笑って泣いて恋愛を考える「新旧洋画 恋愛映画」|特集「恋とか。愛とか。」

笑って泣いて恋愛を考える「新旧洋画 恋愛映画」|特集「恋とか。愛とか。」

 恋とか愛とか語るならやっぱり映画は外せない!昔の映画も、いま観ても十分面白いものがたくさんあって、それどころかつまらない新作を観るよりもよっぽど面白いかもしれない名作が充実。洋画のラブコメ好きの私としては、コメディ寄りで笑って泣いて楽しめる恋愛映画を中心に、新旧交えて15作品をまとめて紹介。

1950年代~1990年代の名作

Roman Holiday
『ローマの休日』(1953)

監督:ウィリアム・ワイラー / 主演:グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン

 公務でローマを訪れたヨーロッパの王女が、絶え間ない公務に嫌気がさして市内に飛び出し、アメリカ人記者と出会う。当初は記事のネタ目当てで王女の相手をしていた記者だが、王女と過ごすうちに恋に落ちる。

 言わずと知れたオードリー・ヘプバーン主演の名作です。白黒映画ながら、王女と記者の2人が駆け巡るローマの街並みは美しく、2人とともに恋のひとときを過ごすような楽しさが詰まっています。でも、楽しいだけでは終われない王女と記者の関係性。忘れがたいローマでの1日が心に刻まれる結末を、ぜひご自身の目で確かめてほしいです。

Singin’ in the Rain
『雨に唄えば』(1952)

監督:スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー / 主演:シーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ

 映画に音がつき始めた1920年代のハリウッドで、サイレント映画のスター俳優がジャスシンガーの無名女優に出会う。トーキーに変わりゆく時代の映画製作の舞台裏と、恋の顛末が描かれる。

 これを恋愛映画のくくりに入れるのか?と思ってしまうミュージカルの大傑作ですが、ミュージカルとしてもコメディとしても恋愛モノとしても名作なので、ご紹介します。映画業界の内幕モノとして面白い筋書きがあり、それを見事に歌に乗せるミュージカルナンバーがある。超人的な身体能力による踊りがコミカルに物語に絡み、最初は反発しあっていた2人が恋に落ちるという恋愛映画の王道も行く。すべてにおいて奇跡的な面白さを持つ作品です。

My Fair Lady
『マイ・フェア・レディ』(1964)

監督:ジョージ・キューカー / 主演:オードリー・ヘプバーン、レックス・ハリソン

 言語学の教授が、訛りのひどい下町の娘に上流階級で通用する話し方を教え込もうとする。当初は教授が友人との賭けで始めたことだったが、次第に教授と娘の間に恋が芽生える。

 オードリー・ヘプバーン演じる下町の娘が、洗練された話し方を身につけて淑女に変わっていくさまや、教授が下町の娘の内面に触れて恋心を自覚していくさまが、人々の階級意識や2人の恋の行方とともに丁寧に描かれるミュージカル・コメディの名作です。後述の『プリティ・ウーマン』とあわせて、ぜひ観てほしい1本です。

The Apartment
『アパートの鍵貸します』(1960)

監督:ビリー・ワイルダー / 主演:ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン

 上司が不倫するための場所として自分のアパートの部屋を提供していたサラリーマンが、自身が恋した女性の上司との関係に気づいてしまう。悲哀とユーモアあふれる恋物語。

 これも白黒映画ですが、今観ても隅から隅まで面白いユーモアあふれる会話劇です。ほんと、騙されたと思って観てほしい1本です。『お熱いのがお好き』などコメディ映画の傑作を数多く残したビリー・ワイルダー監督の代表作で、アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞など5部門に輝いています。

Melody
『小さな恋のメロディ』(1971)

監督:ワリス・フセイン / 主演:マーク・レスター、トレイシー・ハイド、ジャック・ワイルド

 小学生の男の子が同級生の女の子と恋に落ち、結婚すると言い出す。最初は冷やかしていた親友やクラスメートも次第に2人に協力し始め、反対する大人に対し大騒動を巻き起こす。

 一途な幼い恋がとてもかわいらしい青春初恋映画といったところでしょうか。子供目線で見る恋の初々しさと、大人社会のルールのままならなさを、恋する強い思いで突破するような爽快感。そんな物語が、全編をみずみずしく彩るビー・ジーズの楽曲に乗せて展開する名作です。

