国際結婚しカナダで生活する日本人女性が離婚を考える時、最大の不安はお金のことでしょう。しかし、養育費と配偶者サポートの値に関する法的指導が徹底しているカナダでは、容易に解決できるはずです。州法で定められた養育費ガイドラインと配偶者サポート・アドバイザリー・ガイドラインは、当事者双方が年収などの経済状況の完全開示を行うことで、お金の問題をクリアするためのツールです。しかし理論と実践は必ずしも同じではありません。
そこで今回は、養育費や配偶者サポートの基本的な考え方とその計算に欠かせない年収の割り出し方についてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。
サポート・ガイドラインと年収
養育費ガイドラインは、支払側の年収と子供の数を基に定められています。年収を縦軸に子の数を横軸にしたチャートによって、別居後に支払われる養育費を簡単に知ることができます。
共同親権で子がそれぞれの親と50%づつ生活する場合、それぞれの年収から割り出した養育費の差額を年収の低い親が受け取ります。
配偶者サポートについても、年収と婚姻(同居)年数、養育すべき子供の有無などを考慮した値が、カナダ政府によって示唆されています。州法によって別途配偶者サポートの指針を定めている州もあります。
配偶者サポートは、ガイドラインが確立した養育費の値と異なりその扱いが複雑ですので、必ず弁護士のアドバイスを受けてください。
年収開示の重要性
別居後に受け取る(あるいは支払う)養育費と配偶者サポートの値が、当事者双方の年収で決まることを知れば、年収が完全開示されないまま同意した値が公正ではないことも納得できるでしょう。それどころか経済開示のないまま署名された同意書は、ただの紙切れとなる危険をはらんでいます。
別居の際に作成される同意書(セパレーション・アグリーメント)には、別居前三年間の年収証明であるインカム・タックス・リターン(ITR)とそれを税務署が受理したことを示すノーティス・オブ・アセスメント(NOA)を含むファイナンシャル・ステートメントを添付しなければなりません。年収や財産などの完全開示を証明するこの宣誓供述書がなければ、せっかく作成した同意書に法的執行力を与えることができないのです。
申告年収vs.実年収
納税申告に用いられる年収は、自己申告したものです。雇用収入のみの場合、雇用主が発行するT4という書類で正確な年収が把握できます。では自営業などの場合の申告額と実際の所得のギャップはどのように埋めてゆくのでしょう。
家庭裁判所は、事業所得に関して専門家による査定を重視します。事業査定に必要な時間やコストを節約し話し合いで解決するため、当事者がその費用を折半し簡易査定を行う場合もあります。
しかし、裁判に至るような案件の場合、通常、専門家二名が査定書を提出します。当事者のどちらかの意見を反映する不正確な事業査定を防ぎ、公正で客観的な査定を得るため、専門家は「裁判でのエキスパート・デューティに同意する旨」に署名した上で、査定書を提出しなければなりません。
このように自営業や事業所得者であってもより正確な年収を割り出すことが可能です。「相手の申告年収が低いから養育費は期待できない」と思っている方への朗報ではないでしょうか。
養育費や配偶者サポートに関するご相談は、日本語でのサポートが一貫して受けられるネイソンズ、シーゲル法律事務所にお問い合わせください。次の手順でリモート相談を行っております。
↓
おふたりのフルネームと相談内容を明記
↓
顧客名簿を検索し、お相手が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認後、オンライン(zoom)面談の日時決定
↓
面談の後は、メールなどで日本語での打ち合わせ

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)
日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.
ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。