トロントから西へ遠く離れたカナダ第4位の都市カルガリー。税金が安かったり住宅価格もリーズナブルだったり、実は移民やカナダ市民とって最近ホットな場所になっている。また、近くに人気観光地バンフがあるだけに世界的にも大きな注目を浴びる場所だ。普段トロントに住んでいるとあまりわからないカルガリー(アルバータ州全体も含む)の魅力について、さまざまな角度から見てみよう。
#01. 人口増加率4.2% AB州が国内No.1
カナダで最も人口が多いトロントや留学生に人気のバンクーバーはもちろん、カナダの都市部では人口が増え続けている現状がある。しかし実は、カナダで最も人口増加率が高いのはカルガリーのあるアルバータ州であることはご存知だろうか。
Statistics Canadaのデータによると、2023年第一半期から2024年第一半期を比べると、全ての地域で人口が増加している。最も人口が増えたのはオンタリオ州で53万3000人増だが、アルバータ州は3位で20万2000人増加。増加率で見ると、オンタリオ州は3.3%の増加だがアルバータ州は4.2%で州別トップの増加率を見せた。2位には3.5%のプリンスエドワード島がランクインし、実は人口増加スピードが早いのは大都市ではないということが明らかになった。
労働人口も1つの重大な指標だが、アルバータ州では2023年5月から今年5月にかけて11万人以上が増加し、オンタリオ州とともに唯一10万人以上の労働人口が増えた州だった。また、アルバータ州の州都・エドモントンは、カナダのどの都市よりも労働人口の増加率が高く4.7%を記録していて、アルバータ州全体が現在ホットな地になっていることは間違いなさそうだ。
#02. 住みやすい都市 世界7位
世界的に住みやすい国として人気の高いカナダ。カルガリーを含め3つの都市が世界で住みやすい国ランキングトップ10入りを果たしている。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が公表した2023年の住みやすさインデックス。この中では、世界173都市を治安、医療、インフラなど5つの面から点数化し、総合スコアでランク付けしている。総合点96.8点で7位に入ったカルガリーは、治安の良さと医療、教育、インフラ整備の面では満点の評価。唯一文化や環境の面で点数を87.3点まで落とし、観光客の少なさや都市へのアクセスなどの点で若干課題が浮き彫りになってはいるものの、他の都市に決して劣らない高評価を受けている。
カルガリーは他の都市よりも税金が低いことで有名で、住宅価格も抑えられ犯罪率も比較的低く、自然と都市がうまく融合している地域であるから住みやすい場所として選ばれるのには納得だ。アルバータ州の人口増加率がカナダ国内1位であるという事実から考えても、その中で最大都市であるカルガリーが住みやすい都市として人気を得ているのは確かなようだ。
#03. 州内の消費税 国内最低の5%
日本とは違って、国全体で税率が統一されていないのがカナダの特徴だ。州別に税率が異なるため少し複雑であり、場所によって大幅に税金が違ってくるというのが日本人には不思議なところ。カルガリーのあるアルバータ州は、そんなカナダにおいて税金がとても安いと人気の土地だ。
カナダの税金には連邦消費税(GST)と州・売上税(PST)、そしてその2つを合わせたハーモナイズド消費税(HST)がある。GSTは国で一律5%と決まっていて、そこにPSTが上乗せされてオンタリオ州では消費税が13%になる。しかしアルバータでは、アルバータ政府が課すことができるPSTが0であるため、GST5%だけが消費税として課される。これはユーコン準州など人口が少ない地域と同じ税率で、都市部にもかかわらず低い税率が適用されているのはかなり得だと言える。
なぜアルバータでは政府が独自の税金を課さないのかというと、1つには豊富な石油資源によって州が潤っているという理由がある。他州より資源に富んでいるからこそ、市民はその恩恵を受けることができるのだ。
#04. 国内の石油生産量ダントツの83%
