2022年総まとめ カナダ ニュース・ハイライト|特集「MY TORONTO 2023」

2022年のカナダも色々なことが起きました。パンデミックからアフターコロナへと移り変わり、日常生活が一気に戻った2022年を総おさらい。コロナ関連からライフスタイルに関係するニュースまで私たちのカナダ生活のまとめ情報としてお役立てください。

NEWS 01
北京冬季オリンピック・パラリンピックが開催

 2月、北京で冬季オリンピックが開催された。今回のオリンピック開催国の中国国内で人権侵害があることが指摘され、カナダ含めアメリカ、イギリス、オーストラリアなどが政府代表団を派遣しない「外交ボイコット」を行なった。開催前からトラブルが相次ぐ中、カナダからは215人の選手が参加。世界で4番目に多い26個のメダルを獲得した。パラリンピックでも48人が参加。25個のメダルを獲得し、カナダは両大会で好成績を残した。今年のチームカナダの公式ウェアをデザインしたのはバンクーバー発のアパレルブランド、「lululemon athletica(ルルレモン・アスレティカ)」。2028年にロサンゼルスで開催される夏季オリンピックまでの4大会で着用する公式ウェアを制作することが決まっている。

記者コメント
 ルルレモンはアスレジャーファッションの最先端ブランドとして有名ですよね。しかしあの社名の由来は日本人にとってアルファベットの「L」の発音が難しいことをからかっているのはご存知ですか?アジア人が多いカナダでそのような発言をした起業家が成功しているのは残念。その上商品の機能性がいいのは悔しい話ですね。

NEWS 02
オタワでトラック運転手らがワクチン義務化に対して抗議デモ

 ちょうど北京オリンピックが行われていた2月、カナダの首都オタワではトラック運転者らによる大きな抗議デモが行われていた。1月15日にカナダ政府がアメリカとの国境を行き来するトラック運転手らに新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付けした。ワクチンを接種しない者には14日間の隔離期間を要請。それが引き金となり、トラック運転者らは自分らだけでなく全ての人へのワクチン義務化を取り消すよう抗議し始めた。このデモ活動には「Freedom Convoy(自由の車列)」という名前がつき、抗議者らは自らの車やバイクにカナダ国旗をはためかせ、メガホンをとり反ワクチンのメッセージを世に送った。2月11日オタワが緊急事態宣言を出したにも関わらず、一年を通してカナダ中で抗議者らが道路を乗っ取る姿が見られた。

記者コメント
 筆者が子供と街を歩いている際、デモ参加者が近寄ってきて「マスクをさせるな!」と説教されることが何回かありました。個人的に抗議するのはその人の自由だと思いますが、抗議しない人をそっとしておくべきだと思います。それにしてもカナダのデモはアメリカに比べて全体的に安全で平和で驚きました。

NEWS 03
コロナ対策が次々解除に

 2022年カナダで見られた一番大きな変化は学校や公共交通機関でマスク着用義務がなくなったことではないだろうか。年の初め、世界中でオミクロン株が流行り感染者が急増していた。カナダもその影響を受けたにも関わらず、コロナ対策の数々が緩和される動きが見られた。1月下旬、ケベック州では10時以降の外出制限がなくなり、日曜日の閉店を強いられていた店頭では営業再開が認められた。同時期、オンタリオ州ではレストランやバー、ショッピングモールや映画館などの娯楽施設に入るためのワクチンパスポートの提示義務がなくなったとともに人数規制も緩和された。3月下旬にはオンタリオ州で学校を含む屋内でのマスク着用義務が解除。6月上旬には公共交通機関でもマスク着用は必要でなくなった。

記者コメント
 日本でもコロナの水際対策が緩和され、外国人の入国制限がなくなりましたね。カナダも10月に入国する全ての旅行者に対してワクチン義務、入国前のコロナ検査、ArriveCAN(入国のための情報提出アプリ)提出義務などがなくなりました。旅行がしやすくなって楽しみが増えましたね。日本に一時帰国を計画された方も多いのでは?

NEWS 04
Ryerson UniversityがToronto Metropolitan Universityに改名

 4月、Yonge-Dundas Squareにキャンパスを構えるRyerson Universityが改名。元は教育者でメソジスト牧師のEgerton Ryersonにちなんで名付けられた。彼の著書や発言が先住民族の寄宿学校創立とその教育方針に使われたことが問題視されていた。139校も建てられた学校では白人らの日常的な暴力や虐待で何百人もの死者が出た。2021年6月に子供たちの遺骨発見の報道があった後、抗議者らはキャンパス内にあったライアーソンの銅像にペンキを塗ったり、押し倒したりと学校名見直しへ圧力をかけた。同年8月、彼の名を学校名から外すことを大学役員会が同意。2,600もの候補から「大都市にある」という意味とトロントの多様性を象徴するToronto Metropolitan Universityが選ばれた。

