「夢を追いかけトロント大学院へ。そして現地設計事務所への就職」河野明日香さん(トロント歴6年・ランドスケープアーキテクチャ&都市計画「PUBLIC WORK」勤務)|私のターニングポイント第3回

「夢を追いかけトロント大学院へ。そして現地設計事務所への就職」河野明日香さん(トロント歴6年・ランドスケープアーキテクチャ&都市計画「PUBLIC WORK」勤務)|私のターニングポイント第3回

 現在トロントでランドスケープアーキテクチャとしてさらなる成長を目指す河野さんが人生で大事なことに挙げた言葉が「根性」だ。海外を目指した時の英語のスコアからは気の遠くなるような合格への高いハードルを乗り越えた努力と未来を自分で切り開くという信念が今の彼女を作っている。

今世界に飛び出さなければ、歳をとってから絶対後悔する気がする

出国前のナーバスな時期。アルバイト先から訪問した種苗園にて
出国前のナーバスな時期。アルバイト先から訪問した種苗園にて

 トロント大学大学院への留学を真剣に考え始めたのは日本での大学院生1年目の中盤あたりでした。私はランドスケープアーキテクチャというパブリックスペースや都市空間をデザインする建築と都市計画の間のようなことを専門にしています。この分野は日本ではまだあまり確立されていないこともあって、当初は「ランドスケープアーキテクトって何ができるんだろう?」という純粋な好奇心と、「今世界に飛び出さなければ、歳をとってから絶対後悔する気がする」という強迫じみた気持ちに突き動かされていたように思います。

英語のクラスはいつもビリ。TOEFL IBTスコア38点から合格点93点までの道

大学院時代 -ボストンでのフィールドトリップ
大学院時代 -ボストンでのフィールドトリップ

 留学するにあたり、3つ重要な提出物がありました。今までの自分の作品を集めたポートフォリオ、エッセイ、そしてTOEFL IBTスコア93点以上でした。最初の二つは今までたくさん活動してきた内容や留学に対する想いを込めて比較的早くできたのですが、何より英語が私の天敵でした。中学・高校と進学校に通っていたのですが、英語のクラスはいつもビリ。大学受験も数学と小論文で乗り切ってしまったため、恥ずかしながら留学準備を始めた当初のスコアは38点でした。中学英語のレベル以下だったのです。でもこの時、「この点数から合格できたらそれこそビリギャルよりすごいのでは!?」と思い、妙にやる気が出てきて、このあたりから私の英語との戦いが始まりました。

周りの友達は就職して何年も経つ中で、ひとり取り残されたような気持ちを抱えながらも・・・

 大学院での課題や設計事務所でのアルバイトをこなしながら毎日4時間以上は英語の勉強をしていました。分厚い単語帳を三等分に切って電車の中でも、寝る前にも常に持っていました。その際とても効果的だったのは、大事な友達に単語帳の内表紙に激励のメッセージを書いてもらったことです。その頃私は二十代中盤で、周りの友達は就職して何年目かの時期で、私は何だかひとり取り残されたような気持ちもありました。ただそのとき「これからは周りとは全く違う道を生きていくんだ。自分で未来を切り開くんだ」という覚悟を持つことができたターニングポイントだったように思います。

修士設計発表。恩師と
修士設計発表。恩師と

 猛勉強の甲斐もあって、英語のスコアをクリアして、トロント大学大学院建築・ランドスケープ・デザイン学科にアドバンスド・プレイスメントとして2年通うことになりました。大学院での授業は今までのどの時期よりを忙しく、毎日ギリギリで生きていました。沢山の素敵な仲間に出会い、苦労を共にできたこと、この分野に寝る間も惜しんで心身ともに没頭できたことは最高に幸せでした。

卒業式。大事な仲間と
卒業式。大事な仲間と

 卒業後、第一志望であった「PUBLIC WORK」というトロントのランドスケープアーキテクチャ&都市計画の会社に勤めることができ、今4年目になります。現在はプロフェッショナルとして、LARE (Landscape Architect Registration Examination)というランドスケープアーキテクトになるための資格の試験を受け4つ中3つをクリアしたところです。

2008-2012 慶應大学環境情報学部
2012-2014 奈良女子大学大学院住環境学科
2014-2015 設計事務所FOLK、慶応大学SFC研究所
2015-2017 トロント大学大学院
       建築・ランドスケープ・デザイン学科
2017 –    PUBLIC WORK

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

90点 後悔は何もないです。これからもっと学びたいこと・やりたいことがあるということで100点ではないです。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 なし。

■ エピソード

 中学高校そして大学時代はテニスばかりしていました。大学受験があるにもかかわらず高校三年生の夏の大会までテニスをしたかった私は、今後の勉強のプランなどを含めて厳しい父にプレゼンをして、納得してもらったのが初めてのプレゼンの成功でした。

■ 人生で大切なことは?

 根性。やり遂げるぞという気持ちがあれば何でもできるように思います。そして、自分の周りにいる人々に日々、感謝を忘れないようにしています。

■ 将来の夢・ライフプラン

 縁側のある鎌倉の古民家を買って、家庭菜園をしながらカフェ&コミュニティセンターの経営をして、大事な人に囲まれてゆるゆる過ごしたいです。

-座右の銘: 努力できることは才能。
-好きな本: Habibi by Craig Thompson、Ecological Urbanism by Mohdrn Mostafavi and Greth Doherty、Showa by Mizuki Shigeru
-尊敬する人: 信念を持っていて、人の気持ちを考えられる人。
-感謝している人と一言メッセージ: 家族。いつも本当にありがとう。
-カナダの好きなところ:違いを受け入れて、理解しようとしてくれる人が多いところ。