カナダが世界に誇るものの1つに、原油保有量が多いということが挙げられる。WorldAtlasのデータによると、カナダは世界の保有量の9%にあたる1636.3バレル(1バレルは約159リットル)を有し、ベネズエラやサウジアラビアに続いて世界4位。資源に富んでいることは国として大きな利益になることだが、その巨大な原油保有量のほとんどが眠っているのがアルバータ州だ。
アルバータ州はカナダ国内の石油量4割を州内に保有し、自他ともに認める“石油王国”だ。国内の生産量では全体の83.1%を占め(Statistics Canadaのデータによる)、2位のサスカチュワン(10.3%)と大きな差をつけダントツだ。石油が多くとれることで財源は潤っていて、そのために他州よりも低い消費税率の実現が可能だと考えられている。
その中でもカルガリーは、多くのエネルギー企業が拠点とする石油の街だ。とはいえ実際は自然エネルギーの活用に力を入れ、ネット・ゼロ・エミッションのような環境に配慮した政策に取り組むなど原油以外のエネルギー利用をより推奨している。アルバータ州のクリーンテック企業のうち半数以上がカルガリー市内に本社を置いているといい、持続可能な社会に向けて市全体で努力を続けている。
#05. 約60万ドルで家購入可能
トロントやバンクーバーなどの主要都市で住宅購入する際、最低100万ドルが必要と言われる。その一方で、カルガリーでは60万ドルで家を購入することができるというデータが公表されている。
金融に関する数多くのデータや情報をシェアするWOWA.caのデータによると、2024年4月の時点でカルガリーの住宅価格平均は60万8415ドル。同じアルバータ州のエドモントンでは約43万ドルと、カルガリーはアルバータ州の中では価格の高い地域であることがわかるが、バンクーバーは130万2794ドル、トロントでは115万6167ドルとカルガリーの倍近い価格で家を購入せざるを得ない現状を見ると、カルガリーは国内ではリーズナブルな値段をオファーしていることがわかるだろう。
コンドミニアムなどの賃貸ではどうかというと、Rentals.caの2024年6月データではカルガリーの1ベッドルームコンドの家賃は1733ドルで国内24位。1位のバンクーバー(2671ドル)や3位のトロント(2479ドル)と1000ドル近い差があり、賃貸も安いと言うことができる。住宅に関するコストを抑えられるというのは、物価上昇の激しいカナダでは非常に魅力的だ。
#06. 固定資産税率 国内6位
住宅購入を考える際、それに付随する税金も大きく気になるところ。税金が安いことで知られるアルバータ州の中でも、カルガリーは固定資産税が安いことで有名だ。
不動産会社のZoocasaが2023年に発表したレポートの中では固定資産税率がランキング化され、カナダ25都市の中でカルガリーは固定資産税の低さで6位に選ばれた。最も低い税率を誇るのは、0.27807%のバンクーバー。100万ドルの住宅にかかる税金は約2781ドルだった。対してカルガリーの固定資産税率は0.65718%で、100万ドルの住宅にかかる税金は約6572ドル。カナダで最も固定資産税が高いのはウィニペグの2.64%で、カルガリーは6位とはいえ税率がいかに低いかがわかる。
しかし実は今年、カルガリー市は予算編成の理由から固定資産税を引き上げることを提案している。市民はこれまでより8.6%(住宅の場合。住宅以外の企業などは3.1%)上乗せされた税率分を支払わなければならなくなるようで、固定資産税は0.66%から0.71%まで増加する。これでもまだ他の地域と比べて低い方ではあり、税率が低い地域であると呼ぶことができるだろう。
#07. 1年の91%は晴れ 国内イチの天気
天気はそこに住む人たち、訪れた人たちの気分までも変えてしまうほど重要なものだ。晴れの日はとても気持ちが晴れやかになるものだが、カナダで晴天の日が最も多いのはカルガリーだということがわかっている。
