことがある人もいるかもしれない。150年を記念した公式チューリップのことを指す。
前年の2016年にはチューリップの球根が一般販売され、400万個以上を売り上げたという。
また、2017年の建国500年祭では、オタワのカナディアン・チューリップ・フェスティバルが20万本以上のカナダ150チューリップの球根を植え、見るものを楽しませたという。
真っ白や真っ赤といった単色とは異なり、このメープルリーフチューリップは鮮やかな赤と白が混ぜ合わさった花びらを見せることを特徴とした。その2色で、カナダの国旗を表現したとされている。
このプロジェクトのため、カナダ政府はチューリップといえば思い浮かぶオランダとパートナーシップを結び、このスペシャルなチューリップをカナダ全土に広めた。特別な瞬間を祝うのに、やはり花は欠かせない存在だと言えるだろう。
建国150周年を祝う白と赤の「チューリップ」
- カナダ150チューリップ(メープルリーフチューリップ)
- 建国を祝う公式チューリップ
- 400万個以上の球根を売り上げる
- オタワでは20万本以上が咲き誇る
#09. 結婚式ブーケ人気1位はバラ
特別なオケージョンで使われ、見る人たちを幸せな気持ちにさせてくれるのが花だろう。例えば結婚式でも花嫁が投げる「ブーケ」は可愛らしく、幸せを運んでくれる特別な意味を持つ花束だ。カナダではどんな花がブーケトスに使われるのか、Adelerae Floral Art & Designという会社がランキングを作成した。
1位はやはり、ロマンチックな花言葉でも知られるバラだ。時代を超えて人気の古典的な花とも言えるが、愛と情熱を象徴するのにぴったりの花だろう。2位は、繁栄、幸せな結婚などの意味を持つピオニーだ。ジューンブライトという言葉があるほど6月の結婚式は人気があるが、ピオニーはまさにその時期が旬であるためぴったりの花だと言える。
トランペットのような形をしたカラユリが3位に入った。白、黄色、ピンクの色とりどりのユリが純粋さと美しさを連想させる。4位にランクインしたのは、カナダの切り花生産量でも1位に輝くチューリップだ。完璧な愛を象徴しているとされ、とても親しみやすい花であることから人気が高い。カナダ産のチューリップは4、5月に入手できるが、カナダではオランダ産のチューリップが1年中販売されている。その他、ランやアジサイなどの花もトップ10に選ばれた。
#10. 大麻を自宅で育てる人全体の5%
植物を少し別の視点から見てみよう。カナダで合法化された大麻も植物の1つだ。合法化されたからといって安全なものだと100%言い切ることはできないし、日本人の私たちが大麻を使用・所持した場合には日本の法律上罪に問われる可能性があるということは先に断っておきたい。そんなカナダにおいて、国内の大麻の使用者数は年々増えている。
カナダ政府が公表したデータ(Canadian Cannabis Surveyより)によると、2018年から2023年で大麻を使用した人の割合は若干だが増加した(22%が26%に増加)。その調査から過去30日間に使用したかという質問に対しては、約6人に1人が大麻を使用したと回答している。また、毎日使用していると答えた人は全体の6%で、2018年の5%からあまり変化がなかった。1年の間に大麻を使用したと答えた人のうち5%は自宅などで大麻を自ら育てていると答えており、他の植物と同じように大麻も植物の一種だということを改めて感じることができるのではないだろうか。
大麻を自宅で育てる人全体の5%
- 過去30日間では6人に1人
- 5%が自宅で大麻栽培