北米最大級のテックカンファレンス「Collision」|特集「カナダライフのヒント・キャリア編」

オープンイノベーション・スタートアップ業界のチャンスはスタートアップエコシステム・ランキング世界第4位のカナダにあり!

 北米最大のテックカンファレンスであるコリジョンが、6月20日から23日までカナダ·トロントで3年ぶりに対面で開催され、世界130カ国から793人の投資家、1,557社のスタートアップなど3万5,000人以上が参加した。

 今回ジェトロは初めて日本ブースを出展。さらに、カナダのイノベーションエコシステムの概要を日本から参加するスタートアップ企業や日系企業に紹介するブリーフィングセッションを企画、そしてカナダ投資庁とともにネットワーキングイベントを開催、そのうち5社に話を伺った。

ダイバーシティ×スマートシティ
~可能性を秘めたトロント~

FutuRocket 株式会社  美谷広海さん

FutuRocket 株式会社 美谷広海さん
 弊社はスマートシティ向けの製品を開発しており、トロントは、ハーバーフロントのスマートシティ化計画が持ち上がっていました。これは頓挫してしまいましたが、依然としてその流れはあると思います。行政やお客様と何か接点を得ることができればと考えています。

誰もやってこなかった領域へ
世界の皆が幸せになれるブランディング

株式会社ZeBrand(右から)菊池諒さん、陣内真瑶さん

株式会社ZeBrand (右から)菊池諒さん、陣内真瑶さん
 ブランディングをオートメーション化するウェブサービスを展開する弊社のサービスに対するリード獲得とパートナーシップの獲得を目的として来ました。BETAスタートアップとしてのブース出展とスタートアップショーケースピッチを行い、世界各国のスタートアップやテックパーソン、メンターの方々と意見を交わすことができ、とても貴重な機会となりました。また、スピーカーとして登壇していたJohn Maedaさんもブースを訪れてくださり、Web3環境におけるブランディングの考え方についてなど意見交換ができ、素晴らしい機会に恵まれました。

AIの聖地トロント東北大学発のAIスタートアップ

株式会社Adansons (左から)石井晴揮さん、中屋悠資さん、樋口賢一さん

株式会社Adansons(左から)石井晴揮さん、中屋悠資さん、樋口賢一さん
 今回の目的として投資してくれる企業を探しており、AI企業への投資額の大きいカナダに注目しました。また、メイン市場である米国への足がかりになればと思っています。

 イベントに参加し、私たちのターゲットであるAIエンジニアと多く関われたほか、来場者の技術リテラシーが高くかつ積極的であったため、プロダクトに対して意義の高いフィードバックを多数得ることができました。日本には、エンジニアやスタートアップの人がオーディエンスとなるようなカンファレンスはほとんどないため、コリジョンならではのメリットを感じました。

誰でも使える、作れる3Dマップで情報の交換やアイデアの可視化が自由になる未来

株式会社Eukarya (右から) Mashiyat Zamanさん、 Kyle Waiteさん

株式会社Eukarya (右から) Mashiyat Zamanさん、Kyle Waiteさん
 デジタルアーカイブや知的活動の支援を行なっています。 参加目的は、カナダに拠点のある会社やクライアントと接点を持つことでオープンな考え方ができるようになりたいと思っています。カンファレンスの3日間を通して、ほとんどすべての会話で、「Re:Earth」とは何か、なぜそれを開発しているのか、そしてそれが人々をどのように助けているのかを説明する必要がありました。 また他のスタートアップを訪問し、新しいプロジェクトや潜在的なコラボレーションのアイデアを得るだけでなく、私たちの製品についても効果的にコミュニケーションする術を学ぶことができました。

知らない世界を見に、そして僕らのビジネスを見にアフリカへきて欲しい

株式会社Dots for   中田渉さん

株式会社Dots for 中田渉さん
 私たちは、アフリカの農村部向けに通信事業をおこなっています。参加目的は、アフリカに興味がある投資家からの資金調達とコミュニティーづくりです。

