パンデミックを経て日常生活のワンシーンを取り巻く「平等・不平等」

パンデミックを経て日常生活のワンシーンを取り巻く「平等・不平等」

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、世界がいかに「不平等」であるかを痛感した人も多いだろう。アメリカにおいて頻発している警察による黒人への人種差別をはじめ、世界中では「不平等」であることが少なくない。今回は、そんな「不平等」そしてそれに対峙すべく「平等」に向けた取り組みを数多くピックアップ。カナダを中心に、世界中における統計、そして取り組みを主に紹介する。これをきっかけに、「平等」とは何か、そしてそれを成し遂げるべく私たちに何が出来るのかを考えたい。

平等
#1

「Black Lives Matter」運動を支援する動きが広まる

 新型コロナウイルスの感染拡大と同様に世界中で広まっている「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」の動き。テニスの大坂なおみ選手が着用していた服やマスクも記憶に新しいのではないか。多くの大企業においても「Black Lives Matter」の運動を支援する動きが広まっている。

 アメリカの航空会社、アメリカン航空では「Black Lives Matter」と書かれたピンやバッジを制服の上につけることを許可。通常、規則上では制服に政治的な立場を示す装飾は禁じられているそうだ。しかし、アメリカン航空は「Black Lives Matter」というメッセージを「政治的なものではなく、人権の平等性を表したもの」であるとした上で、着用を特別に容認。他にも、大手コーヒーチェーンのスターバックスなども同じく「Black Lives Matter」関連の服やアクセサリーなどの着用を認めている。大手航空会社のデルタ航空では独自のバッジをデザインする動きも出ている。黒人の社員からアイデアを募り、デザインに取り組むそうだ。

不平等
#1

食糧過多の中、飢餓に陥る人が増える?

 新型コロナの感染拡大により表面化した課題の中でも特に重みを持っているのが食糧供給における「不平等」だ。パンデミックをきっかけに、世界中の物流はストップせざるを得なかった。そんな中、世界における食糧供給がいかに不平等であるかが明らかになったのだ。

 ある記事によれば「ニューヨークでは多くの人が食べ物を求めて行列を成している中、ウガンダではバナナやトマトが青空市場で山のように積み上げられている」という。つまり、食糧が十分に足りているにもかかわらず、供給のバランスが取れていないため、多くの人が飢餓に陥りつつあるということだ。

 統計によれば、2020年の末までにはコロナ禍による飢餓でなんと1日に1万2000人もの人が命を落とすとも言われている。また、UNによると、世界で一億人を超える人が慢性的な飢餓に陥る可能性もあるそうだ。

平等
#2

「男女の平等」のために動く高級ブランド

 有名アパレルブランド「モンクレール」が限定販売を始めたジャケットが話題になっている。国連の「ガールズ・アップ・プログラム」と提携したモンクレール。このプログラムは、女性や女子のリーダーシップを支援するプログラムだ。これに合わせ、「It’s Her Right(彼女の権利だ)」と書かれたジャケットを限定販売。デザインを担当したベロニカ・レオニ氏自身もまた、女性や女子の活躍に向けた活動を積極的に行っている一人だ。レオニ氏は今回のプロジェクトを通して「女性として、これをきっかけに未来の世代を応援できることを願う。明確でありながら残念なことにまだ普遍的ではないゴールを成し遂げることができるかもしれない」とコメント。職場や社会における女性への差別などが今まで以上に課題となっている今。「教育への道を開くことは女性に力を与えるだけでなく、よりよい社会を作るための重要なツールとなる」とレオニ氏は女性への教育の重要性を訴えている。

不平等
#2

黒人・ヒスパニック系のコロナ感染割合が高い

 人種ごとにおける新型コロナウイルスの影響の違いは多くの人がニュースで目にしたのではないか。中でも、黒人やヒスパニックの人々が白人よりも新型コロナによる症状でより苦しんでいるという統計が注目されている。中でも、アメリカにおいては、黒人は患者の22%、ヒスパニック系は患者の33%を占めるという。それぞれ、国の人口の13%と18%しか占めないにもかかわらず、こうした不平等が如実に現れているのには様々な理由がある。特に突出した理由としては、居住環境や教育、そして雇用状況などにある。いわゆる「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職種における割合が高いため、パンデミックにもかかわらず出勤せざるを得ない。その結果、他の人種よりも感染リスクが特に高くなっていると考えられている。この実態はアメリカに限らず、イギリスやノルウェーなどの国でも似たような状況が見られる。

