【第18回】ハーグ条約と共同親権|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

【第18回】ハーグ条約と共同親権|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 国際結婚でカナダに移住するなら、ハーグ条約についての理解を深めることが大切です。ここでのハーグ条約とは、両親が別居した場合、その親権など子に関する取り決めは「別居の時点で子が両親と暮らしていた国の法律によって決められる」とする国際条約のことです。

 カナダで結婚した日本人が、別居時にもカナダで暮らしていたなら、その法手続は、カナダの法律で進めることになります。特にカナダの親権制度は日本のそれと大きく異なるので要注意です。

 そこで、今回はハーグ条約とカナダの共同親権制度についてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。

カナダの親権

 日本でもカナダでも、両親が離婚する場合、まず子供の親権者を決めなければなりません。日本では、親権者欄にそれぞれの子の親権者名を記入した離婚届の受理によって子供の親権者が決まります。これを単独親権と呼びます。

 一方カナダでは、離婚後も父母双方が親権を持つことが定着しています。これが共同親権です。離婚後も「子に関する重要な決定を下す権利」と「子が健やかに育つための養育義務」が、父と母の双方に与えられるのです。

共同親権における親子交流

 夫婦が婚姻を解消する際に、まず協議されることが、子供の親権や面会交流のスケジュールです。後に裁判所に離婚を申請する際にも、親権やそれぞれの親が子と過ごす時間の決定は、離婚が受理されるための必須条件となります。

 親権を持たない親が子と会えるのは、多くても月に一回という日本の面会交流の現状を知る人は、カナダでの離婚後の親子交流のあり方を知ると目を丸くするかもしれません。

 ここで、カナダで年々増えている50/50共同親権のうち、代表的なスケジュールを紹介しておきましょう。

3-4-4-3 スケジュールの例

Week1: 日曜15時から水曜15時まで  お父さん(3日間)
    水曜15時から日曜15時まで  お母さん(4日間)
Week2: 日曜15時から木曜15時まで  お父さん(4日間)
    木曜15時から日曜15時まで  お母さん(3日間)

 3-4-4-3スケジュールは、一方の親が積極的なお稽古事などに決まった曜日に通わせることができるという利点があります。「火曜日はお父さんとアイスホッケー」「土曜日はお母さんと日本語学校」という具合です。

 この他にも、子供が一週おきにどちらかの親と週末をフルに過ごせる2-2-5-5スケジュールもよく検討されます。

2-2-5-5 スケジュールの例

Week1: 月曜15時から水曜15時まで  お父さん(2日間)
    水曜15時から金曜15時まで  お母さん(2日間)
Week2: 金曜15時から水曜15時まで  お父さん(5日間)
    水曜15時から月曜15時まで  お母さん(5日間)

ハーグ条約と面会交流権の関連性

 カナダにおける全ての離婚で共同親権が採用されるわけではありません。まず、一方の親が親権を求めない場合、親権を求める親のみが親権者となります。また、子に対する暴力などを理由に一方の親に親権が与えられないケースもあります。しかし、これら親権を持たない親にも、子との面会交流権が認められるのが一般的です。

 実は、面会交流権は、バーグ条約と強い結びつきがあります。単独親権を得て子供と日本に帰りたいと願っても、親権を持たないもう一方の親の許可なくこれが実現しないのは、「単独親権を持つ親が、子と遠方に引っ越してしまうことで、親権を持たない親の面会交流権が侵害される」という理由によります。

 そしてこれこそが、もう一方の親の許可なく子と国境を超えた親が誘拐犯として手配されかねない理由なのです。

セパレーション・アグリーメント

 共同親権が大変窮屈なものである印象を受けたかもしれませんが、夏休みなど長期休暇に関しては特別なスケジュールが可能です。日本を含む海外旅行についての決め事をセパレーション・アグリーメントで詳細に決めておくことで、親子で数週間日本へ出かけ、祖父母や日本の家族と過ごす時間を確保することもできるでしょう。

 セパレーション・アグリーメントに関するご相談は、日本語でフルサポートが受けられるネイソンズ、シーゲル法律事務所にお問い合わせください。ファミリーローを専門とするエキスパート弁護士らのアドバイスの下、根気よく協議を続けることで、裁判を最大限に避け、納得できる解決を目指します。

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。