【数字で見る】移民に人気なカナダだけどちゃんと知りたい住みにくさ・ デメリット|特集「カナダ移住で知った生活デメリット」

【数字で見る】移民に人気なカナダだけどちゃんと知りたい住みにくさ・ デメリット|特集「カナダ移住で知った生活デメリット」

移民大国として知られるカナダ。カナダ政府は、人材不足などから毎年積極的に移民を受け入れている。もちろん日本からもカナダへ移り住みたいと考えている人、またはすでに移住した人などさまざまな人がいるだろう。海外移住を目指すならカナダはとても魅力的かもしれないが、もちろん大きなマイナス面もあり、カナダ暮らしの前に一度立ち止まって考えるべきことも少なくはない。「本当にカナダは住みやすい国なのか?」。今回はカナダのネガティブな部分を紹介し、リアルなカナダの姿を見ていきたい。

1-1.家が高すぎる!30年で価格倍増

 

カナダの住みにくさを語るにあたり、「住宅価格」ははずせない。Statistics Canadaのデータを分析すると、過去30年で住宅も土地も価格が著しく上昇していることが明らかになった。2016年12月を100とした場合、2022年12月は住宅価格が129・2、土地価格は116・6であり、1991年1月の住宅価格52・6と土地価格65・1よりもそれぞれほぼ倍増したことになる。特に住宅価格については、2020年7月(103・9)から2022年8月(129・8)の2年間での上昇率がすさまじい。供給に対して過度の需要が生まれたための価格上昇だとされている。

次にバンクーバー、カルガリー、オタワ、トロント、モントリオール、ハリファックスの6都市で比較する。バンク・オブ・カナダなどが公開している2000~2022年の住宅価格指標(2005年6月=100)を分析すると、2005年にバンクーバーとカルガリーが他と異なる動きを見せたものの、2014年ごろまでは著しい地域差があるとまでは言えない。しかしそれ以降バンクーバーとトロントの住宅価格は急上昇し、2022年序盤には400近い数値を記録した。唯一カルガリーは低い上昇率を維持していたものの2022年に指標数が200を超え、今ではカナダ全体で住宅購入が難しくなりつつあると言えるだろう。

1-2.平均賃料は2000ドル超え。1年で30%増の地域も

住宅購入だけではなく家を借りることさえ難しくなってきているのがカナダの現状だ。Rentals.caによると、2022年のカナダ国内における全物件タイプ(ワンルーム、1ベッド、2ベッド、3ベッド)の平均賃料は、2021年より12.2%アップの2005ドルだった。

特に都市別で見ると差が顕著であり、1ベッドルームあたり2596ドルのバンクーバーが1位、2457ドルのトロントが2位、バーナビーが2450ドルで3位と続く。

それぞれ1年前より16.8%、21.3%、23%の増加率を見せているが、オンタリオ州南西部の都市キッチナーは32%の高騰を見せ(1ベッド1968ドル)、最も高い上昇率を誇った。やはりバンクーバー近郊とトロント近郊といった大きな都市は、住まいについての出費が高くなることを覚悟する必要がありそうだ。

2. 【世界7位の交通渋滞】1年で118時間も通勤時間ロス

トロントの交通渋滞は世界的にもかなり悪いようだ。交通分析会社であるINRIXが世界50カ国の1000以上の都市を分析し、2022年にそれぞれの都市の通勤者が渋滞などの交通状況によって1年間にどれだけ通勤時間をロスしているかというランキングを作成。ロンドン、シカゴ、パリなど世界中の主要都市が1~3位に並ぶ中、トロントは世界7位にランクインした。トロントエリアの通勤者たちは1年で平均118時間も失っていると分析されている。2021年に22位だったことを考えると、不名誉にも順位を伸ばした形だ。

カナダの他の都市を見ると、モントリオールは72時間(世界33位)、バンクーバーは59時間(同58位)、ウィニペグは48時間(同107位)、カルガリーは20時間(同460位)のロスだと発表されており、トロントの数字がいかに異常かわかる。

ロスタイムだけではなく交通速度で見てみると、トロントのラッシュアワー以外での平均速度は時速61kmだが、ラッシュアワーにはその半分の時速32kmにまで落ちている。仕事に行く前に通勤だけでかなり疲れそうな印象だ。また、TomTomという会社が公開した別の交通分析レポートによると、トロントでは毎週木曜日の午後3〜4時が最も渋滞がひどいことがわかっている。仕事で疲れて帰宅する間にもストレスを受けそうな交通状況だと言えよう。