平等
#3

UCの医療センターがLGBTQ+の先駆者に

 アメリカのカルフォルニア大学(UC)が持つ五つの医療センターが医療におけるLGBTQ+の平等を推進する存在として認められたという。

 今回認定されたのは、ヘルスケア・イクオリティ・インデックス(HEI)により定められたもの。医療機関におけるLGBTQ+のセクシャルマイノリティに対する寛容性が認められた形となった。この「寛容性」に含まれるのは、患者への対応に限らない。患者はもちろんのこと、医療従事者をはじめとしたスタッフ、そして患者の関係者にへの対応も考慮されるそうだ。

 100点満点で採点されるHEI。その中でも満点の「100点」を獲得した医療機関には「リーダー」という称号が与えられ、今回カリフォルニア大学系の五つの医療機関が満点を獲得。デイビス校(UC Davis)、アーバイン校(UC Irvine)、ロサンゼルス校(UCLA)、サンディエゴ校(UC San Diego)、サンフランシスコ校(UCSF)の全てに「リーダー」という称号が付いたそうだ。

不平等
#3

人種による不平等は食糧難でも明らかに。
カナダでは先住民の人々に深刻な影響

 最初に挙げた「食糧不足」における不平等は人種により特に顕著に現れるという。アメリカを例に挙げると、この実態がよくわかる。ブルームバーグの記事によれば、黒人が白人の2.5倍の確率で食料を調達できない、もしくは調達しにくい状況にあるという。また、他機関の調査によれば、アメリカにおいて中でも特にひどい食糧難に直面している10の郡のうち、8つは人口の少なくとも60%がアフリカ系アメリカ人だそうだ。

 また、CTVの記事によれば、カナダも似たような危機に直面しつつあるという。しかし、アメリカとは違い、カナダにおける食糧不足により最も深刻な影響を受けているのは先住民の人々だそうだ。

平等
#4

黒人や先住民の子どもたちに重点をおいた支援策

 今回のCOVID-19パンデミックにより表面化した、人種による格差。これはカナダにおいても大きな課題となっている。そんな中、オンタリオ州政府は黒人の子どもたちに向けた文化や福祉のプログラムを守るべく、65万ドルを投じることを決定した。

 「ワン・ビジョン・ワン・ボイス(訳:一つの夢、一つの声)」と呼ばれるプロジェクトのもと、黒人の子どもたちが小児福祉などのサービスをより確実に受けられるべく体制を整えるという。研究によると、カナダにおける黒人やアフリカ系の子どもたちは、他の子どもたちより高い確率で支援団体などに送られるという。これは、子どもたちにとって大きなストレス、そしてトラウマにもつながるそうだ。

 今回決定された支援策により、子どもたちが入る施設などにおいて多様なスタッフを雇用することにつながると同時に、子どもたちの人種的多様性を考慮したケアが行われることが期待されている。

不平等
#4

カナダでは子どもを持つ母親に影響

 新型コロナの感染拡大により深刻な影響を受けているのは、人種的マイノリティに限らない。女性もまた、今回のパンデミックで最も苦しんでいるという統計が世界各地で取られている。

 食糧不足の問題においては、世界的に見ても、女性が男性より10%ほど高い確率で食料困難に陥るそうだ。カナダにおいては、子どもを持つ母親が最も深刻な影響を受けているという記事も少なくない。

 中でも、リモートワークや子どもたちの休校により、仕事と家事を今まで以上に両立せざるを得なくなった女性たち。CTVの記事によれば、三人に一人の女性がコロナ禍の影響で「仕事を辞めることを考えた」という。

平等
#5

トロント市、低所得者にインターネット環境を

 トロント市の政府は、インターネット企業のシスコ・カナダと提携し、低所得者にインターネット環境を与える取り組みを始めた。最初に対象となるのは、トロント市内の二棟のマンションに住む2000人ほどの住人たちだそうだ。「デジタル・キャノピー」と呼ばれるプログラムのもと、無償でインターネット環境が住人たちに提供されるという。この計画は中長期的なものであり、2020年の末までに、25箇所にWi-Fiのホットスポットが作られることが計画されている。同時に、シスコ・カナダは機器代として100万ドルを寄付するという。

 この取り組みを受け、シスコ・カナダの担当者は「今回のパンデミックは、常時、安定したインターネット環境がある人とない人の間にある格差を明らかにした」と語った上で、多くの施設が臨時閉鎖に追い込まれた中、人々がより簡単にインターネットを利用できる環境を構築したいと語っていた。