記者コメント
 2021年の7月にはトロント市議会がDundas Streetの改名に合意しました。名前の由来は奴隷制度廃止を遅らせたことで知られる政治家のヘンリー・ダンダス。Dundas Streetの改名は時間もお金も半端なくかかるだろうなと思います。有言実行を徹底したTMUに脱帽します。

NEWS 05
ユーコン準州で3万年前に存在したマンモスの化石を発見

 7月上旬、ユーコン準州のクロンダイクゴールドラッシュ国立史跡公園でミイラとなったマンモスの子供が発見された。発見したのは鉱山労働者。今まで見つかってきたマンモスの化石に比べて今回はとても完璧な状態で、皮膚、足の爪、毛、腸、食事だった草さえも残っている。このミイラは先住民族の長寿により「ヌン・チョ・ガ(Nun cho ga)」という名前がつけられた。意味は「大きな動物の赤ちゃん」。3万年前以上の氷河期に母親とはぐれたのち泥に足を奪われ死亡し、永久凍結層で凍ったと考えられている。近年ユーコンの永久凍結層からは5万7千年前にミイラ化したオオカミやカリブーの子どもが見つかっている。地球温暖化により解凍が進んでいることが発見ラッシュにつながっているそうだ。

記者コメント
 最近のニュースによると永久凍結土から大昔に存在したウイルスも見つかっています。温暖化が進むとそのウイルスが解凍されて、今までに見たことのなかった感染症が広まったりする可能性があるそう。ゾッとしますね。マンモスの発見はすごいと思いましたが、地球温暖化対策への取り組みにさらに関心が高まったニュースでした。

NEWS 06
3年ぶりにToronto Pride Paradeが開催

 6月下旬、3年ぶりにトロント・プライド・パレードが行われた。今年は初めてハイブリッドや電気自動車のフロートや、プラスチックゴミ削減を心がけたエコなパレードだった。カナダで同性愛行為が合法化されたのは1969年。ニューヨークのゲイバーでLGBTQ当事が警察の踏み込みに立ち向かった「ストーンウォールの反乱」のわずか一日前だった。トロント・プライドは1971年8月にピクニックとして始まった。2016年、Black Lives Matter Torontoはパレードの最中にPride Torontoの黒人LGBTQコミュニティーへの差別を抗議。平等な扱いを求めるほか、黒人にかつてから暴力的だった警察のパレード参加を認めないことを要請。そのため2017年以来警察は参加不可能となっている。

記者コメント
 Prideとは無関係ですが、私がトロントのフェスで一番感動したのは市が提供しているHTO To Goというトレイラー。車の両側に合計10個の蛇口がついていて、無料で飲料水を提供するサービス。これがあればマイボトルの水を補充できて便利!コップや犬のため水入れの用意もあるそう。さすがカナダ。

NEWS 07
カナダのアイスホッケー団体、性的暴行問題が明らかに

 アイスホッケーの国内統括団体「Hockey Canada(ホッケーカナダ)」は10月、性的暴行疑惑によりCEOのトッド・スミスと理事全員の辞任を発表。
 2018年当時ワールドジュニアチームに属していた8選手により集団レイプを受けた女性に団体は335万カナダドルの示談金を支払っていたことが今年5月に報道された。以来、不正な資金使用が問題となり、ジャスティン・トルドー首相は団体への資金拠出を停止。

 さらに7月には団体が1989年以来、性的暴行関連の9件で760万カナダドルを支払っていたことが役員の証言により判明。団体が示談用の秘密資金を2カ所に分けて持っていることも明らかになると、8月に会長が辞任した。そのポジションを受け継いだ次期会長のスミス氏も今回相次いで辞任することとなった。

記者コメント
 ジュニアチームやプロチームは子供たちや保護者の憧れで、彼らが団体に加入する際の資金も示談金に使われていたのは失礼に他ならない。スポーツ界に限らず映画界などでも問題になっている女性への性的暴行。女性側から始まった#metoo運動に頼らず、男性への教育や認識を高める運動も必要かと思います。

NEWS 08
ローマ教皇がカトリック教会による先住民の子供の虐待を謝罪

 今年7月、ローマ教皇フランシスコがカナダを訪問。その際、彼はかつてカトリック教会がカナダ中で運営していた寄宿学校にてスタッフから子供たちへ暴行があったことを認め、謝罪した。

 1870年から1996年にかけ139校あった寄宿学校は、カナダ政府の同化政策の一環として建てられた。学校では教師らは子供たちが民族の言語を喋るのを禁止し、容姿を変えるなど、先住民族文化を根本的に傷つけた。さらに食事を与えず、虐待や性的暴力も加えていた。

 2021年に寄宿学校跡地で何百もの遺骨が見つかっており、親元に帰れなかった子供たちの行方がわかるきっかけとなった。カトリック教会は組織的責任を認めていないものの、教皇の訪問と謝罪は先住民族との和解に向けて一歩進んだと前向きに捉えられた。

記者コメント
 アルゼンチンで生まれ育ち、バチカン市国及びカトリック教会のリーダーになったローマ教皇が、カナダで起きた汚行をどう考え謝罪に踏み切ったのか筆者は気になります。まだ生きている寄宿学校の牧師、修道女、スタッフなどは責任を取らないのか、と少し引っかかる疑問もあります。とても興味深いニュースです。

