「自動車メーカーからサッポロビールへの転職」渋谷幸太朗さん(トロント歴4年・サッポログループ・Sleeman Breweries勤務)|私のターニングポイント第2回

カナダでアイスフィッシング
カナダでアイスフィッシング

 大手自動車メーカーで3年間がむしゃらに働くものの達成感や感動を感じることができない自分に嫌悪感を抱き、自分がどうありたいかと真剣に向き合い始めた渋谷さん。突き詰めた結果、たどり着いたキーワードは「ビール」。2017年からはトロントに駐在し、邁進する渋谷さんのストーリーを聞いた。

「なぜ自動車メーカーで働いているのだろう?」なんとなく進んできた人生に、初めて疑問を持つ

 当初自動車メーカーに就職したのは「最初に内定が出た」というだけの理由でした。私は真剣に就職活動に取り組んでいなかったため、数十社の採用試験に落ち続けて、ほとんどの友人の就職が決まった後に、やっとの思いで二次募集採用をして頂きましたので、とりあえず何も考えずに就職を決めました。

2013年転職直前
2013年転職直前

 入社後は商品企画部に配属されました。手塩にかけた企画が世に送り出されることになった日には、さぞかし感動を味わえるものだと信じてがむしゃらに頑張ってきました。しかし、私が感じたのはやりきった達成感や感動ではなく、多忙な業務から解放される安堵感でした。そんな冷静な自分に対して、嫌悪感を抱いたことを覚えています。

おじいちゃんになって仕事を終えた時に「はぁー、楽しかった」と思いたい。「車じゃないな。ビールだ」

 それをきっかけに、自己分析に真剣に取り組み、業界研究を始めました。「定年までこの仕事を続けたいか?そもそも仕事をする必要はあるのか?10億円手元にあってもやりたい仕事はあるか?」自問自答を繰り返す中で、自分が大切にしなくてはならないと感じたのは「人生の終わりにどうありたいか。何を感じていたいか」でした。

 人生の最後は、「いやー、やりたいこと全部やった!思い残すことは何もない!もう寝る!」と言いたい。周りの人たちにも笑顔で見送られながら、棺桶の横で宴会を開いてもらって、みんなでビールかけをしていてほしいと思いました。

 このとき初めて、なんとなく進んできたこれまでの人生に対して「自分でこうしたい。こうすれば実現できるのではないか?」と具体的に考えるようになりました。これが私の人生のターニングポイントだったと思います。

2014年サッポロでの営業開始当初
2014年サッポロでの営業開始当初

サッポロビールに転職。「未経験の営業職と新業界」2つの壁を同時に越えなくてはならないことは想像以上に大変なことだった

 それまでパソコンに向かってしか仕事をしてこなかった私が作成した、数字を羅列しただけのお堅い契約書を持っていっても、お客様の心には全く刺さりません。契約が取れないだけならまだしも、失礼なことを言ってしまい、厨房で包丁をまな板に叩きつけられ「二度と顔を見たくない!!!」と、お客様に不愉快な思いをさせてしまったこともありました。ただ、その時気づいたのは、感情が露になるということは、その人がそれを本気で大切にしているということです。その方はそれだけ本気で気持ちを伝えてもらっているのだということに気づき、同じ業界を盛り上げようとしている方々の熱い想いに応えたい、という気持ちが強くなりました。仕事が少しずつわかってきたのは、この頃だったと思います。

自らの目標に向かって邁進していると思うと、不思議と勉強も楽しくなってくるのだとこの歳になって気づく

サッポロの全国社内イベントで久しぶりにあった中途採用の同期
サッポロの全国社内イベントで久しぶりにあった中途採用の同期

 転職活動を経て、与えられた仕事を完遂するだけでなく、自らの思いをより形にできる仕事をしたいという思いが強くなりました。そのために、視座を高く持ち、マネジメント業務に携わりたいと思うようになり、現在はUSCPA(米国公認会計士)の資格取得に向けて勉強をしています。先日の試験では、4科目中1つ目の75点合格のところを76点で通過できたのは、きっと神様が私の日頃の善行を見ていてくれたのでしょう。

2009年 自動車メーカー入社
2013年 サッポロビールへ転職、横浜支社に配属
2017年 Sleeman Breweries(サッポログループ)へ出向、GTAのアジア系飲食店様向け営業担当

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

100点 つらかったこと・悔しかったことはあっても、後悔はないです。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 同じ人生をいつの時点からやり直したい、というのはないですが、女性として生きてみたいなぁ、と思うことはあります。

■ 学生時代はどんな若者だった?

 小学校の時は、とにかく目立ちたがりで、負けず嫌いで、わがまま。親戚も含めて初めて渋谷家で授かった子どもということで、大いに甘やかされて育ちました。中学高校はサッカー部に所属していましたが、運動音痴で万年ベンチ。高校最後の大会で、一度だけ勝ちの決まった試合の最後の10分に出場させてもらいました。ゴールから1mの場所で、ボールに触れば得点という大チャンスに、緊張して右手と右足が同時に出て空振りをしたことは、器の小ささを露呈したいい思い出です。

 大学時代はとにかくサークル活動(テニスとダイビング)。週3日サークル、2日バイト、2日学校。サッカーしかしてこなかった私にとって、新しい人々と出会い、新しい刺激に触れることができた貴重な時代です。

■ 人生で大切なことは?

 目標。5年後、10年後、20年後、この人生での目標。これがあれば、日々それに従うだけなので、迷わないし悩まない。

■ 将来の夢・ライフプラン

 仕事をやめたら、昼間はゴルフとダイビング、夜は居酒屋をやりながら毎日過ごしたいです。利益ゼロでいいから、毎日常連さんと一緒に飲んで楽しく過ごしたい。想像しただけでにやにやしてしまいます。

-座右の銘: 人生は壮大な暇つぶし
-好きな本: そういうふうにできている(さくらももこ)、The Goal(Eliyahu M. Goldratt)、スラムダンク31巻(井上雄彦)
-尊敬する人: Elon Musk、孫正義、堀江貴文
-感謝している人と一言メッセージ: 両親。すてきな人生をありがとう。
-カナダの好きなところ:ゴルフ場がたくさんあって安い!