【日本の文化を発信するコミュニティーイベントへ】トロント発 『日本茶祭り』が 育む、つながりの力|主催者吉田桃代さんが語る第3回開催の舞台裏:想いを寄せ合う人々がつくった、1400人の賑わい

【日本の文化を発信するコミュニティーイベントへ】トロント発 『日本茶祭り』が 育む、つながりの力|主催者吉田桃代さんが語る第3回開催の舞台裏:想いを寄せ合う人々がつくった、1400人の賑わい

「こんなイベントがあったら楽しいに違いない!」という純粋な思いつきから始まったトロントの「日本茶祭り(Nihoncha Matsuri | Japanese Tea Festival Canada)」。3回目を迎えた今年も、主催者の吉田桃代さんにとっては、「無事に終わってよかった」という安堵の一言に尽きるという。これまで支えてきたプロフェッショナル団体の不在という状況の中で、吉田さんを支えたのは、海を越えて集まった職人たちのまっすぐな熱意と、「また関わりたい」と集う地元トロントのコミュニティーのあたたかなつながりだった。

来場者は1400人を記録し、イベントの広がりを実感できる一年となった。手揉み茶や和菓子のデモンストレーションは今年も実現し、出展者やボランティアからは「また参加したい」という声が自然と集まった。その温かな一体感が、会場に長く身を置きたくなるような高揚感と満足感を生み出していた。

毎年イベントの目玉となるワークショップは、伊藤園グループのティーテイスターによる基礎講座「日本茶101」、大人気の「茶道席」は裏千家の和室席に加え、JCCC茶道クラブ協力のもと「立礼」による新たなお茶席が実施され、書道家・前田典子先生率いる書道カナダによるワークショップも終日長蛇の列となった。茶道、書、和菓子、手揉みといった分野を超えて重なり合う知識と技が、信頼と友情を結び、イベントの厚みを一段と深めた。

今年も多くの人の力に支えられ、「日本茶祭り」は笑顔の余韻を残して幕を閉じた。思いつきから始まった企画が、いまでは自然に人が集まり、つながりが育つ場所へと変わりつつある。来年もまたこの輪がどんな広がりを見せるのか、静かな期待が高まっている。

—第3回を迎えた今年、まずどんな思いで当日を迎えられましたか?

毎回感じることではありますが、無事に終わってよかった。とその一言につきます。今年は第1回、第2回とサポートいただいたお茶のプロフェッショナル団体「日本茶業中央会/日本茶輸出組合」の皆様が来れないことが早い段階でわかっており、第3回、どう運営することで次に繋げることができるか。と意識しながらの運営となりました。

—プレッシャーの大きい中で迎えた3回目だったと思います。主催者として、特に支えになった瞬間や出来事はありましたか?

「日本茶祭り」のアイコニック的な存在でもある、「手揉み職人さんによる手揉み茶のデモンストレーション」はどうしてもお披露目したいと思っていたので、お声がけしたところ、予定をあけておいてくださったとのこと。

また、経験と文化的知識を兼ね備えたプロの和菓子職人さんも、「日本茶祭り」のために、またカナダに来たいと言ってくださいました。このイベントに「参加したい」と思っていただける方と、今年もご一緒できたことが主催者として精神的なところで一番助けられた気がします。

同時に、ベンダーさんも「また参加したい」、ボランティアさんも「またお手伝いしたい」と言っていただき、ほぼお馴染みメンバーで運営し始めました。心から嬉しく、光栄に感じましたが、同時に、「今後も参加し続けたい」「今後も関わり続けたい」と思っていただけるような、魅力あるイベント、組織として成長していきたいと思いました。

「こんなイベントがあったら楽しいに違いない!」と半ば思いつきで始めたこのイベントも、気づいたらたくさんの方を巻き込んで、ひとつのコミュニティーができあがってきているような気がしています。それなりの責任も感じるようになり、イベントが近づくにつれ、不安に押しつぶされそうになる日もありますが、無事に終わったあとの達成感は、プライスレスです。

——3年連続で訪れる方も増え、ついに1400人が集まるイベントへと成長しましたが、この広がりをどのように受け止めていますか?

「このイベントに参加してよかった」「窓会のようだった」など、「日本茶祭り」を通してベンダー同士の交流も活発になっているようです。主催者としてはこのイベントに関わることで、何らかのメリットを得てもらえたら嬉しく思っています。

昨年、このイベントを「大きくしない」方針にしたため、ベンダー数は増やしませんでした。今年は去年と同じくらいの人数がきてくれたらと思っていましたが、結果は100名ほど上回り、1400人ほどの方に来場いただけました。3年連続で来てくださる方もおり、毎年足を運んでくださる方のフィードバックも取り入れながら、次に繋げていきたいと思っています。

茶道・書・和菓子が交差する、学びと発見のワークショップ空間へ

「日本茶101」という日本茶の基礎と魅力にふれることができるワークショップでは、今年は伊藤園グループが担当して下さいました。講師を担当してくださったのは濱田由美子さん。ITO EN北米本社の方で、グループ内で「ティーテイスター・一級」の実力をもつ持ち主です。このイベントを立ち上げる前から「日本茶祭り」のコンセプトに賛同して下さり、応援してくれている私のよき理解者でもあります。伊藤園カナダの支店長の宮内さんも全面協力いただき、このイベントを盛り上げてくれました。

伊藤園グループも、手もみ職人の比留間さんも、和菓子の村田さんも、もともとは日本茶輸出組合さんを通して出会いました。日本茶輸出組合さんは参加こそできなかったものの、日本から、このイベントの成功を願って下さいました。「お茶」という共通のかかわる分野で、そこに生まれる信頼と友情も、このイベントを通して得た財産だと実感しております。
「茶道席」は毎年一番先に売り切れる人気のワークショップですが、今年は裏千家主催の和室席に加えて、2階で「立礼」といって椅子に座ってお点前をするお茶席が開催されました。2階席は殺風景なミーティングルームを「茶道空間」にするため、たくさんの工夫がなされました。担当して下さったのは、日系文化会館の茶道クラブのメンバーの皆さんです。生徒さん全員が心を一つに、お茶席を担当して下さり、来場者の方からも大変好評でした。

素敵な余談がありまして、この席で使われていた「野点傘」は、トロント領事館からお借りした傘でした。「日本茶祭り」で使うことがあれば是非とオファーしていただいた経緯があります。このように、領事館をはじめ、ジャパンファウンデーション、JETROなどの公の機関がこのイベントの後援を快く引き受けて、このイベントを応援して下さっています。

今年は前田典子先生率いる、「書道カナダ」が全面協力・参加してくださったことも、大きな変化でした。コラムでも紹介したことがありますが、日本茶祭りのロゴをはじめ、去年と今年に会場で配られたトートバッグのデザインも前田先生の書をもとに、先生の娘さん御夫婦が担当して下さっています。長年トロントで文化発信をされている前田先生の影響力は偉大で、前田先生が監修された、茶道に使われる「禅語」でしおりをつくる体験コーナーは、終日人気で列があとを絶たず、ゲストスピーカーでは前田先生の生徒さんのみならず、たくさんの来場者が講演を楽しんで下さいました。

「日本茶祭り」は、その裏ではたくさんの方の知識と才能と情熱と協力と賛同があります。感謝の気持ちとともに、このイベントがこれからも「日本の文化を発信」していくコミュニティーイベントであり続けたいと、願わずにはいられません。