社会人MBA留学 トロント大学・Rotman 竹内悠太さん|特集「カナダライフのヒント6人のストーリー」

竹内 悠太さん
カナダ滞在予定2年(2021年6月~2023年5月)
出身地: 静岡県菊川市

好きな言葉

継続は力なり

カナダでやってみたいこと・行ってみたい場所

秋のメープル街道ドライブ
 小学生の頃から地図帳や旅行ガイドを見るのが好きで、その頃からずっと行ってみたい場所ランキング上位にありました。

アルゴンキン州立公園でキャンプ
 キャンプが好きなので、カナダの広大な自然の中でキャンプをしてみたいです。

同級生との多国籍ホームパーティ
 様々な国から集まる同級生と、それぞれが自国の料理を持ち寄ったり、日本食を振る舞ったりしながら交流を深めていきたいです。

カナダに永住したい?

No。今時点では留学後会社に戻ってやりたい仕事があることと、1カ所にとどまらず色々な場所で生活してみたいという思いがあり「No」としました。ただ、今はまだ渡航前の日本なので、カナダでの生活はまだ始まってすらおりません。これから刺激的な2年間を過ごし、留学が終わりに近づくころに、家族全員が揃って「Yes」と言いたくなるようなハッピーカナダライフを過ごせればと思っています。

いまのハッピー度

 これからの挑戦と新しい環境に非常にワクワクしていますが、コロナで色々制限される分だけ5%マイナスしています。

私の人生こんな風になれば良いな

 留学で培う英語力とマネジメントスキルを活かし、海外事務所で働いてみたいと思っています。また、Rotmanで学ぶビジネスデザインを自分の1つの軸として、何かしら個人での発信や活動をしていけたらと思っています。ただ、MBA留学では価値観・人生観がガラッと変わるという話も聞くので、今思ってもいないようなワクワクする未来が切り開かれることも楽しみにしています。

東京大学で都市計画を専攻した後、2014年にJR東日本に入社し、不動産開発・管理部門に所属し、駅・商業施設の開発企画、オフィスビルの運営管理、エリアマネジメントなどのまちづくり業務に従事してきた竹内さん。2019年に会社の海外留学派遣制度に内定し、2020年にRotmanに合格。COVID-19パンデミックの影響により進学を1年延期し、2021年より進学予定で、6月に奥様と1歳半の娘さんと渡航予定の竹内さんに、MBA留学そしてRotmanを選んだポイントを語ってもらった。

なぜMBAか

POINT 1.「海外生活への憧れ」

 高校時代に経験したカリフォルニアでの2週間の交換留学が非常に楽しく思い出に残っており、そこから英語でのコミュニケーションが好きになりました。その後は海外旅行程度の経験しかありませんが、大学時代にはホームステイ受け入れサークルを立ち上げ、多くのバックパッカーを受け入れるなど、海外との接点を持つ活動は続けており、いつか海外で生活してみたいと心の片隅で思っていました。

高校時代:カリフォルニアでの交換留学
高校時代:カリフォルニアでの交換留学

POINT 2.「実力把握と経営・イノベーション人材としての成長機会」

 大学卒業後、1つの会社でしか働いておらず、自身の成長度合いに不安を覚えていたこともあり、同世代のグローバルのトップクラス人材が集まる環境の中で、自分がどれくらいのレベルにあるのかを知りたいと思っていました。

 また、会社としても新規事業や海外事業など、新たな事業領域の拡大をこれから目指すフェーズにあり、そうした領域を担っていきたいという思いから、経営・イノベーション人材として成長したいと思っていました。

なぜRotmanか

POINT 3.「ビジネス×デザイン教育の最先端」

 RotmanはMBAの中で世界で初めて本格的にデザイン思考を取り入れたプログラムとして知られています。最近日本でもよく「デザイン経営」という言葉を耳にするようになりましたが、現在はVUCAの時代ともいわれ、問題の「解決」よりも、いかに意味のある「問題」を設定できるかが重要といわれています。その問題設定において、デザイナーの思考プロセスを適用し、人間中心のアプローチでイノベーションを起こそうというのがデザイン思考になりますが、Rotmanでは10年以上も前に当時のDeanであったRoger Martin氏がそのデザイン思考とビジネスを融合させた「ビジネスデザイン」という領域を提唱し、教育と実践を重ねてきています。

