『LGBTQ+』カナダ注目ニュースのまとめ|特集 カナダ「LGBTQ+」

LGBTQ+ NEWS #1
同性愛の非犯罪化50周年を記念する1ドル記念硬貨が決定

 カナダ造幣局は、1969年に施行されたカナダで同性愛の非犯罪化から50周年を記念した1ドル記念硬貨を発表した。この記念硬貨はバンクーバーを拠点とする芸術家兼活動家のジョー・アベレージ氏のデザインと英語とフランス語で“平等”を意味する「Equality-Égalité」の文字が組み合わされている。

 カナダ造幣局会長のマリー・ルメイ氏は硬貨が人々の手に回ることで、カナダ中で『LGBTQ+』について大切な議論を起こし国のアイデンティティを築いて欲しいという希望を語った。

 一方でこの記念硬貨に関して賛否の議論が引き起こされている。一部の歴史学者や活動家は1969年の同性愛非犯罪化は事実ではなく、この硬貨発行の裏にある平等が達成された、そのほとんどがカナダ政府の行動のおかげであるという間違ったメッセージを生みかねないと訴えている。

 ヨーク大学の歴史学者で異議を唱えているトム・フーパー氏は、非犯罪化から何十年も経った今でも『LGBTQ+』コミュニティ・個人は差別をされたり、特に有色人種のトランスジェンダーや同性愛者は不当に警察の介入を受けたり同性愛者の献血禁止など様々な困難に直面し続けていることを語った。

LGBTQ+ NEWS #2
公的身分証の性別欄に“X”の文字が導入

 カナダ政府は、2017年8月31日をもってパスポートや国民/入国書類、旅行書類などカナダ移民・難民・市民権省による公的身分証明書・種類でジェンダーフリー、ノンバイナリー(自らの性別を男女どちらとも定義しない)を表す“X”を性別記入欄に追加することを発表した。

 北米では初、デンマークやドイツ、オーストラリアに続く“X”の導入となる。同省アーメッド・フセイン大臣は「このジェンダーノンバイナリーの導入はどんなジェンダーアイデンティティや表現に限らず平等な社会を目指すカナダにとって大きな一歩となるものだ」と語った。

 この変化はジェンダーアイデンティティや表現を理由とした差別を違法化しトランスジェンダーの人権保護を合法化したBill C-16(法)からきており2016年11月頃からカナダ政府は”X”の導入について提案し試行錯誤してきた。それ以降、これまでにブリティッシュコロンビア州にて世界で初めて乳児のヘルスカードの性別欄にunspecified or unknownを表す“U”が記載・発行されており、オンタリオ州ではすでに州の運転免許証上の性別記入欄に“X”の記載が可能となっている。

カナダで初めてノンバイナリーパスポートを取得したジェンマ・ヒッキー氏

 カナダで最初の一人となる“X”と記されたノンバイナリーパスポートを取得した人権活動家のジェンマ・ヒッキー氏は、自らのアイデンティティが身分証明書とマッチすることで、他の旅行者と同等の権利を獲得できることになり、自らの存在が社会において再認識されることになることを語った。

 この歴史的な変化の大きな一歩にノンバイナリーの人々を含む『LGBTQ+』コミュニティが喜びの声をあげている。

LGBTQ+ NEWS #3
オンタリオ州・ダグフォード政権、子どもの性教育カリキュラムを旧モデルへ変更の発表と撤回

オンタリオ州知事ダグ・フォード氏

 オンタリオ州知事ダグ・フォード知事は、2015年より取り入れられた新性教育カリキュラムを再変更し、それまで20年間実施されてきたカリキュラムの再導入案を発表した。

 しかし1998年に施行されたカリキュラムはインターネット上のコミュニケーションや同意という概念、『LGBTQ+』などのジェンダーアイデンティティ、トランスジェンダーについてカバーがされていないことが明らかになっている。

 カリキュラム変更に反対するオンタリオ州公立小学校の教育者は現カリキュラムの廃止は違憲であること、変更を通して今日必要とされている生徒へのニーズに応えられないこと、寛容・協力を教えるのではなく排他的になることで起こりうる子供への危険性を唱え、同州政府を訴えている。

 また、強い反対・懸念の声は学生らからも声が上がっている。11歳のトランスジェンダーである学生は、人権裁判所に変更の廃止を訴え、1998年のカリキュラムに逆戻りすることが『LGBTQ+』の生徒にとってどんな影響があるかを証言している。

 ジェンダーアイデンティティや表現についての教育やディスカッションが必須でなくなることからクラスメイトがトランスジェンダーの自分をどう見るか、接するかが分からず不安だという。

 その後、オンタリオ州政府は結果的に性教育カリキュラムを1998年バージョンに戻すという決定を撤回することを発表した。これには政府の決定に対して多くの反感・反対があったことも影響している。最終的には、“同意”についてやインターネット上での安全、ジェンダーアイデンティや表現をカバーした内容になった。

LGBTQ+ NEWS #4
アルバータ州議会議員初の同性愛結婚

 同性愛者であることを公表している、前アルバータ文化観光大臣でアルバータ州議会議員のリカルド・ミランダ氏は、昨年末に婚約者のクリストファー・ブラウン氏と結婚した 。ミランダ氏はアルバータ州で同性愛結婚を果たした初めての議員となり、司祭を務めたアルバータ州知事のレイチェル・ノットリー知事はカナダで初の同性愛者の挙式の司祭を務めた州知事となり、この結婚式はアルバータ州にとってもカナダにとっても歴史的なものとなった。

 ミランダ氏は10歳の時に難民として当時戦争で荒廃したニカラグアからカナダに家族と移住。現在ミランダ氏の議会代表区でもあるカルガリーは多文化地域で家族とともに快く受け入れられたが、ゲイの青年として生きるのはまるで自身の存在が孤立しているようで、ロールモデルがおらず苦労が多かったという。

 今回、自身のラブストーリーをアルバータ州の人々とシェアすることで、『LGBTQ+』の権利・平等の前進はコミュニティにおいても大切なことであり、さらに多くの人々が多様な考えを持つことができるようなればと希望を持っているという。

LGBTQ+ NEWS #5
エドモントン・プライドフェスティバルの中止とその後の警察署長による謝罪

 アルバータ州都、エドモントン・プライドフェスティバル協会は、6月に開催予定であったプライドパレードを含めたプライドフェスティバルの中止を発表した。

 決定の理由として現在の政治的・社会的環境を考慮した結果、全コミュニティを反映し包括的な誰もが安全に楽しめるフェスティバル開催の成功が今年は難しいと判断したことからであるという。

 この背景には、昨年のエドモントン・プライドパレードの際に、警察やカナダ騎馬警察隊、軍人らをパレードに招待しないことを主催者に要求したデモが関係している。それは、警察や軍人による『LGBTQ+』コミュニティ・個人への長年に渡る差別や様々な形による抑圧は大きな傷を負わせてきたことが影響している。

 しかしながら、その後エドモントンの警察署長に新しく就任したデール・マクフィー署長は警察を代表して『LGBTQ+』コミュニティに対して、これまでの警官からのコミュニティ・個人への差別的な振る舞いや扱いについて公式な謝罪をした。

 さらに同警察サービスは特別ウェブサイトを通して『LGBTQ+』コミュニティから、サービス・関係改善プロセスに関するアイデアを募集し、今年の秋に改善プロセスを形にすることを目指しているという。