【スペシャルインタビュー】食料の買い出しに行けない医療従事者と周辺に住むボランティアをマッチングして食料を配達するサービス「Grocery Hero」|コロナ禍で医療従事者を支えた感動ストーリー

 新型コロナウイルス感染拡大を受けての悲しいニュースや非常事態宣言下で不自由な生活を強いられている毎日の中で暗い話題が多いが、医療現場の最前線で日夜問わずCOVID-19と闘う医療従事者の存在は我々に勇気と希望を与えてくれている。そんな医療従事者に向けてさまざまなサポートや支援、感謝の気持ちが表されている。

 各種メディアにも取り上げられ、現在話題となっているサービスの一つが「Grocery
Hero」だ。食料品の買い出しに行けない医療従事者と、その周辺に住んでいるボランティアをマッチングして食料品を配送するという仕組み。

 友人5人で立ち上げられたこのサービスは、現在カナダ全国でサービスを展開していて、既に6千人以上のボランティアがサインアップし、1700組ものマッチングが行われたという。

 このサービスがどのように立ち上げられ、コミュニティーにどのような影響を及ぼしているのか。今回は創業者の一人にインタビューを行い、話を伺った。

ー「GroceryHero」誕生の経緯を教えてください。

 「GroceryHero」は、友人の間で出てきたアイデアが大きくなったものです。創業メンバーの一人に救急医の友人がいたのが事の発端でした。ある日、創業メンバーの一人が自分の食料品を買うついでに救急医の食料品や必要なものも購入することを提案しました。すると、その救急医は「医療従事者の間で食料品を買うということはとても大きな問題になっている」ということを明かしたのです。

 これには、二つ大きな理由があります。一つ目は、食料品の配送サービスの加入者が多く、手一杯になってしまっていること。もう一つは、医療従事者がスーパーなどの店に入ることを躊躇しているということです。一つ目は私たちも把握していましたが、二つ目は初耳でした。

医療従事者による「需要」と一般の人による「供給」のマッチング

 この話をチームの皆が知ったのはある木曜の夜、「ズーム」を通して5人で集まった時でした。そこで「一般のボランティアと医療従事者をマッチングしたらどうか」というアイデアが出たのです。この話が出た48時間後にはプラットフォームが完成し、カナダ全土でGroceryHeroのサービスが始動したのは日曜日のことでした。医療従事者による「需要」と、「医療従事者の役に立ちたい」という一般の人によるボランティアの「供給」により誕生したものでした。

ー48時間という短い時間でサービスを立ち上げることが出来た理由は?

 これには二つ大きな理由があると思います。
 一つ目は、今は誰かが何かを「作る」ということが容易になったということです。

 「GroceryHero」の基盤となっているのは、「グーグルフォーム」や「スクエアスペース」をはじめとしたプログラミングやコードがほとんど必要ないようなソフトばかり。だからこそ、プログラミングを学ぶ時間を省き、48時間というスピードで設立することが可能になったのです。

 二つ目は、このようなサービスが成功するか否かは「人が認知しているか」ということにかかっている、ということです。「口コミ効果」と似ています。参加しているボランティアや医療従事者の人数が多ければ多いほどサービスの成長が速いのではないのでしょうか。

 ボランティアが多ければ、医療従事者が加入した際にボランティアを見つけやすくなる。マッチングが早く行われれば、高い評価が付き、他の医療従事者にも情報が行き渡る可能性が高いということです。

誰かが何かを「作り上げる」ことが簡単になった今だからこそ出来たサービス

 そのため、最初にやったことで特に重要だと感じたのは、私たちの知り合いのネットワークを活用したことです。メディア業界などにいる知り合いに自身のアカウントやウェブサイトで紹介してもらえるよう話を持ちかけ、これに多くの人が賛同してくれました。また、サービスが始動した初日にメディアで特集されたことも効果的だったと思います。これらが相まって、サービスがこのようにハイスピードで成長していったのだと思います。

ーこれまで参加したボランティアや医療従事者からの反応は?

 嬉しいことに、大半が前向きな感想でした。

 あるボランティアが医療従事者の家に食料品を届けに行った際には、玄関に医療従事者の子供が書いた「ありがとう」のメッセージと絵が飾られていたそうです。

 また、あるボランティアは食料品と共に鉢植えを購入し、その鉢植えに「ありがとう」というメッセージを付けていたそうです。参加した人の多くはこのサービスを通して知り合ったものの、これから先も「互いの友人でありたい」と思うようになったという声も聞いています。こうした長期的な繋がりの構築は私たち創業メンバーが予想していなかったことですが、とても嬉しいことです。

 私たちは一つ一つの配達には立ち会っていませんが、このように実際に参加した人からの話を聞くといまもサービスを利用してマッチングによって多くの医療従事者が助かっているのだと実感できています。