【新連載】私のターニングポイント「初めての転勤」高橋秀卓さん (北米駐在歴12年・大手損害保険会社勤務)

【新連載】私のターニングポイント「初めての転勤」高橋秀卓さん (北米駐在歴12年・大手損害保険会社勤務)

 北米駐在歴10年を超える高橋さんだが、人生の分岐点は「初めての転勤」だという。花形部署での挫折、落胆と安堵感を抱えて再出発した支社時代、そこでの充実した日々によって取り戻した人生の目標。ニューヨークへの海外留学制度をきっかけに動き出したストーリーを聞く。

新卒で花形部署に配属されるものの結果を出せず辛い毎日の新社会人時代

 私は父親の転勤の関係で幼少時代から約9年間を海外で過ごしたいわゆる帰国子女です。そんなバックグラウンドがあるので、漠然と将来は父親と同じように海外で働くことができる企業に就職したい、という思いがあり、他にこれと言った志望動機もなくいい加減な就職活動をしていたのを覚えています。私が人事担当なら確実に採用しない人材ですが、何とか今の会社に拾ってもらい、就職浪人を免れることができました。

 入社後、初めて配属されたのは本社で大企業のお客様を担当する本店営業部でいわゆる花形の部署でした。それだけの期待をかけてもらって配属されたのですが、入社後三年間、これといった成果も出ずに失敗ばかりで膨大な業務に忙殺され、特に二年目、三年目は毎日ただただ辛い日々を過ごしていました。今思えば、私自身に甘えがあり、社会人としての覚悟が無かったがゆえの結果だったように感じます。

 もっと言えば、いい加減な就職活動の姿勢がそのまま続いていたのかもしれません。そんな社員が花形の部署に所属し続けられるわけもなく、入社四年目で初めての辞令を受け、地方の支社に転勤することになります。当時のことはよく覚えていませんが、辛い日々から逃れられるという安堵感の一方で、本店営業部に所属することにバッテンをくらったというショックも少なからずあったはずです。この段階では「将来こうなりたい」とか「自分の目標は」とかそういった前向きな思考は一切持ち合わせていなかったのではないかと想像します。

初めての転勤、おまけに人生で初めてのひとり暮らし

留学先のニューヨーク時代
留学先のニューヨーク時代

 転勤先の支社の皆さんや取引先の方々に優しく受け入れていただいたうえ、とても良くしていただき、仕事は決して楽ではありませんでしたが、本当にやりがいのある仕事を楽しくさせてもらった記憶しかありません。トラブルがあってもチームで一丸となって対応し、それを逆にチャンスに転じられるようなパワーもありました。

 プライベートでも社内の先輩と海でボディーボードをしたり、取引先のご自宅でバーベキューをしたり、同期と一緒に日帰り温泉に行ったり、と公私ともに本当に充実した日々でした。入社して20年以上経ちますが、会社人生の中でこの支社での仕事が一番楽しくやりがいがあったと思っています。

支社での充実した日々のおかげで自分の将来を見つけ直す。そして転機となる海外留学制度に応募、ニューヨークへの留学が実現

 そんな充実した支社での業務も三年目に転機が訪れます。当時、入社6年目以降の社員が応募できる海外留学制度がありました。もともと海外で働くことを目標としていた自分でしたが、本店営業部での三年間の激務と度重なる失敗を経て、辛い日々を過ごしていくうちにそんな将来の目標は消え失せていました。ですが、支社に転勤させてもらい、素晴らしい先輩や取引先の皆さんのおかげで充実した日々を経て自信を取り戻し、今一度自分の将来を見つめなおす機会を得ることができました。留学制度の応募締め切りの前日まで、提出資料を徹夜で作成し、練りに練ったレポートを提出しました。

 その後、書類審査、面接を経て、翌年度の海外留学生に選ばれ、約1年間のニューヨークへの留学が実現します。留学の辞令が出た際、私は営業で外出していましたが、支社長が携帯に電話をかけてきてくれて「ニューヨークって書いてあるぞ」と教えてくれたのを今でも鮮明に覚えています。充実した日々を過ごしていた支社を離れるのは寂しかったのですが、一方で自分の将来を自身で切り開く第一歩を踏み出すような興奮がありました。ニューヨークへの留学を経ることにより、その後はもっぱら海外の業務に従事し、2009年には海外赴任が実現、今年で駐在12年目を迎えています。

新しいことに一歩踏み出して初めてわかること

 おそらく、入社四年目以降も引き続き本店営業部に所属していたら、今の自分は無かったように思います。転勤の辞令という外部要因で自身の環境が劇的に変化し、物事が良い方向に進んだものと実感しています。私は自ら何かにチャレンジすることはどちらかというと苦手な方なのですが、これまでの経験を振り返ると、それが外部的な要因でも自分からの発信でも、何か新しいことに一歩踏み出すことができたら、きっとそれは全て自分の成長や自信につながってくると今なら断言できます。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

50点 支社時代の自分を考えたらもっとやれると思います。自戒の念を込めて。

■ 学生時代はどんな若者だった?

 どちらかというと地味な存在でしたが、いずれの時代も友人に恵まれて、楽しい学生生活を過ごしました。高校時代はアメフト部に所属していましたが劇的に足が遅いです。

■ 人生で大切なことは?

 人との出会い。父が転勤族だったので小さな頃からいろんな土地で生活し、幼馴染という存在はいないのですが、その代わりに多くの出会いに恵まれました。自分が社会人になっても転勤を重ねていますが、その行く先々で素晴らしい友人や仲間と出会うことができています。この出会いは人生の宝だと思っています。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 不思議と人生をやり直したいとは思いません。あえて言うなら、小田急線で寝過ごして、かばんごと財布などを紛失したときの自分をたたき起こしてやりたいです。

■ 将来の夢・ライフプラン

 世界中を旅して回りたいです。それと豊かな日々が過ごせる生活基盤を構築したいです。

-座右の銘: 明日は明日の風が吹く
-好きな本: 「深夜特急」「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」「行け!稲中卓球部」
-尊敬する人: 謙虚な人。他人のことを考えて行動できる人。褒め上手な人。
-感謝している人と一言メッセージ: 家族。いつも支えてくれてありがとう。
-カナダの好きなところ: 自然災害が少なく、人が優しいところ。