初めて働くIZAKAYAで一生の仕事 「マーケティング」に出会う 岸田成生さん |私のターニングポイント第20回

岸田 成生さん
ラーメン雷神・デジタルマーケティング担当
カナダ在住11年

 日本でコマーシャル・フォトグラファーだった岸田さんは、2011年31歳のときワーホリビザで奥さんと一緒にトロントに来た。当初は1年間アルバイトに専念しその資金でアメリカ大陸か、ヨーロッパを周遊して日本に戻ることだったという。仕事を探し最初に雇用してくれたのが、当時トロントで一番古い居酒屋だった「Fin Izakaya」。このお店との出会いが、マーケティングという仕事を追求する始まりとなった。

ワークビザのサポートをお願いするも、あっさりと断られる。ショックを受けながら「自分の強み」を見つめ直す

 最初はアルバイトのサーバーとして働いていました。しばらくトロントにいるのも悪くないかなと思い始め、意を決して就労ビザのサポートをオーナーに申し出ましたが、あっさり断れました。当時の私はズバ抜けた飲食店の現場スキルを何一つ持ち合わせておらず、オーナーからお店に貢献できる明確な内容を提示して欲しい、と言われました。断られた時は自分の不甲斐なさと思い通りにいかなかったことにとてもショックを受けましたが、今考えても至極当然な要求だったと思います。 ただ、この出来事が「自分の強み」について見つめ直す、いいきっかけとなりました。

小さな可能性にかける思い。自分だからできることはなんだろう?

Fin Izakaya時代
Fin Izakaya時代

 キッチンスキルも英会話も得意ではなかったのですが、お客様を喜ばせるちょっと変わったアイデアは、他の人より溢れていることにいつしか気づきました。

 もともとお店は、気さくでアイデアの尽きないオーナーが1人で集客をやってきたので、私はその枠を広げるようとアイデアを出すようになりました。もちろん、最初から認められたわけではなく、提案してもお蔵入りになることがほとんどでした。それでもトライアンドエラーを繰り返し諦めずに提案し続け、努力の甲斐もあり、結果ビザをサポートしてもらえました。

仕事仲間と一緒に
仕事仲間と一緒に

 今でこそ、Googleアナリティクスやウェブサイト分析ツールをもとに、イベントやオンライン企画をできるようになりましたが、当時の私はマーケティングの知識が全くなく、ただ闇雲に調べては実行している日々でした。そんな行き当たりばったりのことしかしていなかったにも関わらず、正社員として迎え入れてくれたオーナーには今も感謝でいっぱいです。

今では多方面から相談されるマーケティングの人に

 正社員となった一年目から、独学ながらSNSマーケ、周年企画、週替わりサービスなど様々な施策を打ち出しました。良い反響だったこともあれば、無風で終わる施策もありましたが、お店はその年に過去最高売上を出すことができました。施策やイベントが成功したとき「従業員とお客様が笑顔になる」、その幸福感は今も大切に残っています。

 今までを振り返れば、ただのアルバイトの私が思いつくままに始めたマーケティングっぽいことが、いつしかSNSマーケに変わりデジタルマーケティングへと変化しました。今でも知らないことだらけで、心折れそうになることもよくありますが、マーケティング以外を仕事にしたいとは思いません。このおそらく生涯続けるであろうマーケティングに出会うきっかけをくれた「Fin Izakaya」は、私の大切な人生のターニングポイントです。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

80点
少し前の自分なら常に100点を目指す人だったのですが、年齢を重ねていくうちに20点を残す大切さに気づきました。20点の物足りなさを感じることで将来へ進む活力、また人生の方向転換をするための余裕を生むと思っています。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 できれば、ビットコインが初購入できるようになった2010年に戻って買い占めたいです、というのは冗談なのですが、現状に満足というわけではなく賑やかな家族や苦難のある生活も含めて、今の人生を楽しんでいる途中なのでやり直す必要もないかなと感じています。

■ 学生時代のエピソード

 小学生の頃はサッカー、中学時代は水泳と部活中心の生活をしていました。高校も部活中心でしたが、運動部ではなく写真部でした。もともと入学した高校には写真部はなく、好きだった写真をやりたくて、部員を勧誘し、顧問を探し、自分で部を立ち上げました。ほぼ1人で活動していたこともあり、私が卒業すると同時に廃部となりました。

 大学の4年間は、演劇専攻でプロの舞台役者を目指していました。それまで演劇を一度もしたことがなかったのに競争率40倍の難関クラスを現役で通過できたのは今でも奇跡としか思えません。外郎売り(滑舌の練習用として昔からある長セリフ)の朗読や即興劇のエチュード、腹筋背筋100セットなど若い力を持て余すことなく、ほとんどの時間を演劇に打ち込んでいました。

■ 人生で大切なことは?

 今あるものに感謝する気持ち。未来を見て希望を抱くことも、過去を振り返り反省することも大事だと思いますが、それらを含め、今、この一瞬をどう過ごすか?で変わるもの。自分の今、また自分の周りの今に感謝し大事にすることが楽しく生きるコツと思っています。

■ 将来の夢・ライフプラン

 これは確実に叶えたい夢の一つですが、「夫婦でノマド生活」です。子供たちが自立するまであと10年くらいあるのですが、その頃から世界旅行に出たいと思っています。ただリタイアして旅できるような資産がないので旅費を稼ぎながら旅をすることになると思います。旅中もやることがあった方が楽しいですし、世界旅行を終えた時にお金の不安をしないようにするためです。マーケの領域でやれることを少しずつ広げてきたので、今から10年かけて場所を選ばない働き方の追求をしていきます。

-座右の銘: お金は後でなんとかなる。でも、時間は違う。
-好きな本: 『嫌われる勇気』(北見一郎・古賀史健)、『脳を最適化すれば能力は2倍になる』(樺沢紫苑)、『「週4時間」だけ働く。』(ティモシー・フェリス)
-尊敬する人: 今はまだいない。

愛すると妻と
愛すると妻と

-感謝している人と一言メッセージ: 「家族」。闘病10年の末に今年亡くなった母、日本で1人暮らす父、海外で暮らすきっかけをくれ、共に家族を支えてくれる妻、生きる意味を教えてくれる子供たち。私にとって家族の存在が感謝そのものです。私と家族でいてくれてありがとう。

-カナダの好きなところ: 嫌いになれるくらい雪が多い。大概のものは返品を受け付けてくれる。子供のいる家族にとって生活がしやすい環境。