宇宙開発を担う政府機関 「カナダ宇宙庁」の取り組み|見えざる世界に今年大注目!宇宙特集

宇宙開発を担う政府機関 「カナダ宇宙庁」の取り組み|見えざる世界に今年大注目!宇宙特集

 カナダには宇宙開発を担う政府機関があり、「カナダ宇宙庁=Canadian Space Agency(CSA)」と呼ばれている。カナダ宇宙庁は宇宙科学を用いて宇宙への理解促進、宇宙科学と技術がカナダ国民に対して、社会的・経済的な利益を促すことを目標に1989年3月に設立された。1996年にはジョンH.チャップマンスペースセンターを本部と認定、現在では約670人の職員の9割がここで働いている。

トップ11

 宇宙関連の施設は、世界に国立と私立を合わせて70以上あるとされる。これまでの成果や技術、予算などを考慮・調査された「RankRed」のランキングによると、カナダはトップ11に位置している(2018年現在)。

 カナダ宇宙庁はこれまで研究・テクノロジー・専門知識など世界中の宇宙への取り組みに貢献してきている。特に「NASA(National Aeronautics and Space Administration)」と「ESA(European Space Agency)」との交流が深い。

 また、カナダ宇宙庁にはロケットを上層大気までしか打ち上げる技術がなく、アメリカやロシア、そしてインドに頼らざるを得ない状況だが、現在カナダ産のロケット発射装置作りに取り組んでおり、カナダのロケットの打ち上げも期待されている。

初の女性宇宙庁長官

 2020年9月、カナダの宇宙庁長官に女性として初めて、リサ・キャンベル氏が就任した。キャンベル氏は、マギル大学で政治学を学び、その後ダルハウジー(Dalhousie Law School)法律学校を卒業している。卒業後は、刑事訴訟、雇用関連訴訟、憲法訴訟を専門とする弁護士となり、その後、カナダ退役軍人局の副大臣となった。そして、防衛および海軍の調達局の副大臣となり、カナダの軍人と海軍の設備調達へ取り組んだ。

主に取り組んでいる3つの分野


 カナダ宇宙庁は、科学に基づいた宇宙知識の発展とそこから得た発見を用いて、カナダ国民と全人類への発展を全うする責務を担っている。

1.宇宙探索

  • 宇宙飛行士ミッションへの参加
  • 天文学と惑星の研究
  • 宇宙科学の研究

2.宇宙利用

衛星による地球観察・宇宙データの収集

3.宇宙科学とテクノロジー

革新的な宇宙テクノロジーと応用の開発

カナダの宇宙飛行士の歴史

 これまでにカナダ宇宙庁は4回の募集で14人の宇宙飛行士を採用してきた。そのうちの9人は17の宇宙ミッションに選ばれている。採用基準は学問、これまでの専門経験、健康、コミュニケーション能力で選ばれているという。1回目の1983年の募集では6人が採用、2回目の1992年では先日辞任したカナダ総督も含め4人が採用、3回目の2008年では2人採用、直近の募集は2016年で2人が採用されている。

 現在カナダには宇宙飛行士が4名おり、その中でも3回目の募集で採用されたデイビッド・セントジャックス氏は204日というカナダ宇宙飛行士の中で連続宇宙滞在の最長記録を保持しいている。

 退役後は講演を行っていたり、医療分野や科学分野に貢献をしている。主にNASAで働いている人が多いが、定期的にカナダに帰国し、若い世代へ啓蒙活動なども行っている。

Canadarm(カナダアーム)

 「カナダアーム」はカナダで最も有名なロボット技術であり、1981年11月13日にスペースシャトル・コロンビア号(STS-2)のミッションで宇宙デビューした。「カナダ人の握手」という異名をもち、CSAとNASAの宇宙飛行ミッションに関する協力的な活動を深めるきっかけとなった。

 「カナダアーム」は30年という年月をかけ素晴らしい実績を残し、ミッションSTS-135で90回目の飛行を終え引退した。その功績は多くの新しい宇宙技術の基盤となった。現在、宇宙ステーションには「カナダアーム2」が装備されているほか、AI型の「カナダアーム3」の開発も取り組まれている。「カナダアーム3」は2024年に計画されている宇宙ステーション「Lunar Gateway」に搭載される予定だ。