不平等
#5

特に打撃を受けた航空業界

 パンデミックで特に大きな打撃を受けたのが航空業界だ。これはカナダに限らず、世界各地において言えることだろう。新型コロナの感染拡大を受け、人の「動き」がストップした2020年の上半期。多くの企業が苦戦したのは間違いない。

 また、カナダにおいては、着陸するフライトに新型コロナの感染者が入国したということもあり、飛行機による移動がいまだ敬遠されていることも事実だ。企業ごとに見れば、エアカナダがおよそ2万人の従業員を、そしてカルガリーに拠点を置くウエストジェットが2000人の従業員を解雇せざるを得ない状況に陥ったということが今回の状況の深刻さを物語っている。

平等
#6

アカデミー賞の選考基準が変わる?

 2024年度のアカデミー賞より、中でも一番注目される「作品賞」の選考基準が変わることが明らかになった。

 具体的には、より人種的多様性を重視した選考基準になるという。ジェンダーや人種などの多様性はもちろん、障害者なども考慮した選考基準だそうだ。なお、2024年度からはこうした「多様性」に関する条件を満たしたものでないと、作品賞の候補作にはなれないという。

 ノミネートされるためには出演者の多様性もしくは「多様性」に関した題材や物語や製作におけるリーダーやプロジェクトチームにおける多様性、また多様な人々への映画業界における機会や活躍の場の推進など、今回設けられた4つの条件のうち、2つの条件を満たしていないければならない。「出演者の多様性」もまた、少なくとも主人公、もしくは重要な脇役の一人以上が少数派の一員であることなど、具体的なガイドラインも設けられている。

 カナダの映画業界においても重視されている「多様性」。これにより、世界的に評価される映画がより多くの人にとって「平等」を表現するものになることが期待されている。

不平等
#6

特に食糧難に直面している食品業界の人々

 世界中の人に食料を届けるべく、日々奮闘している「食品業界」の人々。皮肉なことに、今回のコロナ禍により深刻な食糧難に直面している人の多くが食品業界に携わっている人たちだという。しかし、コロナ以前でもこの「不平等」は顕著だったそうだ。ある記事によれば、2016年にはアメリカの食品業界に携わっている人の13%にあたる280万人が食糧難に陥っていて、この数字は他の業界に比べてなんと2.2倍にのぼるという。しかし、今回のパンデミックによりこの数字、そしてこの格差がさらに悪化すると見られている。この記事の取材に応じた一人の女性は、食品業界に勤務しながら家族を養う一人。働きながら一日をりんご一つで凌ぐこともあるという、過酷な状況に直面しているという。

平等
#7

カナダ政府、黒人の起業家に向けた支援策

 カナダ政府は、黒人の起業家がより容易に銀行より融資を受けられるためのプログラムを設立。このプログラムに向け、2億2100万カナダドルが投資されるという。トルドー首相は、カナダにおける黒人が他の人種より深刻な影響をパンデミックにより受けている現状を指摘。「カナダにおける格差が明らかになった」と語った。

 今回新たに打ち出された支援策は、4年間と長期に及ぶ。中には、黒人の起業家がより容易に資金調達やファイナンシャルプランニング、さらには研修などを受けられる制度を設けるための5300万カナダドルが含まれるという。その他にも、黒人の起業家たちがどのような問題に直面し、どのような格差が生まれているのかをより正確に把握するべくデータを収集する取り組みも含まれるそうだ。

 また、黒人の起業家が2万5000ドルから25万ドルまでの融資を受けられるためのプログラムもこれから設けられる予定。これにより、新たなビジネスが生み出されるべく経済を刺激すると同時に、経済界における「平等性」がより強調されることが期待されている。

不平等
#7

学問の世界における女性に対する差別が明らかに?

 新型コロナの影響で、学校をはじめとした多くの教育機関は試験方法などの見直しを強いられている。そんな中、フランスの大学院で行われた試験の結果が話題になっている。この大学院では、通常は試験の一部となっていた口述試験を新型コロナの感染予防のために免除。その結果、合格した人の80%が女性だったそうだ。

 この結果に対し、トロントのライアソン大学のサンドラ・ラポイント教授は「この結果は口述試験の際に存在していた偏見の結果だ」と鋭く指摘。今までの試験方法では女性に対する差別が今まであったのではないかという問題が浮上したのだ。

 また、今回の件に限らず、試験が匿名であると女性が合格する確率が上がるという結果が何度も見られている。これをきっかけに、教育機関における試験での偏見や差別が撤廃されることを願うばかりだ。

