未来の子ども、これから海外へ飛び立とうとする若い人の将来を左右する重要な岐路
日本人の海外移住の歴史は150周年
様々な理由で必要に迫られ外国籍を取られる日本人が、祖国日本から自動的に除籍されるのではなく、日本国籍を保持するかどうか選択できるようにするため、ヨーロッパ在住8名が立ち上がり国籍法第11条改正を求める運動をしており、現在東京高等裁判所で「国籍はく奪条項違憲訴訟」が争われている。第3回口頭弁論が3月29日に終わり、控訴審第4回期日が9月6日に予定され、年度内には高裁での判決があるだろうとされる。
判決次第では世界中の在外邦人、特に長期滞在者にとって極めて大きな影響をうける裁判となるが、カナダや米国の北米を始め世界中においてもまだ多くの人たちがこの裁判の存在さえ知らない。現在日本で行われているこの裁判の行方は、在留邦人や未来の子どもたちにとって極めて重要な岐路となる。
国籍法第11条改正を求める有志の会 一同
現在の日本の法律では、日本人の血統で生まれた日本人が自らの意思で外国籍を取得する際、自動的に日本国籍を失ってしまいます。外国籍を取得する日本人にとって、ルーツは日本に変わりはありません。祖国である日本から自動的に除籍されるのではなく、日本国籍を保持するかどうか選択できるようにするため、私たちは国籍法第11条改正を求める運動をしています。
2016年時点で、海外で生活する在外日本人の数は133・8万人。永住者の数はうち46・8万人(35%)で前年から2.5%増えています(家族、子孫、子供も含む)。また、日本人で国際結婚をした夫婦の数は過去10年間に毎年約2万組から4万組で、全婚姻件数の3.3%~5.6%です。
これらの人々はそれぞれの事情があって海外での生活を選び、中には外国籍を取得している人もいます。彼らが不本意に日本国籍と戸籍を失ってしまう場合、個人の日本人としてのアイデンティティと尊厳が傷つけられ、幸せを求める権利も侵害されてしまいます。
日本人が海外を拠点として生活を送り、家族ができ、または国際結婚して家庭を持ったとしても、心は常に祖国である日本と共にあります。私たちの運動は、日本における個人の位置づけを在外邦人らが選択する権利を求めるものです。
現在の国籍法第11条1項には、明治32年(1899年)に定められた旧国籍法「第二十條 自己ノ志望ニ依リテ外國ノ國籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ」の項目がそのまま維持されています。
現在の憲法22条では「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」として国籍離脱が個人の「自由意思」でなされるべきだと明確にされています。それにもかかわらず、国籍法第11条は「無条件」に日本の国籍を失わせているので、憲法違反になると考えられます。
国際社会において期待される日本への経済、文化、政治的効果としては、
などが挙げられます。
法務省に国民の声を届け、スムーズな国籍法改正につなげるため、この署名活動を通じてより多くの有権者の方々の理解とご協力を賜りたく存じます。みなさまの署名によるご協力をお願い申し上げます。
小田巻稔さん
米国ペンシルベニア州ピッツバーグ市在住
日本国内に住む日本人にとっては、国籍は空気のようなもので、国籍について考えることなく、このような裁判には全く関心がないのが現実です。昨今の日本世論の保守化の傾向では尚更この訴えは無視され、あるいはSNS上で嫌がらせさえも受けるのではないかと危惧しています。
日本人としての誇りをもって海外で長く働き、決して有名人ではなく一般の多くの方々が、様々な理由で必要性に迫られ外国籍を取得してきた事実、そして日本国籍を喪失してしまうことを知らず、日本国籍を喪失してしまった多くの方々が苦しんでいるという事実があります。
私を含め多くの友人・知人も家族の事情、特に子供さんとの関係で、または仕事上の都合で外国籍(米国籍)を取得しました。私はこの裁判について何人かの友人に連絡したところ、全員が異口同音に、この国籍法11条によって自動的に日本国籍が喪失してしまうことを全く知らずに米国籍を取得されていましたし、この裁判が日本で始まったことについて勇気づけられたと大変喜んでいました。
