【第37回】国際離婚と裁判「私、勝てますか?」|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方


 
 「私、勝てますか?」国際離婚に瀕する日本人の問いかけです。離婚条件の判断を法廷に委ねたとき「自分の主張」が認められるのだろうか…質問というより「不安」な気持ちの表れなのでしょう。

 「法廷に判断を委ねた」のが、親権であれ、財産分与や養育費であれ、法廷が下した命令が「自分の主張」に沿ったものであった場合、「離婚裁判に勝った」とするのでしょう。しかし、離婚裁判に「勝つ」とは、「どのような紆余曲折を含んだものか」を説明することに窮することがあります。

 そこで今回は「離婚裁判とは何か。いつ裁判に踏み切るのか」についてオンタリオ州スペシャリスト認定弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。

裁判は最後の手段

 離婚弁護士を訪ねる多くの人が「裁判をしたくない、話し合いで解決したい」と希望します。そして弁護士も「裁判は最後の手段、裁判に至らないよう最善を尽くす」と応じます。
 オンタリオ州の法律協会は、「裁判を望むクライアントには、裁判を避けるオプションを提示すること」を弁護士に義務付けています。

 弁護士は、裁判の「好ましくない点」についての説明義務を負っています。例えば

1. 裁判では担当判事の裁量で命令が下されるため、当事者間での話し合いなら可能な柔軟さが期待できないこと
2. 裁判は時間かかることが多く、その費用も高額であること 

などがそれにあたります。

 したがって、夫と妻の双方が家族法弁護士に依頼し、積極的に解決を望んでいる場合、裁判に至るケースはめったにないのが現実です。

裁判に踏み切るタイミング その1

 しかし、どんなに優秀な弁護士がついていても、裁判を避けられないケースがあります。

 まず、相手が話し合いに応じない場合です。弁護士が正式に依頼を受けた時、まずは相手に手紙を書き、次の三つを伝えます。

1. 別居条件を協議するために配偶者から依頼を受けたこと
2. 互いに協力することで、裁判を避けたいこと
3. 建設的に協議を進めるため、配偶者の弁護士とは異なる別の家族法弁護士へ依頼してほしいこと

 最後に「手紙の日付から2週間を目処に返事をもらいたい」と加えます。

 この手紙に返事がない場合には、リマインダーを出しますが、これも無視された場合、弁護士はクライアントに「裁判申請」について打診します。

 裁判申請をすることで、相手に当方の「真剣さ」をアピールし、「無視」というカードを封じることができます。裁判書類の送達を無視することは、法廷が申請側の主張を全て認めることに繋がるので、相手はこの時点で弁護士を見つけ返答してくることになるでしょう。

 「裁判申請=裁判」ではないことが理解できれば、裁判手続への移行に不安を抱くこともありません。

裁判に踏み切るタイミング その2

 繰り返しますが、弁護士の目指すところは、協議離婚です。しかし、ダラダラと協議が進まない、あるいは別居条件の同意に至らない、といった場合、やはり裁判は有意義なオプションです。

 離婚条件に合意が見られない場合のもう一つのオプションは、ミディエーションですが、このプロセスも建設的に進まない場合もあります。

 協議が滞ってきたら「あと○ヶ月経っても事が進まない場合には裁判」というタイムラインを視野に入れた方が良いでしょう。これは、先の「無視」に対抗する措置に似ていますが、裁判に進む意志はより明瞭でなければなりません。

 そしてこれが、裁判が最後の手段と言われる由来です。「できるだけの事はした、裁判以外考えられる手はもうない」というタイミングです。

 最も残念なのは「裁判を避けること」自体が目標と化してしまうケースでしょう。「裁判はお金も時間もかかる」との呪縛?にとらわれ過ぎたため、裁判に踏み切るタイミングを見失ってしまうことは、法システムの盲点だと言えるかもしれません。

裁判は怖くない!?

 正確には「裁判を正しく恐れよう」と言うべきかと思います。裁判という法手続を正しく活用することは、大人の責任であり義務でもあります。お子さんやご自身の未来に関わる判断を「法廷に委ねる」ことを必要以上に恐れないでください。

 裁判では、弁護士は全力でクライアントに寄り添います。そして法廷も「裁判所命令」という大きな責任を果たすため、全力を尽くします。

 法廷は、弁護士が準備した証拠を熟読し、法廷での証言や質疑応答から当事者双方の主張を吟味し判例と照らし合わせます。その上で、最もふさわしい判断を下すのです。

 離婚裁判に「勝った」「負けた」と表現する主観(個人の意見)に異論はありません。けれども裁判所命令は、常に信頼に足る客観(社会の意見)でなければならないのです。

 ですから、例えば「絶対君主」の配偶者に虐げられていたような国際離婚案件は、早いタイミングで裁判を検討する必要があるかもしれません。

 裁判の必要性を見極め、それに挑むクライアントの勇気をサポートすることも弁護士の役割です。

 「国際離婚の離婚裁判」をはじめとする家族の問題は、家族法を専門とする2名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍するネイソンズ・シーゲル弁護士事務所にお任せください。

 リモート相談は、次の手順で行っております。

  1. hnoguchi@nathenssiegel.com(野口)宛に相談内容をお知らせください。
  2. 当事者おふたりのフルネームと相談者の写真付きIDをお願いします。
  3. 相手方が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認します(弁護士協会の規定により、相手方が過去の顧客であった場合には相談に応じられません)。
  4. オンライン・ミーティングの日時候補をお知らせします。
  5. 面談日時をお選びいただいた後、オンライン・ミーティング(Zoom)リンクをお送りします。
  6. 初回面談への野口の同席は無料です。面談時に野口から今後の流れを含む詳細を説明します。

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。