第21回 カナダ市場にも忍び寄る 景気後退(リセッション)の日|みらいのカナダ株式投資大作戦

第21回 カナダ市場にも忍び寄る 景気後退(リセッション)の日|みらいのカナダ株式投資大作戦

今回は景気後退・リセッション(Recession)の話題を紹介します。
 あなたは最近SNSや経済系のニュース記事で景気後退の話題を目にしたことはありませんでしたか?もしくは「逆イールド(Inverted Yield)」という言葉を見かけたことは?

 例えば、2022年3月13日付の東洋経済ONLINEの記事にて、ゴールドマンサックスが「アメリカが1年後に景気後退となる確率は20~35%」と報じられています。

 現在はまだまだ好景気、ですが景気のピークはすでに超えているのかもしれません。

 そこで今回のお話は、特にカナダ市場において、過去の景気後退・リセッションについて紹介します。では一緒にみていきましょう!

リセッション(景気後退)とは?

 リセッションとは景気の拡大が一時的に停滞または縮小してしまう状況です。リセッションがさらに深刻化すると不況と呼ばれます。

 筆者が調べた限り、カナダでのリセッションの定義はアメリカと同じで、国内総生産が2四半期連続で前期を下回った状況です。

 カナダでは1962年から2022年までに5回(1981年、1991年、2008~2009年、2014年、2020年)のリセッションがありました。

 1981年と2008~2009年のリセッションは日本やアメリカも含む世界的なものです。一方、1991年と2014年のリセッションは原油価格の崩壊が原因とされていて、カナダの産業構造ならではと言えますね。

なぜリセッションの話題なの?

 ところで、なぜここにきてリセッションの話題なのでしょうか?理由の1つに「国債の利回り(金利。英語でYieldと言います)」が将来のリセッションを暗示する状況に近づいている点が挙げられます。

 国が発行する債券(国債)には早くお金を返すものから、遠い将来にお金を返すものまで、運用期間の長さに応じていくつかの種類があります。例えば、2年債は発行から2年でお金を返す、運用期間の短い債券。10年債は発行から10年でお金を返す、運用期間の長い債券です。

 一度発行された債券は市場で取引されますので、各債券の利回りは市場参加者の見通しに応じて動いていきます。

 通常、運用期間の長い債券ほど、金利が大きくなります。運用期間が長いほど、将来の不確実性が高いので、より多くの利子をつけないと、債券を買ってくれる人がいないためです。

 しかし、運用期間の長い債券の利回りが、運用期間の短い債券の利回りより低くなる場合があります。これが「逆イールド」です。

 カナダ国債の金利を見ると、2年債と10年債の金利差は0.390%(2022年3月15日時点)で、1年前の1.229%からだいぶ縮小してきました。つまり、逆イールドには至らないけども、逆イールドを意識するほどに債券の金利差がなくなってきた(短期債も長期債も同じ金利に近づいてきた)という状況です。

ここで、大切なポイントです。

 過去のカナダのリセッションは、アメリカと同様に逆イールドから1~2年後に生じる場合がありました。つまり、逆イールドの発生は、近い将来のリセッションを暗示するもので、だからこそ今景気後退に関する話題がぽつりぽつりと出始めているのです。

 ちなみに、カナダ国債の逆イールドは、アメリカのそれに比べてそこまで予言性が高くありません。例えば、2014年のリセッションは逆イールドを伴いませんでした。

 とはいえ、「将来の景気後退を警戒したほうが良い状況」とは言えるかもしれませんね。

わたしたちはリセッションにどう備える?

 さて、一番大切なのはここですよね。わたしたちはリセッションにどう備えればよいのでしょうか。TD Bankの記事(https://www.td.com/ca/en/personal-banking/articles/recession-canada/)からざっくり略して紹介しますね。

□ クレジットカードの借金は避ける
□ 収入が減ると支払いが難しくなるので、ローンは早めに完済する
□ 収入が減った時のために貯蓄を積み立てる
□ 投資は自信を持ち、感情に流されない

 皮肉なことに、一人ひとりが景気後退に備えるほど、それが景気にブレーキをかけてリセッションを招いてしまう可能性があります(予言の自己成就と言います)。

 とはいえ、定期的に「収入に困った時のお金(いわゆる生活防衛資金)は準備できているか」「投資でリスクを取りすぎていないか」と見直しておくと、どんな時も堅実に資産形成を継続できるように思います。

 どんな時も投資し続けられる準備はできていますか?わたしはさっぱりです(笑)。