個人によって物事の見方も考え方も異なります。本裁判を冷ややかに眺めている人もあるでしょう。外国籍を取得しようとする際に日本の法律をきちんと調べなかったのは自己責任であり、「知らなかった」ということは甘えでしかないと厳しく言う人もあるでしょう。しかし、ウェブサイト内にある有志の会代表の鈴木伸二さんのブログにあるように、ヨーロッパにおいてもそうであったように、カナダを含む北米各地においても数年前までは国籍法11条の説明は全く無かったのではないでしょうか。
明治時代から続く国籍法11条により外国籍を取得することによって日本国籍が自動的に剥奪されるという、所謂、あるべき国民の基本的権利が突然剥奪されるという、人間として全ての権利が剥奪されてしまう「死刑」の次に重い刑罰を科すものだと弁護団も深く憂慮しています。本来、国籍法などの各法律は憲法に書かれている大きな理念に近づけるために形成され存在しているはずなのですが、国の主張は憲法理念に近づけようとする論議ではなく現行法律の旧態依然な解釈のみの主張に終始してしまっています。
海外から日本を見ていますと、日本社会が海外の良いところを積極的に吸収し改革していこうという気概が薄かったり、中国や韓国が海外留学から帰国した若者達を優遇し成長してきたのとは正反対に日本は海外帰国者を冷遇し、その結果、日本が世界から取り残され衰退してきた事実を未だに認識していないようです。今でも日本社会で耳にする「勝手に外国へ出ていった」「よそ者」扱いにする村社会的な狭量な心、それは本裁判にも同様なことを感じますし、日本が国際的に衰退してきた一因であるように思えてなりません。
海外在留者にとって、更に、未来の子供たち、将来外国に飛び立っていく若い人たちにとっても極めて重要な裁判なのですが、アメリカ国内同様にカナダ国内でも多くの方々がこの重要な裁判の存在さえ知らないのが実情だと思われます。できるだけ多くの海外在留者に本裁判のことを知ってもらい、同時に国籍問題について建設的な議論が高まるきっかけになればと願っています。
国籍法第11条改正を求める有志の会支援ネットワーク
「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍取得したときは、日本の国籍を失う」という個人の選択を許さない条文ではなく、「日本の国籍を放棄することを選択できる」のように柔軟な解釈のできる条文に改正されるようにとの提案です。
現在東京高等裁判所で争われていますが、日本政府に国民の声を届けるために、より多くの在加邦人の方々からのご理解とご署名によるご協力をお願い致します。
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裁判の特徴
原告らは日本人であり、今回の裁判は「日本人」の裁判だということです。原告らは日本人であるのに、日本の国籍が無いかのように扱われています。原告らにとっては、海外の生活のために取得する外国の国籍とは異なり、先祖や両親から受け継いだ日本の国籍が特別な意味をもっており、日本人である原告らは、日本国籍を持っていることの確認を求めています。
国籍法11条1項の問題点
国籍法11条1項は、天皇主権を定める明治憲法のもとで、主権者ではない「日本臣民」の範囲を定めるものとして規定されたものでした。
しかし、今では、日本国憲法が制定され、我が国では「国民」が主権者です。明治憲法上の「日本臣民」とは異なり、「国民」は、国籍離脱の自由をもち、自己決定権を初めとする日本国憲法上の基本的人権が保障されています。それにもかかわらず、現在の国籍法11条1項は、日本国憲法との整合性をよく吟味して審議されることなく、修正されないまま、現在に至っています。
これにより、主権者である日本国民は、自らの志望によって外国の国籍を取得したという形式的な理由だけで、自らの日本国籍の離脱について判断する機会を全くもたないままに、日本の国籍を奪われてしまうのです。
そもそも、我が国の国籍である日本国籍と、外国の国籍は、全く異なり、外国の国籍を取得するかどうか意思決定をすることと、日本国籍を離脱するかどうか意思決定をすることは全く別のものです。
それなのに国籍法11条1項は、外国の国籍を取得する意思決定があれば、自動的に日本の国籍を離脱する意思決定もあるかのように扱ってしまいます。国籍法11条1項は、主権者である日本国民に自分の日本国籍離脱についての判断をさせずに日本の国籍を根こそぎ奪うという、はかりしれない害悪をもたらしています。