3. 医療費無料でも3つの課題 -特に長い待ち時間に注意-

新型コロナは、いかにカナダのヘルスケアシステムに欠陥があるかを証明したと言われている。Business Examinerによると、カナダだけが唯一病床に空きがなく診察までの長い順番待ちリストを抱えてパンデミックに突入した国とのこと。カナダの医療費は無料であり、経済に占める医療費の割合が世界1位(OECDによる)である事実だけなら聞こえはいい。しかし①病床数不足、②医者不足、③長い待ち時間という3つの課題があることに触れておきたい。

①についてOECDによると、2020年時点での1000人あたりのベッド数は2・55床で主要36カ国中29位。1位の韓国や2位の日本が12床を超えていることと36カ国の平均が4・44であることを考慮すると、カナダの状況は悲惨だ。

②についてFraser Instituteが調査・公表している1万人あたりの医者数データ(2020年)を見ると、カナダは30カ国中ワースト3位の2.8人。カナダより下には医者数トップの韓国と日本が続き、OECD平均の3.8と差が見られる。

③の待ち時間についてFraser Instituteの調べによると、2022年にホームドクターの診察→専門医紹介→治療にかかった時間の平均は27・4週間で、これまでで最も短かった1993年の9.3週間より242%長くなった。地域差は大きく、短いのはオンタリオ州の20・3週間、長いのはプリンスエドワード島の64・7週間。どんなに深刻な病を抱えていても、最低数ヶ月は待つ可能性が高いのがカナダの医療の現状なのだ。

4. 運転の評判が悪すぎる…世界ワースト10入り

世界で運転の荒い国として、なんとカナダがワースト10入りした。自動車保険会社であるCompare the Marketが先日発表した世界各国の交通状況や道路舗装、事故の多さなど6つの項目を数値化して比較したレポートによると、カナダは世界ワースト9位として名前が挙げられている。

トータルスコアを5とすると、カナダはたったの2.61(1位のタイは2.17)。特に「SNS上でのプラス評価の割合」という点では、世界ワーストドライバーと認定されたタイでさえ20.8%なのにもかかわらず、カナダは世界で2番目に低い8.44%だった。つまり、カナダの運転について多くの人が不満をもらしていると言うことができるだろう。

ちなみにこのレポートによると世界最高のドライバーは日本(トータルスコア4.57)であり、両国間の差はかなり大きいと言える。

5-1.貧困層と富裕層の収入差が約7倍

所得格差など貧困の差という観点では、世界的に見てカナダはそこまで悪くない(OECDによる)。しかしもちろん貧困層が比較的多いと言われるエリアがあったり、それによって学校の環境がかなり違ったり、カナダでも格差を“見る”ことは多々ある。特に新型コロナがその差を顕著にしたと言われているのが、エリアによってコロナ感染率に大きな差が生まれていたからだ。CBCニュースによると、低所得層や黒人居住者の多い地域でコロナ感染率が高く3倍にまで広がっていた地域もあった。入院率は4倍、死亡率も2倍で、所得格差が生んだ悲しい現実だと言えよう。

カナダ国内の収入格差は実際どんなものなのか、Statistics Canadaのデータ(2000~2020年)で見てみよう。所得の中央値によって上位5%、10%、50%、そして下位25%のグループにわけて比較すると、その差は歴然だ。2020年に上位5%層は中央値でさえ17万3600ドル、上位10%は13万2300ドルだったが、下位25%層は2万3100ドルと7~6分の1の水準だ。上位50%の中央値が6万7400ドルで全グループ平均収入は5万4200ドルであることから、いかに富裕層たちの得る額が桁外れなのか、また貧困層との差がどれだけ開いているのかがわかるだろう。

