日本人初のカナダダービージョッキー福元大輔騎手(前編)|Hiroの部屋

福元さん(左)とヒロさん(右)
福元さん(左)とヒロさん(右)

 早いもので今年最後の連載3回シリーズとなるヒロの部屋。今年を締めくくるに相応しい今回ご登場いただく方は、昨年、日本人騎手として初めて「カナダダービージョッキー」に輝いた23歳の福元大輔騎手。

 福元騎手は、日本時代に2度、JRA競馬学校を受験したが、いずれも不合格となり、海外で活躍する騎手になるという夢を叶えるためにワーキングホリデーでカナダに降り立った。英語もままならない中、研修生として仕事をこなし、2017年にカナダの騎手免許を取得した。

 なかなか勝てない日が続いたが、その後勝利を重ね、昨年のコロナ禍で開催されたダービーに相当するクイーンズプレートで日本人として初めて勝利、続くプリンスオブウェールズSで2冠制覇を成し遂げ、カナダを代表するジョッキーとなった。

 さらに今回の対談インタビューの数日後、2021年9月18日に行われた国際G1競走で初勝利を挙げる快挙を達成した。

おめでとうございます!!

ヒロ: 僕らの出会いは新型コロナウイルス・パンデミックもだいぶ落ち着いてきた2〜3ヶ月前でしたね。

福元: はい。でもヒロさんのことは知っていました。それこそTORJAとかで。

ヒロ: 存在を知ってくださっていたなんて光栄です。お会いした時は共通の友人に紹介してもらったんですが、異国の地カナダでジョッキーをやっていて、しかも日本人で、なんとG1制覇と聞いてもう興味津々でした。

福元: ヒロさんも初対面ながらインパクトありましたね。見た目はもちろんですが、美容師ということもありコミュニケーション能力に長けた方だなと感じました。さすが、ヨークビルというトロントの一等地の場所で、美容師/オーナーをやっているだけあると思いました。

ヒロ: 私は、自分の仕事に情熱のある方や、他業種の一流の人とお話を聞くのが好きなんです。それに加えて、自分の父親が競馬好きなので、当時の騎手や馬の話を聞くと幼少期の思い出が蘇ってきました。

福元: 大事じゃないですか、コミュニケーションって。競馬の騎手も似ている感じなんです。いくら乗り方がうまくても、良い馬に乗らなければ結果がついてこないんです。だから良い馬に乗るためにはどういう作業・ステップを踏んでいかなければならないか、そのためには馬主さんとの信頼関係や調教師の方ともコミュニケーションをしっかり取っていかなければなりません。良い馬に乗らないと、どれだけうまくても意味がないんですよ。

ヒロ: そうなんですね。騎手でもコミュニケーションを重ね、人として好かれて良い馬と出会い、勝利を重ねていくのですね。ちなみに、ターニングポイントはやはり昨年のダービーですか?

福元: はい、やっぱりダービーを獲った時ですね。ダービーは世界共通なので、カナダだけでなく世界中から騎乗依頼が増えましたし、大きな馬主さんや著名な調教師さんからも馬を任せてもらえるようになりました。

 本当にダービーで勝てたのは大きかったです。夢だったので。たくさん勝ちたいと思っていましたが、その中でもカナダ最高峰のレースで勝てたんです。こんなに早く夢が叶ってしまって良いのだろうかと思ったくらいです。

ヒロ: この対談コーナーではこれまでにもトップアスリートや業界の一流の人に登場してもらったことがあるんです。福元さんもそうですが、みなさんの共通点は「情熱」。自分がやっていることに情熱があり、大体そういう人って生き生きしてますよね。もちろん、キャリアの上では良いことばかりでなく、辛いこともたくさんあると思います。でも、そういう方々はそんな困難も受け入れるなど、セルフコントロールも上手く出来ているように思います。

2021年9月18日、国際GI競走で初勝利 Photo Will Wong
2021年9月18日、国際GI競走で初勝利 Photo Will Wong

福元: 競馬も一回のレースで落ち込んでいるようではジョッキーに向いていないと思います。圧倒的に負けが多いので。でもその負けを無駄にしない人が勝てるわけです。

ヒロ: なるほど。当然、常に1着を目指されているけど、負けることもある。それでも、すぐに次のレースがあるわけで、くよくよしている場合じゃないんですね。すぐに気持ちの切り替え、メンタルの準備をした上で、また最前線の舞台で戦わなければならない。きっと、そんな勇姿がみんなに夢を与え続けますよね。福元さんにとって一流とは?

福元: 僕もまだ騎手として5~6年ですが、「受け入れることができる人」だと思います。どんな仕事でもそうだと思いますが、競技を続けていればミスや怪我などいろんなことが付きまといます。それでもそれを受け入れることが大事だと思っています。あとは、周りに惑わされず、自分の意思を持つことですかね。

(中編につづく)

(聞き手・文章構成TORJA編集部)

福元大輔さん Daisuke Fukumoto

 カナダを拠点に活躍する騎手。福岡県出身。小学2年生の頃から騎手になりたいと志す。中学生の時にJRA競馬学校を受験するが、二年連続で不合格となり、 海外で挑戦したいという小学生の頃からの夢を叶えるため、2015年17歳のとき観光ビザで来加。その後ワーキングホリデービザを取得し、ウッドバイン競馬場の調教師のもとで調教や騎乗の手伝いを2年間続け、2017年7月20日にカナダの騎手免許を取得した。

 2020年6月6日、クイーンズプレートステークスで マイティーハートに騎乗し、優勝。日本人騎手として初めてカナダダービージョッキーとなった。同年9月29日にはカナダ三冠の第2戦となるプリンスオブウェールズステークスでも、マイティーハートに騎乗して勝利し2冠を達成した。そして2021年9月18日には、ウッドバインマイルでタウンクルーズに騎乗し、国際G1競走初勝利を挙げた。