NEWS 09
先住民リーダーらが先住民女性の行方不明や殺人を非常事態と呼びかけ

 マニトバ州南部にある州都ウィニペグで12月上旬、先住民族のリーダー、家族、支持者など100人以上が集まり、近年国内で耐えなく続いている先住民女性の行方不明事件や殺人事件についてカナダ政府に非常事態宣言を呼びかけた。残念ながらこのような事件は今に始まったことではない。

 2014年のRoyal Canadian Mounted Policeの調査によると1980年から2012年の間、およそ1,200人が行方不明または殺されていたことがわかっている。悲しいことに女性だけでなく先住民男性も被害にあっているのが現状だ。カナダでは今までに裁判にかけられた殺人犯たちが白人裁判員らによって無罪を言い渡されたケースもあり、先住民コミュニティーは犠牲者たちへの平等な正義を求めている。

記者コメント
 カナダの先住民族の生活は貧困国並みと言われています。親や祖父母の世代に経験された同化政策のトラウマによりアルコールや薬物中毒に溺れる人たちが多いのです。その家庭の子供たちが苦しい環境から逃れようと家出をした結果、このような事件に巻き込まれることが後を絶たないそう。政府が現状を認め援助することを願います。

NEWS 10
トロント国際映画祭(TIFF)が3年ぶりに有観客で開催

 コロナ前には毎年50万人近くもの観客で大賑わいだったTIFF。コロナ禍のシャットダウンやバーチャルスクリーニングなどを経て、今年9月に3年ぶりに完全有観客で実施された。

 レッドカーペットにはダニエル・ラドクリフ、テイラー・スイフト、ザック・エフロン、ハリー・スタイルズなど超有名セレブが登場し観客を賑わせた。
 毎年TIFFの最高賞、People’s Choice Award(観客賞)を受賞した作品が米アカデミー賞作品賞の有力候補になっていることが有名。そのためTIFFでの評価は大変注目されている。今年はスティーブン・スピルバーグが自ら監督した半自伝の『The Fabelmans』が受賞。

 他には是枝裕和監督の『ブローカー』や第92回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた『ナイブズ・アウト』の続編など、数々の注目作が上映された。

記者コメント

NEWS 11
地方選挙2022:マイノリティ市議会議員の活躍が期待される

 10月下旬、トロントの地方選挙が行われ、現職のジョン・トーリー市長が再当選した。トーリー氏は2014年に初当選、2018年に再当選。今回の再選でトロントの歴代最長の市長となる。

 地方選挙では他に9人の市議会議員が選ばれた。そのうち7人は初当選。マイノリティが多く選ばれ話題を呼んだ。中にはヒジャブをつけたムスリム教徒のアウスマ・マリック氏、黒人男性でゲイであることを公表している元トロント・スクールボード理事のクリス・モイス氏、チリから幼少期にカナダへ移民してきたアレハンドラ・ブラボー氏などがいる。

 今までのトロント市議会議員は白人男性が圧倒的に多く、年齢層も高かった。そのため今回の選挙でマイノリティや若い議員が選ばれたことで、やっと市民の人口を反映し、彼らを代表するリーダーシップが生まれたことが祝われた。

記者コメント
 今トロントは家賃の高騰や長年続くホームレス問題の解決など多数の課題に向き合っています。12月中旬、Bill 39が市議会議員の反対を押し切り可決されました。この法律により多数決で市議会では物事を決めるのではなくトロント市長とオタワ市長に権限が渡されることになります。反民主主義とも見られるこの法案の影響が心配されます。

NEWS 12
カナダ初、「ミシュランガイド」がトロント版を発表

 1900年に始まり、世界35カ国の3000件以上ものレストランを評価してきた「ミシュランガイド」。今年9月に初めてカナダに上陸し、トロント版が発表された。二つ星レストランが1軒、一つ星レストランが12軒誕生した。星がついた13軒のうち、なんと5軒が日本料理店だった。

 唯一二つ星を得たのはYorkvilleにあるSushi Masaki Saito。1997年以来導入されたビブグルマンのカテゴリー(価格以上の満足感が得られる料理を提供する店)では17軒がトロントから選ばれ、12軒がバンクーバーから選ばれた。

 おすすめレストランのカテゴリーでは44軒が掲載され、合計74軒のレストランが選出された。「ミシュランガイド」に選ばれるには素材の質、調理技術と味付けのテクニックの高さ、独創性、コストパフォーマンス、安定した料理全体の一貫性の5つの評価基準がある。

記者コメント
 5軒もの日本食料理店にミシュラン星がついたのはすごいこと。20年前までは外国で日本食というと寿司と照り焼きしか知られていなかったです。今では天ぷら、ラーメン、うどん、お好み焼き、たこ焼き、焼き鳥、丼ものなど、外国人のボキャブラリーはとても豊かになりました。これからのトロント日本食界の活躍が楽しみです!