天気に関する情報やデータを公表しているWeatherStatsによると、カナダ国内でもっとも晴れの日が多いのはカルガリーで年間332.93日。これは実に1年の91%が晴れだという驚くべき数字である。データでは最も晴れの日が少ない場所としてブリティッシュコロンビア州のプリンス・ルパートを挙げているが、この地域では年間250日しか晴れの日がない。80日間も差があるカルガリーがいかに天候に恵まれているかがわかるだろう。時間単位で見てみても、他の地域よりも圧倒的に多い2396時間も日光がカルガリー市を照らしているという。
カルガリーは山が高くそびえる都市であり、乾燥してはいるものの気温が緩やかで、気温に関係なく晴れることが多いのだとか。ランキングでは10位までにアルバータ州にある地域が4箇所も選ばれていて、州全体の天気が良いということがわかる。
#08. 世界のきれいな街 カルガリー1位
世界で最もきれいな街ランキングにおいて、常にトップ3に入るのがカルガリーだ。
ここで「きれい」というのは、サステナブルや環境汚染などの面を含めてのことだが、アルバータ州では2007年からはToo Good To Wasteという独自のプロジェクトが始まり、州の廃棄物削減と管理のためのロードマップが敷かれるなど環境に対して高い意識を持っている州だ。その中でもカルガリーは空気がきれいなことでも知られ、最高級の排水浄化システムに投資し、埋め立てゴミの量を大幅に減らすなどの工夫をしている。住宅所有者へのエネルギー効率や再生可能エネルギーの設置などにかかる初期費用を支援するプロジェクト(CEIP)を市が呼びかけたり、さらにゴミのポイ捨てには最高1000ドルの罰金が課されたり、環境に配慮し持続性を考えたまちづくりに力を入れていることが国際的に評価されている。
旅行に関する情報を多数載せているウェブ「EnVols」のランキングでは、カルガリーは世界で1番きれいな都市に選ばれ、同じく旅行や生活情報を紹介するウェブ「The Home Exchange Blog」では世界で3番目にきれいな都市としてカルガリーを挙げている。
#09. 週3便日本ーカルガリー 結ぶ直行便
バンクーバー、トロント、モントリオールと日本には直行便があり、日本から留学をしに来る人や移民を目指して来る人にとって非常に必要不可欠なものとなっている。この3大都市に加えて、唯一日本との直行便を持つのがカルガリーだ。
2023年5月より新たに就航した日本とカルガリーを結ぶ路線は、カルガリーに本社を置き国内や北米などさまざまな路線を持つLCC「ウエストジェット」(カナダ第2位の大手航空会社)によるもの。日本―カルガリー線は同社初のアジア路線であり、カルガリーにとっていかに日本からの観光客が大きな意味を持つのかを示していると言える。カナディアンロッキーへの観光客だけではなく、カナダから日本への訪日観光客の数増加も就航のきっかけの1つだとしている。週3便運行していて、カルガリーが日本人にとって新たなカナダへの入り口になっている。
#10. 絶景バンフまで車で2時間
ナイアガラの滝と同じほど、カナダの人気観光地として知られるバンフ国立公園とカナディアンロッキー。カルガリーはその美しい自然を見に行くのにとても便利な場所に位置している。
アルバータ州の雄大な山脈中心地にあるバンフ国立公園は、美しいターコイズブルーの湖や冬には氷河など、絶景を楽しむことができる人気スポットだ。日本とカルガリーを結ぶ直行便を利用し、日本からも多くの観光客が訪れるホットプレイスである。旅に関するニュースを発信するTravel + Leisureによる「世界で最も美しい目的地」というカテゴリーでも名だたる世界の観光地とともに名前を連ね、US News & World Reportの「世界で訪れるべき最高の場所」ランキングにおいても堂々の15位にランクインするなど、世界中からの人気を集めるのがバンフだ。
そんなバンフから車で2時間の場所に位置するのがカルガリーだ。カルガリーから大型バスやシャトルバス、レンタカーに乗れば世界屈指の絶景を見ることができるというのは、カルガリーの1つの魅力とも言える。バス料金は片道70ドル程度のようだが、場合によっては10ドルで行けることもあるとか。ちょっとしたドライブ気分でカルガリーから車を走らせ、バンフの景色を見に行くのはいかがだろうか。