平等
#8

銀行BMOが多様性を盛り込んだ計画を発表

 9月にBMOが発表した事業計画に「多様性」というキーワードが盛り込まれ、話題となっている。BMOの方針としては、「マイノリティの人々が社内において占める割合をさらに高めるべく」今回の事業計画内容に踏み込んだという。具体的には、黒人、有色人種、先住民、ラテン系、LGBTQ+をはじめとした性的マイノリティの割合をより高める計画だ。この事業計画は「ゼロ・バリア・トゥ・インクルージョン」と呼ばれる長期的プランを発表し、このフレーズには「寛容性に向けて壁を撤廃する」という意味が込められている。

 BMOの最高経営責任者(CEO)は今回の事業計画について「より寛容な社会を作ることは私たちの揺るぎない使命だ。こうした新しい手法により、社員にとって有意義な変化をもたらすことを期待している」とコメント。カナダのみならず、アメリカの支社や支店においても適用するという。また、計画内具体的な数字や割合を設けることで、より定量化された目標になっているのも特徴だ。

不平等
#8

アマゾンなど大企業による支配

 多くの人が新型コロナの影響で金銭的に苦労している中、世界の「富豪」として知られる人々はさらなる富を蓄えている。例えば、アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏の資産は2000億ドルに到達。また、テスラの創業者、イロン・マスク氏の資産は1000億ドルに達するという。

 中でも、ジェフ・ベゾス氏率いるアマゾンはカナダにおいても注目を浴びている。アメリカとカナダにおいて10万人も新たに雇用すると表明した傍ら、ベゾス氏率いる大企業は「支配を乱用している可能性がある」とされ、カナダの競争局(Bureau of Competition)により調査をされるそうだ。具体的には、競合する企業などの支配をはじめとする、アマゾンを優位な地位に立たせる操作などが行われていたか否かが焦点になるという。「不平等」を解消しているように見える反面、さらなる「不平等」を作り出している疑惑もあるアマゾン。これからの調査結果からは目が離せない。

平等
#9

「水」を全ての人へ

 新型コロナの感染拡大を受け増加した水の需要に答えるべく、非政府組織(NGO)の「ウォーターエイド」は国際支援をさらに強めるという方針を発表したパンデミックにより影響された人々を支援・教育すべく始まった取り組みだ。具体的な内容としては、手洗いの場所を学校や病院などに設けること、子供たちをはじめとした多くの人に衛生についての教育を行うこと、コミュニティーが情報を得られる機会や場所を設けること、そして医療従事者に衛生に関する研修を行うことなどが盛り込まれている。

 さらに、「WASH」と呼ばれる取り組みもこれを機にさらに強化されるとのこと。「WASH」とは、水(Water)消毒(Sanitation)衛生(Adequate Hygiene)の頭文字をとったものであり、WHOにより、発展途上国が必要とする喫緊の課題の一つとされている。将来的には、新型コロナの感染拡大により特に如実になった女性に対する格差を解消すべく、女性に焦点を当てた策を投じていく、とも発表されている。

不平等
#9

大学入学は裕福な家庭やレガシーに有利になる

 パンデミックの影響を受け、多くの留学生は進学先や進路について頭を悩ませている。それもそのはず、今の状況では多くの国が学生ビザをはじめとするビザの許可を下ろしかねているからだ。そんな中、これから先の大学入試が今まで以上に「不平等」になるという懸念が広まっている。具体的には、より裕福な家庭の学生や、いわゆる「レガシー(遺産)」と呼ばれる、今まで大学に貢献してきた関係者を持つ学生を受け入れる方向性が強まるそうだ。その理由は、他ならぬ資金調達のため。新型コロナの影響で四苦八苦しているのは学生だけではない。留学を断念した学生を失い、苦戦している大学も少なくない。そんな中、卒業生をはじめとする資産家による寄付は大学にとって重要な資金源となる。しかし、これが事実であれば、これから先、世界でも名を知られている有名大学に入るためには「成績」よりも「資金力」などが重視される可能性が否定できない。

平等
#10

映画界における平等のためにトロント国際映画祭の取り組み

 今年はオンラインでも開催されたトロント国際映画祭(TIFF)。そんなTIFFにおける取り組みが話題になっている。今年のTIFFを機に、人種や性的マイノリティの映画監督に機会を与えるべく、新たな組織が作られたそうだ。その名も、Independent Media Producers Association of Cinematic Talent(IMPACT)。

