2020年、大麻企業は更に資本危機に直面することに|カナダから見るマリファナ合法化のあと

カナダの大麻事情①
ケベック州、大麻購入の法定年齢を21歳に引き上げる大麻法を可決

 世界中の国が大麻合法化へと舵を切っている中、ケベック州は後ろ向きの姿勢を見せている。去年7月24日、ケベック州政府はキャンディー、デザート、大麻配合チョコレートなどの未成年者に魅力的に見える食用大麻製品を禁止することを発表した。7月25日のプレスリリースにて、ケベックの大麻産業協会はこの規制を非難し、その声明では規制が産業界との協議や経済的影響の分析なしに作成されていると述べた。

 また、11月11日、ケベック州政府によって可決された法律はケベック州での大麻の購入、または所持の法定年齢を21歳に引き上げた。

 大麻の購入と所持が18歳から許可されているアルバータ州を除いて、カナダでは大麻購入と所持は19歳から許可されているが、新規制により、ケベック州の法定年齢はカナダで最高となった。

 この規則は21歳未満の人は大麻を所有することは全面的に禁止されることを意味し、21歳未満の者の大麻所持・購入が見つかった場合には、最高100ドルの罰金が科せられる。

 州の保健大臣であるライオネル・カーマントは、この新しい大麻法の目的について、政府の優先事項に関する「明確なメッセージ」を送ることだとCBCに述べた。「10代の若者を保護したい」と彼は述べ、年齢制限の引き上げはケベック人の大部分の支持を得ているとも付け加えた。しかし、この年齢制限を引き上げる法律はケベック州の医療専門家、業界団体、ジャスティン・トルドー首相から批判を受けている。

 一部のモントリオール在住の若者達は、この法律が不公平であり、彼らを落胆させるものであると述べている。ドーソン大学の学生であるミア・ジョドコフスキーは、「アルコール消費の法定年齢を18歳に維持し、大麻消費のために引き上げることは無意味」であるとCBCに述べた。「大麻がアルコールよりも有害なものとして分類することは公平ではなく、科学的にも正確ではない。可決は間違ったメッセージを人々に送っていると思う」と意見を述べた。

 野党ケベック・ソリデールのスポークスマンであるガブリエル・ナドー=デュボア氏は、この法律が若者を差別し、科学に裏付けられていないものだと述べた。また、ケベック州では18歳から投票できるにも関わらず、彼らが大麻を購入するかどうか決定できないという現状を批判した。

カナダの大麻事情②
オンタリオ州、1月に大麻「2.0」製品の販売を開始

 大麻規制の変更により、オンタリオ州は大麻「2.0」製品の合法的な販売を1月6日から開始した。新規制は大麻入りのグミやケーキ、チョコレートといった加工食品やドリンク、大麻の有効成分を抽出したヴェポライザー用のリキッドやオイル、大麻サプリメントなどを合法化するものである。

 また、主要な精神活性成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)を10ミリグラム以上含む大麻入り食品の販売は禁止されており、大麻抽出物と局所麻酔用大麻については、1個包装当たり1000ミリグラムが最高含有量とされる。世界最大の会計事務所のデロイトは、大麻入り製品の合法化により27億カナダドル(約2230億円)の年間売り上げが見込めると試算している。

 期待が高まる「大麻合法化2.0」だが、グローバル・ニュースの報道によると、小売業者のほとんどは開始日の1月6日にソフトチュー、クッキー、チョコレートを含む59の大麻入り食品製品の最初の出荷をまだ受け取っていなかったそうだ。

 オンタリオ州の大麻販売業者、「オンタリオ・カンナビス・ストア」のスポークスマンのダフィッド・ロデリック氏は、GTA外の小売店は1月6日時点で受け取っているとも説明したが、遅れが見られていることを述べた。また、大麻入り食品の供給が不足していることを述べ、一部の製品がすぐに売り切れる可能性があると警告し、今後の数ヶ月で迅速に製品を補充し、より多くの製品を展開することを望んでいるとも説明した。大麻入り食品製品は1月16日からオンラインで販売され、食品製品の価格帯はおよそ7ドルから14ドル、飲料は4ドルから​​10ドルとなる。

 医療関係者等は大麻入り食品の合法化に関して、健康上の考慮事項を警告している。大麻入り食品は、一般的に大麻の吸引よりも安全な代替品とみなされているが、アルコール、睡眠薬、オピオイドなどの他の薬物と一緒に服用すると妄想などの相互作用が起こす可能性があると彼らは説明している。

 大麻入り食品は、最長で約8時間に渡る「ハイ」な効果を服用者に与え、その効果は喫煙による大麻吸引よりも強い。トロント大学の医師によると大麻入り食品の効果はすぐには現れないため、服用者が食べ過ぎてしまうという過剰摂取のリスクが高い。大麻入り食品に慣れていない消費者には、THC量わずか2.5ミリグラム以下の大麻入り食品が推奨されている。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部