 日本でも資金調達はしていますが、アフリカに関する関心や知見を持っている投資家は限られています。どちらかというとESGがカーボンニュートラルのみならず広く捉えられていたり、歴史的に繋がりの深い点においてヨーロッパの投資家のほうが反応は良いです。とはいえ、なかなか彼らにリーチできていないため、こういった機会を活用してコミュニティーに入っていきたいと考えています。

 今回参加して良かったと感じているのは、アフリカで活躍していらっしゃる多くの起業家の方と話ができたことです。同じような悩みを抱えながら奮闘している現地起業家の方と話ができ大変刺激をもらえました。

多文化主義の移民国家で、異文化へのリスペクトやオープンな雰囲気があるといった特徴も魅力の1つ

JETRO 山田あゆみ氏

JETRO 山田あゆみ氏

ーイベントを振り返って

 ジャパンブースでは、今回JETROが支援させていただいた7社の日系スタートアップの皆様の商談などのご利用に加え、日本市場への展開に関心のある北米のスタートアップ企業、北米のスタートアップ企業とのオープンイノベーションに関心のある日系企業、政府系・自治体等の支援機関等の皆様にひっきりなしにお立ち寄りいただき、本当に沢山のエコシステムのプレーヤーの皆様とお話することができました。

 その場にたまたま居合わせた方をご紹介し商談に繋がるなど、まさに「Collision(衝突)」が起きることを目の当たりにし、リアルでのイベント開催の貴重さと面白みを感じました。

 また、カナダ投資庁よりお声がけいただき開催したネットワーキングイベント「ジャパン・ナイト」では、参加者からは、「カナダのビジネス環境を理解し、他の参加者や関係者と接点を持った上で翌日からのコリジョンに移行することができよかった」というような喜びの声をいただきました。

ーカナダのスタートアップ・イノベーション市場の魅力

 あまり日本では知られていないかもしれませんが、カナダは米国、英国、イスラエルに次いでスタートアップエコシステムランキングで世界第4位というデータもあるほど(StartupBlink、2021年)、世界的にも認知されるスタートアップ大国です。

 特にAI研究が盛んで、「AIゴットファーザー」の異名を取るトロント大名誉教授のジェフリー・ヒントン氏、弟子でフェイスブックのヤン・ルカン氏、モントリオール大学教授のヨシュア・ベンジオ氏の3人は「カナディアンAIマフィア」と称されています。

 AIを中心に他の理系分野でも優秀な人材多く、カナダ全土では毎年280万人の理系大学出身者が生まれていると言われていますが、シリコンバレーやシアトルと比べてコスト安です。

 またカナダは多文化主義の移民国家ということもあり、異文化へのリスペクトやオープンな雰囲気があるといった特徴も魅力の1つです。

ーJETROの取り組み

 JETROではカナダ市場への展開を目指す日系スタートアップ企業及びカナダスタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指す日系企業を対象に、グローバルアクセラレーション・ハブ事業を展開しています。当地のビジネス環境に関する情報提供や事業機会に関するアドバイス、現地パートナー候補の紹介等を行っています。また、日本企業ととカナダスタートアップ企業間の協業連携をサポートする事業として、日本企業のリバースピッチイベント「Generating Innovation with Japan(GIJ)」やカナダスタートアップ企業によるピッチイベント「Canada Fintech Pitch and Meetup」等を開催しています。

ー今後の取り組み

 日本では、米国やその他の国と比較してカナダのイノベーション・スタートアップエコシステムに関する情報は多くなく、まだまだ認知度向上の余地があると考えています。

 カナダの最新情報や魅力を積極的に発信することや、関連イベントを企画することで、これまであまりカナダに注目されてこなかった日本企業の皆様にも関心を持って頂けるような取り組みをしたいと考えています。