 IMPACTは、具体的に、カナダにおける黒人、先住民、そして有色人種の映画監督の活躍を推進すべく設立。関係者の一人であり、自身もマイノリティの一員であった映画関係者は「私はこの業界に10年以上所属していて、その間扉は閉ざされているままだった」とコメント。また、新型コロナの感染拡大を受け、政府より受け取った資金の一部を所属する映画監督の支援に回すことも表明された。「組織的な人種差別を撤廃し、有色人種が資金をより受けやすくすべく取り組みたい」と大きな期待も寄せられている。

不平等
#10

人種による収入格差

 COVID-19以前より課題となっていた、「人種による収入格差」。中でも、アメリカにおける黒人と白人の収入の格差は顕著だ。白人の人が1ドル稼ぐところ、黒人の人は73セントしか稼いでいないという統計もある。その理由は複数あるものの、そもそも、高収入の職業における黒人の割合が極端に少ないことも大きな理由、そして課題の一つとして指摘されている。また、新型コロナの影響により多くの人にとって一般的となった「リモートワーク」もこの格差に影響を及ぼしている。統計によれば、白人に比べ黒人の労働者は「リモートワーク」をするという選択肢がそもそもないという。カナダにおいても、新型コロナの影響で職を失った人の割合は白人よりも黒人の方が高い。このように、様々な要因が引き起こした「格差」が人種間の「不平等」をより顕著なものにしている。

平等
#11

アフリカの人口の20%に新型コロナのワクチンを

 WHOが発表した内容によると、最初に提供される新型コロナのワクチンの20%(およそ2億3000万本)をアフリカのために確保するという。COVAXと呼ばれるワクチンの提供計画のもと、20億本のワクチンをより平等に振り分けるための取り組みの一環だそうだ。中でも、アフリカにおける医療従事者や重症化しやすい患者に優先的に計画的に提供される予定。また、このようにワクチンを優先的に提供することにより、ワクチンに関するデータを収集することが可能になり、後々より多くの人々に提供する際に考慮される重要な情報になるとも言われている。

 カナダにおいて国際保健に携わる組織であるCCGHRとCSIHはこの取り組みに協力する声明を発表。他の先進国が自国へのワクチン確保に奔走する中、「より恵まれない人々にもワクチンが行き渡ることが重要である」とした上で、1億2000万カナダドルを提供すると表明した。

不平等
#11

教育現場における「不平等」がさらに表面化

 新型コロナの感染拡大により、「平等」を助長するとされている政策や計画が逆に人種による差別や違いを表面化させていることが明らかとなった。中でも特に深刻な影響を受けているのが教育の現場、そして学校に通う子供たちを持つ家庭だ。多くの国で学校が休校し、子供たちは家から授業を受けることを余儀なくされている今。しかし、統計によれば、アメリカにおける白人家庭と黒人家庭を比べた時、インターネット環境に明らかな違いがあるという。自宅にインターネット環境が備わっている割合は白人より黒人の家庭の方が5%低いことが明らかになったのだ。また、9月より開始する新学期も多くの懸念を生み出している。カナダにおいては黒人をはじめとする有色人種の子供たちの多くは新型コロナへの感染リスクを抱えながら登校を余儀なくされている。その理由も、家庭におけるインターネットの接続環境やパソコンの欠如にあるという。

平等
#12

最低限所得保障(ミニマム・インカム)の動きがカナダにも

 「リベラル」の名でも知られるカナダの自由党の政策の一つの候補として話題になっているのが「最低限所得保障」の確保だ。カナダ自由党の議員の間で、政策の第一候補となっているという。新型コロナの影響でカナダをはじめとする世界各国では多くの人が給与を受け取れない状況、もしくは大幅に減給された状況に陥った。これを機に、アメリカをはじめ先進国諸国では「ミニマム・インカム」と呼ばれる「最低限所得」の保障が議論されるように。カナダの自由党に所属する議員らはこれが最優先課題であるということで一致した形だ。この案は11月に開催される議会に持ち込まれ、投票及び議論が行われるという。

 また、この他にも政策の候補として挙げられた議題は、介護施設などに向けた資金提供など、複数あるという。非常事態宣言が言い渡された3月、カナダ政府はCERBを出し、収入源を失った多くの国民へ給付金を提供。しかしながら、この給付金でも不十分であり、金銭的に困窮した人は少なくなかった。