5-2.移民は収入が低い傾向。30年前より開く差

Statistics Canadaによると、2015年と2019年に移民とカナダ生まれの労働者がそれぞれ1週間に得た収入を男女別に比較したとき、移民になったばかりの労働者は男女に関係なく20%以上の差が出たことがわかった。移民して長い時間が経った労働者は約5%の差にとどまってはいるものの、一般的に女性の方が収入差は出やすいということは読み取れる。またRBC Economicsが発表した最新レポートによると、移民の収入はカナダ生まれの労働者より約10%少なく、30年前は4%だったことを考えるとその差が広がっているという。移民は専門分野の仕事を見つけにくく、移民後に新しくキャリアをスタートする人が多いからだと分析されている。大学の学位を必要とする職業に就く割合が、カナダ人は52%だが移民は38%にとどまっており、移民は教育や経験を必要としない職業に就く傾向があるということもわかった。移民との収入差をなくすことで、カナダのGDPを500億ドル高めることができると言われている。

6. カナダの空港、昨年末は世界ワースト1位の遅延数

カナダに住んでいると、日本に帰るために利用するのはもちろん飛行機だろう。私たちにとってなくてはならない空港が、実は世界的に見て評価が低いことがわかった。

フライトトラッキングサイトであるFlightAwareによると、昨年5月27日~9月5日に遅延したフライト数はピアソン国際空港が世界ワースト1位の51.9%だった。さらになんと、2位にはモントリオール・トルドー国際空港(47.8%)、10位にはバンクーバー国際空港(37.8%)と、カナダ国内3つの主要空港が名を連ねてしまった。特にピアソン国際空港は唯一50%を超えており、早急な対策が求められる。

またフライトのキャンセル数では、ピアソン国際空港が世界ワースト4位にランク入り。カナダの空港を利用するとスケジュールが狂わされる可能性が高いというのは、なんとも不名誉なことである。

7. 殺人事件の犠牲者40%が銃によるもの

お隣アメリカと違って、銃規制が厳しく治安の良い国として知られているカナダ。しかし、実は殺人事件の詳細を見てみると「銃殺」が最も多いのだ。

Statistics Canadaによると、2021年の銃による殺人は297件で全体の約40%を占める勢いだ。10万人あたりの殺人事件犠牲者数という観点で見ると、銃殺が0.78人でトップ。次いで2位が0.63人の刺殺(全体の32%)、3位が0.34人の撲殺(同17%)だった。銃殺と刺殺による犠牲者が毎年1、2位を占めていて、ここ6年では銃が殺人の内容として最も多い。

過去には1975年に銃殺犠牲者が1.26人を記録しており、それよりは減少している。しかし過去20年間の殺人事件件数データを見ると、2021年の297件が最多だということがわかる。人口が増えていることを考慮すれば件数が増えるのは当然かもしれないが、良い傾向とは決して言えない。

その一方で、殺人に限らず銃が関連した暴力犯罪被害者数の割合では全体の3%以下にとどまり、世界的にはそこまで多いわけではない。それでも銃犯罪を減らすため、カナダ政府は積極的により厳しい規制に取り組んでいる。

8. 1年で破産率37%↑回復に時間がかかりそうな経済

新型コロナの影響で世界が経済的に厳しい3年間を経験している中、2022年に債務超過に陥ったカナダの企業数が1年間で30%以上増加したという事実が明らかになった。Statistics Canadaによると、2022年に債務超過した企業は3402社。2480社だった2021年より37.2%増えた。そのうち債務整理の提案を受けた企業は781社で、2021年から45.2%増。破産申請した企業数も、パンデミック以降最多となる2621件だった。多くはパンデミックによって抱えた負債のためだとされている。また2022年の個人破産件数を見ると、債務超過に陥った件数は3年間で最も多く10万件を超えた。破産申告数は減少したが、一方で債務整理の提案を受けた件数は最も多い7万5598件を記録した。新型コロナをきっかけとするビジネスの回復の遅れや昨今の物価高なども相まって、特に中小企業や個人経営者たちは厳しい状況下にあると言えよう。経済関係者らは、さらにこの数字は増え続けると予想している。

9. 実は“世界一寒い”国カナダ

カナダが実は“世界一寒い国”だということはご存知だろうか。横に長く面積も大きいカナダは、もちろん地域によって気温が大きく異なる。しかし国別で1年間の平均気温を比較してみると、世界で最も平均気温が低いのだ。Trading Economicsが公開している各国の1年を通しての平均気温(2020年と2021年、グリーンランドを除く)をもとに分析してみると、カナダが−3.99℃で世界1位。2位はロシアで−2.68℃、3位はノルウェーで2.7℃と続き、カナダとロシアのみが平均気温が氷点下となっている。カナダで暮らすなら、この寒さと付き合っていくためのある程度の覚悟が必要だろう。