思春期をカナダで過ごした青年が日本とカナダで働いて感じていること – Shoheiさんインタビュー|特集「カナダライフのヒント6人のストーリー」

父親の仕事の関係で高校から大学までバンクーバーで過ごし、新卒で日本に戻りコンサル業界や消費財メーカーで数年勤務。思春期をカナダで過ごした経験から日本で生活している時はカナダの方が合っているんじゃないかと思いつつ、日本でのキャリアを捨てるのも賢明でない気がしてずっと悩んでいたという。しかし、この先何歳になっても悩み続けるだろうと考え、ワーホリビザの年齢制限でカナダに戻りデータ分析の経験を活かしてテック企業に就職し永住権を取得。その後はコロナ禍で解雇にあい、今年からテック系スタートアップでProduct Managerとして勤務。

 今回は日本そしてカナダで育ち、両国で働く経験から感じる違いなどを語ってもらった。

日本は窮屈、カナダは自由

 カナダに来て良かったのは、覚悟をもって努力をすれば、自分が好きなように生きることができることだと思います。日本だと「○○なんだから、○○すべき」とか固定概念だらけで疲れてしまうかもしれませんが、カナダはあまりそういったことは無いので、好きなように生きたい人には気が楽だと思います。

日本は安心して暮らせる国、カナダはお金がかかるし有事の時は疲れる

 日本は便利で安全、手ごろな値段で美味しい食べ物もあるし、社会インフラも整っているので働く必要がなければ最高の国だと思います。カナダは家具の配達でも時間通りに来なかったり、基盤を作るときに結構疲れる印象です。

日本は我慢、カナダは自己肯定の国

 日本だと不幸せなことや不便をどうやって受け入れて、我慢していくかの方に精神がいく反面、カナダはどう生きたいかに重点をおいて生きることが大事なので、会話をしていても 「そんなの無理だよ」といった意見よりも「凄いね、頑張って」と応援してくれます。

日本は少しコンプレックス気味?カナダは自惚れ傾向?

 日本は自分の国の将来などにえらく否定的なのに海外の人に褒められたいみたいな屈折した感じですが、カナダ人は自分の国は地球上で一番だと考えている人が多いと思います。よく医療問題でアメリカと比較して「破産することは無いし素晴らしい医療精度だ」とかいう人がいますが、時間とお金のトレードオフなだけであって、命に別条の無い大きな手術はかなり待たされますし、歯科医療は国の保険ではカバーされません。

カナダは国としては移民を積極的に受け入れているがその後の手当ては薄い

 カナダは最近は移民審査の点数を大幅に引き下げたり、移民を積極的に受け入れていますがその後の就活などは苦労しがちです。まず第一にカナダで職場経験(Canadian Experience)が無いと敬遠される傾向があります。母国でPhDを持っていてもその専門領域を活かせる産業がカナダにないために、Uberの配達員をされている方の話をよく聞きます。テクノロジー業界だと、例えばエンジニアの方はGithubなど自分の力量を見せるポートフォリオがあるのは優位だと思います。日本の総合職のように専門性が無い職種で経験をついていると、見せられるものが無いので難航しがちです。あとカナダではネットワーキングが重要なのでトロントのテック業界だと、TechTOやMeetupなどで人と会って、地道に就職口を見つける必要があります。ただそうは言っても、日本人は仕事が丁寧という印象ですし、総合的な能力は日本で経験した人ほど強いと思っています。

日本は肩書主義、カナダは言ったもん勝ち

 面接では日本だと肩書き、出身校、所属部署から面接官が勝手にいろいろと想定してくれますが、カナダでは「Story Telling」が重要でどれだけ自分が企業にとって価値がある人材かをアピールする必要があります。なので経歴を大げさに言ったりする人もいます。あと、給料交渉も候補者次第です。これはTipsなんですが面接で希望給与を聞かれたら、絶対に自分から具体的な数字を言ってはダメです。

日本の会社は石橋を叩いて渡る、カナダはとりあえず進める

 日本は前例を重視して滞りなく案件が進むことを重視するために、意思決定に凄い時間がかかる印象ですが、カナダは見当違いな方向でもとりあえず進めて軌道修正を繰り返して結果的に案件が前に進んでいる印象です。これはアメリカだともっと顕著な印象です。日本だと会議は意思決定ではなく報告会のような印象がありますが、カナダだと時間を設けてどんどん決定していきます。あと日本では物事を正しく行うことに重点がおかれますが、カナダは物事をすすめる意味、ゴールを確認してテキパキと決断する印象です。

日本では文系の専攻でも配属しだいでテック人材になれるが、カナダではそれ相応の経験を求められる

 DXなんて言葉が流行っていますが、日本はいまだにテクノロジーをどう活用していくか目的がないまま開発を進めて、納期が伸びたりなんて話をよく聞きます。カナダではテック業界は比較的給与も高いので人気が高く、大学の専攻が関連していない場合は短期集中型のブートキャンプに参加してData Science、Digital Marketing、UX Designなどの職種に就職される方が多いと思います。

カナダの労働市場は解雇リスクが高いので能力開発に積極的

 エンジニアの人は週末はフリーランスとして働いたりサイドプロジェクトを持っている人が多いです。職種を変更したい場合は、パートタイムでコースを取ったり在職中に興味のある職種の仕事に参加させてもらって徐々に軌道修正をしています。

Shoheiさん
出身地:東京

カナダの魅力

 自然が美しく、充実しているカナダ。私が住んでいるバンクーバーは冬でも比較的温暖な気候で、山と海がどちらも一緒に楽しめるのがすごく幸せだと思います。 様々なバックグラウンドをもつ人々が共存していて、そのため留学生に対してもウェルカムでフレンドリーなのでとても良い環境です。

お気に入りの場所:

Sheldon Lookout
 川とか海が好きなので、ここの岩場からダウンタウンを眺めながら、波の音を聞いてぼーっとしてるのが好きです。ハミルトンあたりまで続いている散歩コースがあって、夏場とかは気持ちがいいです。

Scotiabank Area
 トロントラプターズの本拠地です。今は渡邊雄太選手が活躍されてますね。バスケットボールの観戦が好きなので、パンデミックが落ち着き、早くスタジアムで応援に行けるようになりたいですね。

St Lawrence Market
 100以上の小さな商店がドーム型の施設に集まっていて、夏になるとFarmers Marketが開催されたりするので楽しいです。

いまのハッピー度

 現在のハッピー度は80%です。単純に今の現状の不満を見つけ出すとそればっかり目がいって不幸になりそうですし、100%だと努力しなくなりそうなので。

死ぬまでカナダに住みたい?

 あまりそこまで先を考えたことはありません。身体が不自由なく働けている内はカナダで働きたいなと考えています。でもアメリカの方がテック業界は給料が良いですし、将来的に医療とか老後のこととか考えると、日本に帰る可能性も考えたりもします。