新たに米ニューヨーク州でも大麻合法化の動きが活発化。カナダの平均価格は17%増|カナダから見るマリファナ合法化のあと

カナダの大麻事情
Shoppers Drug Martがオンラインサイトで医療用大麻の販売を開始

 1月8日より、カナダの大手チェーンドラッグストア、Shopper Drug Martの医療用大麻販売のオンラインサイトが立ち上がった。Health Canadaが同企業に医療用大麻販売の許可を授与してから約一ヶ月後のローンチとなる。誰でも大麻商品情報の回覧が可能だが、オンタリオ州の患者のみへの販売が許可されている。大麻を購入する患者は処方箋、あるいは医療診断書をオンタリオ州の薬局に持参することで、オンラインサイトからの購入プロセスを開始することができる。その後、専門家のアドバイザーが患者の医療履歴を調査し患者に連絡を取り、オンライン上の登録と商品の選択をサポートするという流れになっている。Shoppers Drug Martは、現時点では政府から許可を受けた10の大麻生産者と契約を結んでおり、乾燥大麻とカンナビスオイル、そして医療用大麻関連の商品を販売すると述べている。

カナダの大麻事情
合法化後、大麻の平均価格は17%増加―闇市場への依存は継続となるか

 嗜好用大麻の合法後数週間で合法大麻の在庫が底をつき、主にオンタリオ州とケベック州で不満の声が挙がっていたカナダ。大麻生産者により在庫不足は今後数カ月ではなく、数年続く可能性もあると指摘されてきたが、この問題に対して、12月にトルドー首相はモントリオールのラジオCHOMにて「在庫不足は数カ月以内に解消されるだろう」と 述べ、「まだ少し時間が掛かるが、軌道修正している」と言及。合法大麻の在庫不足の原因として、地方の警察が合法化への抵抗を示していたこと、そして大麻合法化に反対する市政が意図的に配給を遅らせようとしていたということについても述べた。


 トルドー首相の今後の動向に注目だが、1月9日に発表されたカナダ統計のデータによれば、嗜好用大麻合法後にカナダ国内の大麻1グラムあたりの平均価格は、17%上がっていることが分かった。同データによると、大麻合法化以前は1グラムあたり$6.83カナダドルだったところ、10月17日の合法化以降は$8.02カナダドルへと上がっている。さらに、同調査によって合法化後も大麻使用者の約半分が闇市場で大麻を入手していることが分かっており、在庫不足もしかり、闇市場の方が断然低価格で入手できることも大きな原因である。

 カナダ市民は一回の購入につき闇市場で平均17.2グラムを入手しており、合法大麻の場合は違法大麻と比較して高価格な為、平均8.3グラムと下回る。

 また、女性と比較し、男性の方がより多量の大麻を購入しており、女性の方が違法大麻を購入する傾向にあるそうだ。大麻合法化前から使用者の闇市場依存継続は懸念されていたが、合法後もまだまだ依存から抜け出せない現状が続くようだ。

世界情勢
韓国に続き、タイは医療大麻合法化へ

 12月25日、タイの立法府が臨時国会において、医療用大麻とタイで痛み止めや薬物中毒に治療に古くから民間療法として使われてきたクラトムを合法化する改正案を可決した。166対0の圧倒的な賛成となり、アジアでは二カ国目、東南アジアでは初めて医療用大麻合法化に踏み切った国となる。


 長年麻薬の輸送拠点であるタイは、これまで大麻密売を厳しく罰し、10年程前には違法薬物取り締まりキャンペーンを行い、2500人以上の密売人が当局により殺害されていた。厳しい取り締まりが行われていたタイだが、一方で 仏教徒が大多数な為、長らく大麻の医療使用が容認されていた面もあり、以前から政府当局が麻薬関連法改定の必要性に関して機論していた。その為、今回の医療用大麻の合法化は大きな方針の転換となる。法案は、「近年の医学研究で医療用大麻が患者へ多くの利点をもたらすことが分かっており、その研究結果は数多くの国に市民が合法的に医療用大麻の恩英を受けられるよう、法律の修正を促してきた」と言及している。タイの麻薬統制局のSirinya Sitdhichai長官は1月16日より、医療用大麻とクラトムの生産、輸入、輸出、所持と使用が合法化されると述べており、医師の処方の下で入手可能になる。ただし、自家栽培は禁止されており、生産者にはライセンス所持が求められる。そして、嗜好用大麻の使用はまだタイで違法であり、所持量によっては投獄、または罰金の支払いを求められる。ツーリズムが盛んなタイだが、今後、医療用大麻の使用を含むエンターテインメンが伸流されることが見込まれる。

世界情勢
米ニューヨーク州、年内に嗜好用大麻合法化を目指すと発表

 医療用大麻は合法化されていたが、公共の場における大麻所持が違法としてきたニューヨーク州。去年5月、ニューヨークのボル・デブラシオ市長はニューヨーク市警に大麻吸引者への処罰を軽犯罪と扱うよう指示を出していたが、去年12月17日にニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、嗜好用大麻使用の合法化を2019年中に立法上の最優先課題として行うと発表した。合法化によって生まれる大麻の市場規模は、約1900億~3900億円と同州の試算で見込まれており、ニューヨーク州の今後の動きに注目である。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部