The Way We Were
『追憶』(1973)

監督:シドニー・ポラック / 主演:バーブラ・ストライサンド、ロバート・レッドフォード

 1930年代に大学で出会った男女。アルバイトをしつつ積極的に政治運動にも参加する苦学生の女性と、裕福な育ちで学生生活を謳歌していた男性が、立場の違いを越えて惹かれ合う。しかし、年月の経過とともに価値観の違いが埋められなくなっていく。

 若かりし頃のロバート・レッドフォードがとんでもなく美しく、平凡な女性である自分が恋の相手かのように錯覚し、ロバート・レッドフォードに見つめられるだけで幸せになれる映画です(個人的見解です)。ただ、そんな幸せな時代は移ろい、長年にわたって少しずつ壊れていく思いや離れていく心、それでもなお残る相手への思いなど、長い時間の中での忘れがたい恋の変遷が、1930年代から50年代の米国の政治的な背景も交えて描かれる名作です。

St. Elmo’s Fire
『セント・エルモス・ファイアー』(1985)

監督:ジョエル・シューマッカー / 主演:デミ・ムーア、ロブ・ロウ、アンドリュー・マッカーシー

 大学時代の同級生7人が、卒業し社会に出てそれぞれの道を歩み始めた先で、仕事や恋や結婚に悩む姿を描く青春群像劇。

 これは恋愛映画と言うよりは青春映画ですが、1980年代の米映画は青春映画の傑作だらけなので、恋愛モノを選ぶつもりが行き着くところはどうしても青春映画になってしまいました。この辺は、私が若かりし頃にこの年代の青春映画を観て育ったせいかもしれません。ただ、恋や人生に思い悩む若者の群像劇なので、きっと登場人物のどこかに自分の姿を投影し、心に刺さること間違いなしだと思います。

Pretty Woman
『プリティ・ウーマン』(1990)

監督:ゲイリー・マーシャル / 主演:リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ

 ハリウッドの街角で娼婦として客を待っていた女性のもとに、実業家の客が訪れる。一晩過ごして彼女に興味を持った実業家は、一週間の契約でビジネスに彼女を同伴させようとするが、次第に2人に恋が芽生える。

 娼婦のジュリア・ロバーツが徐々に洗練されていくシンデレラストーリーで、紳士でどこまでもかっこいいリチャード・ギアにあんなふうに迎えられたら、もう幸せでメロメロになる名作です(個人的見解です)。前述の『マイ・フェア・レディ』とあわせて、ぜひ観てほしい1本です。

Pretty in Pink
『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』(1986)

監督:ハワード・ドゥイッチ / 主演:モリー・リングウォルド、ハリー・ディーン・スタントン

 貧乏な家に生まれ、学校でも特に目立たない普通の高校生の少女が、裕福な家の生まれで学校でも人気者の同級生に恋をするティーンズ青春恋物語。

 1980年代の恋愛映画や青春映画と言えばジョン・ヒューズ作品は外せないところで、私はジョン・ヒューズものばかり何本でも選んでしまいそうになりますが、代表としてジョン・ヒューズ製作・脚本の本作をご紹介します。他に監督作もたくさんある中で本作を選んだのは、単に私の好みです。学校生活の中でのヒエラルキーや身分違いの恋みたいなものの痛々しさと、恋する幸せがあふれる青春映画です。

Before Sunrise
『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995)

監督:リチャード・リンクレイター / 主演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー

 アメリカ人青年が欧州旅行中に、ウィーン行きの列車で偶然フランス人女性と出会って意気投合。翌朝に予定していた青年の帰国便までの時間を、2人はともにウィーンで過ごすことにする。

 見知らぬ男女が出会って意気投合し、仲を深めていく様子や微妙な距離感が、2人の絶妙な会話で描かれるラブ・ストーリー。その後の2人の姿を描いた『ビフォア・サンセット』(04)、『ビフォア・ミッドナイト』(13)とあわせてビフォア三部作と言われる作品群の最初の1本で、他愛ない会話がどこまでも愛おしい作品です。

2000年以降のおすすめ作品

Bridget Jones’s Diary
『ブリジット・ ジョーンズの日記』(2001)

