カナダといえば、大自然が作り上げた神秘、カナディアン・ロッキー。山脈内には、よく知られているバンフ国立公園を始め、多くの地域がユネスコ世界自然遺産に登録されており、手付かずの自然、そして多種多様な野生動物が生息し保護されている。
壮大なカナディアン・ロッキーに囲まれ、国立公園内に位置している町、ジャスパーもその中の一つ。
カナディアンロッキーというとやはりバンフやレイクルイーズが有名だが、レイクルイーズより更に北230kmに位置する小さい町ジャスパーは、野生動物を比較的気軽に見られる事で有名である。
なお、国立公園管理局は公園を訪れるすべての利用者に対して、次の3つの決まりをもうけている。
1、ごみを捨てない
2、自然の物を持ち帰らない
3、野生動物に餌を与えない
野生動物を見つけた場合は絶対に干渉せず、距離をとって静かに楽しもう。
カナディアン・ロッキーの代表的な動物、熊。ジャスパーでは、5月から夏にかけてグリズリーベア(ハイイログマ)やブラックベア(アメリカクロクマ)を見つけることができ、今年もすでに多くの目撃情報が寄せられている。
特に5、6月の「ジャスパー・ゴルフコース」は、熊を発見するベストスポット。また、運が良ければジャスパー内のハイウェイで遭遇することもある。
目を凝らし、あまり大声を出さず散歩やサイクリングをするのがオススメ。グリズリーに比べ、ブラックベアは体が小さく、木登りが得意。森の中を歩けば、熊が木登りをした傷跡を発見することも。
グリズリーは特にブラックベリーを、ブラックベアは特にタンポポを好んで食べる。熊は一般的に人間を避けようとするが、刺激を与えるのはもちろん危険なので、見つけた場合は絶対に近寄らないようにしよう。
ジャスパーには、多くのビックホーン・シープ(オオツノヒツジ)が生息している。その名の通り、大きく太い角が特徴的な動物。ジャスパーでは年間を通して見られるが、特に4月から秋にかけて、高確率でビックホーン・シープの群れに遭遇する。
ベストスポットは、「オールド・フォート・ポイント」。頂上へは20分程度で行くことができ、時には10匹以上のシープの群れに出会うことも。
また「オールド・フォート・ポイント」は頂上から見下ろす景色が絶景で、ジャスパーに来た際には是非とも訪れたい場所だ。雄の角は大きく円状に成長するのに対し、雌は短くまっすぐ成長する。
生涯一つの角で過ごすシープと違い、エルクの角は毎年生え変わる。大人のエルクは体が大きく、とても迫力がある。森の中を歩くと昨年落ちた角を発見することがあり、その大きさや重さから、エルクの首がいかに丈夫なのかが分かる。
エルクも森の中やハイウェイで頻繁に見かけられ、またジャスパー内に多くの芝生があることから、ダウンタウンから数分歩いたところでも、餌を食べているエルクの様子がうかがえる。
なお、雌のエルクは5月末から7月初旬にかけて子供を産むため、とても危険な状態になる。この時期に雌や子供のエルクを見つけた場合は絶対に近寄らないようにしよう。雌は雄と違い、角が無いのがポイント。
森や町の中に多くのトレイルが存在するジャスパーでは、散歩やサイクリングをしながら野生動物の観察ができる。
群れで活動し、耳が大きいのが特徴的なディアも、エルクやシープ同様、夏のジャスパーで頻繁に発見できる。人間や他の動物が近づくと、大きな耳をピンと立て、周囲の様子を伺う。
彼らを長く観察したい時は、音を立てず距離をとって遠くから楽しもう。またエルク同様、雄のディアには角があるが、雌にはない。水辺にいることが多いムースも、ジャスパー国立公園内に多く生息している。
シープやエルクに比べ、人目に付かない場所で生活しているため、目撃する確率は低くなる。ムースを見たい場合は、マリーンレイクやメディスンレイクなどの水辺付近か、ダウンタウンからマウント・ロブソンへ向かう途中のハイウェイを観察するのがオススメ。
なかなか見られない動物だが、特徴的な角に加え、その体はとても大きく、発見した時には感動すること間違いなし。
他にもジャスパー国立公園では数少ないカリブーというシカも生息している。カリブーは日本語ではトナカイのことで、エルクとは違いメスにも角が生えている。カリブーの数は年々減少しているので、ジャスパー国立公園内でも生息数は100頭くらいと言われており、通常は標高の高い所、主にマリーン山脈か、トンキンバレーのあたりに生息している。
また、ジャスパーの森には数種類のリスや鳥も多く生息しており、特にジャスパーのリスは人間をあまり避けず近寄ってくるので、間近で観察することが可能。森の中のトレイルを歩けば、様々な鳥の鳴き声を楽しむ事もでき、散歩やサイクリングをより一層楽しくさせてくれる。
なお、野生動物を見るときは最低大型バス3台分の距離をおくようにと注意をなげかけている。一見かわいく、おとなしそうにみえる動物も、もちろんペットや動物園にいる動物とは違い、野生動物。驚いたり、怖がったりすると自分の身を守るため防御行為をする、という事を忘れず、自然に対する尊敬の気持ちをもって接しよう。
この夏、大自然の中で様々な野生動物を探究する旅に出掛けてみるのはどうだろうか。野生動物の生態を考慮し、大自然がそのままの形で残されているカナダ。きっと、生涯心に残る素晴らしい冒険の旅があなたを待っている。