不平等
#12

ビジネス界での勝敗も明らかに

 航空業界に加え、今回のパンデミックにより大きな打撃を受けたのが「小売業界」だ。中でも、小売に特化していたブランドが次々と破産しているのは多くの人がニュースでも目にしただろう。アメリカでは、新型コロナの感染拡大が始まって以来、なんと少なくとも25の小売店が破産を申請したという。カナダでも、22の企業が破産を申請するなど、似たような数字が出ている。アメリカにおいて破産を申請した企業の中には、世界的にも知られる「JC Penney」や「Neiman Marcus」なども含まれる。一方、カナダでは「MEC」や「Frank & Oak」など、ショッピングストリートでも人気を誇っていた複数のブランドが破産を申請。小売店に重きを置くブランドの弱さが「破産」という形でこれまで以上に明らかになった形だ。

平等
#13

打撃を受けた若者を救うために

 オンタリオの州政府は「Premier’s Council on Equality of Opportunity」と呼ばれる委員会を設立することを発表した。「機会の平等性」と名付けられたこの委員会は、今回の新型コロナの感染拡大により、社会的と同時に経済的にも特に大きな影響を受けつつある若者を支援すべく設立されるという。この委員会の設立について、オンタリオ州のフォード首相は「私たちは彼らが目の前に立ちはだかる社会的や経済的な壁を乗り越えるための支援をしなければならない」と強い抱負を語った上で、「若い人はこの州の未来であり、この委員会により若い人たちがより大きな成功を掴むことが出来ることを信じている」と期待を寄せていた。

 具体的な取り組みの内容としては、教育や研修などにおけるサポートを行うそうだ。委員会を構成するメンバーには18歳から29歳の若者も含まれ、行政や教育などにおける専門家なども交えて作り上げていくという。

不平等
#13

カナダ人の28%が感じた「格差」「差別」

 Statistics Canadaの統計によると、アンケートに答えたカナダ人の28%が新型コロナの感染拡大以来、何らかの形で「格差」や「差別」を感じたという。今回のアンケートで対象になったのは、およそ3万人のカナダ人。中でもこの結果が特に顕著だったのが「女性」や「先住民」さらには「中国人」や「韓国人」だったそうだ。また、「中国人」や「韓国人」をはじめとした対象者からは「人種」による差別、さらには偏見の被害に遭ったという声が聞かれた。これを受け、「この結果はカナダにおける職場や労働環境に根付いている人種差別の結果である」と専門家はコメント。具体的には、韓国人の64・4%、そして中国人の59・6%と、どちらも過半数がこうした声を上げているそうだ。中でもこうした差別や偏見の被害に遭った場所として挙げられたのは銀行や小売店などといった街中で多かったそうだ。

平等
#14

より多くの人に職を

 Global Newsの記事によると、8月時点で24万6000もの雇用が創出されたという。実際、非常事態宣言が言い渡された3月からの2ヶ月間以降、雇用の数は上昇傾向にあるそうだ。新型コロナの影響により失われた雇用はなんと200万ほど。8月における雇用の多くは正社員などにあたるそうだ。これにより、通常の勤務時間の半分以下しか勤務出来ていない人の割合も14%ほど減少。パンデミック以前の水準にはまだ程遠いものの、徐々に雇用が創り出されているのも事実だ。また、25歳以上54歳以下のカナダ人においては、男女共にパンデミック以前の9割ほどの水準に雇用の数が改善しているという情報もStatistics Canadaが発表している。しかし、いまだ課題として残っているのは先住民をはじめとした人種マイノリティの職場への復帰。これから冬にかけて雇用がいかに創出されるかが問われる。

不平等
#14

貧富の差が拡大。さらに富を蓄えている大富豪たち

 新型コロナの影響で多くの人が職を失い、金銭的に困窮していた中、カナダの大富豪はさらに富を蓄えていたという結果が出た。Statistics Canadaの調査によると、カナダにおけるトップ20の億万長者は平均でなんと一人当たり20億カナダドルの収入があったそうだ。この中には、新型コロナの影響で事業を拡大し続けているShopifyの最高経営責任者(CEO)のトビ・ルーク氏、そしてカナダの人気ブランドであるルルレモンの創業者、チップ・ウィルソン氏も含まれる。その一方で、カナダではおよそ110万もの職が新型コロナにより失われたと言われている。「医療従事者やスーパーの従業員など、エッセンシャルワーカーが命を懸けて最前線で働いている中、事業のオーナーは莫大な富を蓄えている」という声も聞かれ、今まで以上に貧富の差が如実に現れている。