 私は約2年前、留学を決意する直前に「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由|佐宗 邦威」という本を読み、0→1を生み出すこれからのスキルとしてデザイン思考に強く興味を持ち、この領域を学びたいと思いました。そしてこの本に、デザイン思考が学べる学校の1つとして紹介されていたのがRotmanでした。これが、私がRotmanの存在を知ったきっかけであり、進学先として選んだ1番の理由になります。

*VUCA: 将来の予測が困難な状況を示す造語。ビジネスや市場といった世界におけるさまざまな不安定要素を示す4つの言葉「Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity」の頭文字を取ったもの。

POINT 4.「Creative Destruction Lab(以下、CDL)の存在」

Rotman進学のきっかけとなった本
Rotman進学のきっかけとなった本

 Rotmanは2012年にCDLというシードステージアクセラレータープログラム(*1)を設立しています。これまでに評価額で計30億ドル以上会社が生まれており、世界で最も成長速度の早いプログラムとも言われています。

 このプログラム自体はテック系のスタートアップを対象としたものですが、Rotmanの学生にも参画機会が与えられています。具体的には、プログラムに選定されたスタートアップに9ヶ月間参画し、協力メンバーとしてMBAでの学びを実践に活かす機会が与えられます。投資家とのセッションにも参加し、スタートアップの成長に貢献しながら、実務経験を積むことができます。

 私の会社も数年前にCVC(*2)を設立し、オープンイノベーションやアクセラレータープログラムを通じて、スタートアップ企業との共創・事業開発を進めています。私は留学後、このポジションを希望配属先の1つとして考えており、CDLへの参加を通じ、スタートアップのカルチャーや立場を実体験を持って理解することで、帰国後CVCの発展に貢献できればと思っています。

渡航直前まで担当していたウォーターズ竹芝PJ
渡航直前まで担当していたウォーターズ竹芝PJ

(*1)シードステージアクセラレータープログラム: 参加したスタートアップ企業に対し、出資やノウハウ提供、投資家とのネットワークを形成をサポートする起業家養成プログラム。

(*2)CVC(コーポレートベンチャーキャピタル): 通常の投資会社ではなく、事業会社が自社の戦略目的のために行う投資事業。

POINT 5.「学生のバックグランドの多様性」

 Rotmanは1学年約300人程度ですが、その半分以上は留学生で構成されており、約40カ国から学生が集まってきます。まさにトロントを象徴していますね。ディスカッション主体の授業やプロジェクトを通じ、多様な価値観や思考法に触れ、自分のこれまでの当たり前を見直す非常に良い機会になると思います。そして世界中に友人を作り、いつか友人を訪ねる旅ができたら良いなと思っています。

POINT 6.「実践的プログラムの豊富さ」

 Rotmanでは2年間のプログラムのうち1年目は一般的なMBA同様マーケティングやファイナンスなど、必修のビジネスコア科目を学びますが、1年目の終わりからは15の専攻・100以上の選択科目から自身の興味関心に応じて選択できます。その中には先に挙げたCDLの他、企業やNPOとの共同プロジェクトを行う実習も多数用意されており、知識だけでなく、実践の場で使えるスキルを身につける機会が豊富に用意されています。

 教室の授業だけではテストが終わると忘れてしまうことも多々あると思うので、実践の場で自分なりに考えて学んだことを活かせる機会があることは非常に重要なポイントだと思います。

なぜトロントか

POINT 7.「未来のシリコンバレー?」

 トロントは北米におけるテック人材の集積度でシリコンバレー、シアトルに次ぎ第3位とも言われており、カナダの移民政策と相対的にみた生活コストの手頃さから(私から見ると全くお手頃ではないですが)、テック人材のハブとして急成長しています。

 また、昨年撤退してしまったもののグーグルのSidewalk Labによるスマートシティプロジェクトが進められていたこと(トロント選定の大きな魅力の1つだったので非常に残念です)やUberが拠点を設けるなど、私の興味分野である都市領域の強さもうかがえます。

 学生の立場でどこまでできるかはわかりませんが、そうしたテックハブのエコシステムにも何かしらで関わり、ネットワークを築けたらと思っています。