【第23回】国際離婚 お金と復讐|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

お金が全て?全てはお金?

 離婚に瀕する夫婦の多くは「お金で愛情は買えないけれど、お金で復讐はできる」と思い込んでいるように思えます。社会的にも経済的にも成功している人々が、復讐心に燃えお金に執着する姿は、哀れですらあります。

 こう話すのは、離婚案件の調停員・審判員でもあり、不動産鑑定士として離婚によって自宅を売却することになった4千組以上の夫婦を見てきたエキスパートです。

 今回は、このエキスパート不動産鑑定士による「離婚におけるお金と感情の関係性」を紹介します。

お金のためにお金を使うというジレンマ

 離婚にまつわるお金の問題は、家族法でその解決法が定められており厳格なルールが適用されます。しかし、これは当事者双方が、正確な経済の完全開示を行い、宣誓供述書でその内容に偽りのないことを誓ったファイナンシャル・ステートメントが存在することを前提とします。

 けれども当事者一方が、相手方が収入をごまかしていたり、財産を隠していたりする可能性を疑う場合、両親からの金銭的援助が贈与かローンかを争う場合など、裁判所の判断を仰がなければならない案件は後を絶ちません。

 裁判は、弁護士のみならず、ビジネス鑑定士や会計士など大勢の専門職を巻き込むため、その費用は大変高額になります。しかし、当事者双方に復讐心や執着心を捨てて金銭問題の解決に向かう決意があるなら、裁判に伴う精神的、経済的負担を軽減することができます。

裁判の代わりに

 離婚問題において、お金は最も重要なポイントの一つです。金銭問題と感情を切り離すことで、不必要な争いを避け、冷静に金銭問題に取り組むことができるはずです。

 それにはまず、正確に自分の経済状況を開示することが必要です。また、資金源がだれであろうと夫婦が暮らした自宅の権利は夫婦が平等に有します。

 離婚当事者らがこのような法律を理解していることはまれですが、有能な弁護士は、その知識や経験を駆使して、当事者が裁判に至ることのないよう全力を尽くします。

 それぞれのケースの争点に関する専門知識を持つ調停員を介したミディエーションも、有効なオプションです。

例えば、自宅の売却

 離婚問題の早期解決の一例として、夫婦が長年暮らした自宅について考えてみましょう。自宅から感情を省くことができたなら、離婚に関するお金の話し合いはとても楽になります。

 離婚することになったら、遅かれ早かれ自宅は売却しなければなりません。自宅の価値や権利について争っている間も、維持費はかかります。最も公平でシンプルな方法は、第三者への売却です。夫婦のどちらかが相手の持分を買い取るという方法もありますが、その値段についてほぼ間違いなく争うことになります。

 自宅は、多くの夫婦にとって最も価値のある資産です。その資産利益を最大限に活用するには、即売却が最適です。たとえ多額のローンが残っている場合でも、最短で売却することによって、損失が最小に抑えられます。

経験者の立場から

 過去に複雑な離婚を経験した人々の話を聞くと、たいてい「感情に焚き付けられ時間を無駄にしてしまった」という返事が返ってきます。

 実は私自身も離婚を経験していますが、私がこだわったのは、子供たちへの愛情でした。配偶者が良い母親であることに疑いはなかったので、互いが「離婚する夫婦であること」よりも「子供の両親であること」に意識を注ぎました。

 我々夫婦は金銭的に複雑な問題も抱えていたので、それぞれが弁護士と会計士を雇うための費用は発生しました。しかしこの専門家たちに対し、和解に向けて動くよう一貫して指示した結果、大きな節約につながりました。

 しかも、冷静かつビジネスライクな離婚プロセスを通して、我々元夫婦の間に予想だにしなかった友情が生まれました。そしてそれはもちろん、子供たちの心の安定に大きく貢献することになったのです。

 離婚は、感情的な出来事です。しかし弁護士をはじめとする専門家は、離婚にまつわる、いかんともしがたい感情をコントロールするお手伝いをします。離婚に関するご相談は、日本語でのサポートが一貫して受けられるネイソンズ、シーゲル法律事務所にお問い合わせください。次の手順でリモート相談を行っております。

hnoguchi@nathenssiegel.com (野口)宛に日本語でメール
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顧客名簿を検索し、お相手が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認後、オンライン(zoom)面談の日時決定
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面談の後は、メールなどで日本語での打ち合わせ

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。