監督:シャロン・マグワイア / 主演:レニー・ゼルウィガー、コリン・ファース、ヒュー・グラント

 少々ぽっちゃり気味のOLのブリジット・ジョーンズが、「日記をつけて体重を減らしてお酒や煙草も控えて恋人を見つける!」と決意して奮闘する恋物語。

 美男美女のシンデレラストーリーではなく、見た目もあまり冴えない普通の女性が恋に奮闘する姿を描いたという点で、当時、本作は先駆けのような作品だったのではないかと思います。ぽっちゃり体型をレニー・ゼルウィガーが見事に体現し、親しみやすさや痛々しさも等身大で、そんな彼女の奮闘ぶりに勇気づけられます。

La La Land
『ラ・ラ・ランド』(2016)

監督:デイミアン・チャゼル / 主演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン

 ハリウッドで成功を夢見る売れない女優と、ジャズピアニストとして店を持つ夢に向かい奮闘する男性の、恋とキャリアの紆余曲折。

 『雨に唄えば』をはじめとした往年のハリウッドミュージカルを思い起こす鮮やかな色づかいで繰り広げられるオープニングの長回しのミュージカル場面は、もう鳥肌モノ。でも、ハリウッドの地で見る夢と現実には、その時々での選択があり、何かひとつ違えば変わっていたかもしれない未来があり、後悔もあるかもしれない。長年にわたる恋や人生の悲喜劇が素晴らしい歌と踊りとともに繰り広げられる、近年のミュージカルの傑作です。

Call Me by Your Name
『君の名前で僕を呼んで』(2017)

監督:ルカ・グァダニーノ / 主演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ

 1980年代のイタリア。避暑地で家族と過ごす17歳の少年が、彼の父親のもとにひと夏の助手としてやってきた年上の青年と出会い、忘れがたい恋を経験する。

 よく見たら、今回ご紹介する中で本作が唯一の男性同士の恋物語です。とは言っても、好きになった相手がたまたま同性だっただけで、魂の深いレベルで惹かれ合うような印象を受ける恋物語です。ひと夏のけだるい日々の中に繊細な心の交歓が詰まっていて、鋭い痛みや苦しさとともに、心を通わす歓喜に満ちた美しい作品です。

Love Actually
『ラブ・アクチュアリー』(2003)

監督:リチャード・カーティス / 主演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース

 ロンドンを舞台にクリスマスに向けて繰り広げられる恋愛物語で、アンサンブルキャストの登場人物が少しずつ接点を持って描かれるグランドホテル方式の群像劇。たくさんの登場人物の恋模様がいくつものエピソードで描かれる。

 たくさんの物語が同時進行的に展開し、それぞれの登場人物が少しずつ関連しながら出てくる群像劇は、日本映画だと『THE 有頂天ホテル』みたいな映画、といったところでしょうか。それぞれの恋愛模様には、微笑ましいものもあり、痛々しいものもありますが、観終えた後は幸せに包まれるような、恋愛群像劇の傑作です。キーラ・ナイトレイが可愛くてキュンキュンします(個人的見解です)。

Long Shot
『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(2019)

監督:ジョナサン・レビン / 主演:シャーリーズ・セロン、セス・ローゲン

 しがない記者が、次期大統領候補の才色兼備の女性と再会する。彼女は、記者が子供の頃からの憧れの女性で、記者に文才を感じていた彼女は大統領選のスピーチ原稿を依頼する。高嶺の花に思えていた彼女と記者が行動を共にするうち、2人は恋に落ちる。

 近年のロマンティックコメディの中で、個人的にとても好きな作品です。大統領候補として知的に仕事をこなす姿と、幼馴染の年下の彼に対して見せる少女のような可愛らしさのギャップで、シャーリーズ・セロンの虜になります。さらに、細かな映画ネタも盛り込んだコミカルな会話の楽しさで、これぞロマコメ!と久々に嬉しくなる快作でした。

 ここまで紹介してきて、要するに私が主に「身分違いの恋」がテーマの恋愛映画が好きなだけじゃないのか?なんて思ってしまいました。また、私がキュンキュンして観てきた作品が多いため、男性が観ても楽しめるのかは疑問です。ただ、特に昔の作品は不朽の名作ばかりですので、きっと男女ともに観て損はないと思います。