「未経験の国際関係部署への人事異動」伊藤尚峰さん 在トロント日本国総領事館(カナダ駐在歴3年)|私のターニングポイント第6回

 現在トロント総領事館で、経済分野の現地情報の収集、連邦政府や州政府との意見交換、オンタリオ州内の日本企業への支援などを担当している伊藤さん。もし人生をやり直せるなら大学時代に戻り、海外へ一歩踏み出すことを怖がっていた自分の背中を押してあげたいと語る、その思いとは。

霞が関への異動希望が叶わず、何度も悔しい思いをした新社会人時代

 私はもともと国内の経済官庁へ入省し、最初の配属も地方の事務所でした。採用時に人事担当から入省2,3年後には必ず本省へ異動になると言われ、各県の同期が続々と東京に集まる中、自分だけはなかなか異動できずに悔しい思いをしました。しかし、地方を去る時に初めて、自分は必要があってそこに留め置かれていたことを上司から教えてもらいました。

 その経験から、たとえ夢や希望がすぐに叶わなくても、自分の居場所には何か分からずとも果たすべき役割がある、だからその場所でやれることをやれるだけやっていこう、その後には見えなかった最善の道が必ず開けてくる、というように考えるようになり
ました。

英語を扱う業務・海外に出向したい気持ちの芽生え

 霞が関の本省へ異動した後もしばらくは日本国内の政策を企画立案する部署で働いていましたが、あるとき突然、国際関係部署へ異動になりました。異動の希望を出していたわけでもなく、まさに晴天の霹靂です。大学も法学部でしたし、留学経験もなく、その時点では海外旅行にすら行ったことがありません(笑)。あえて言えば、高校時代に取得した英検準2級が要因だったのかもしれません。

APEC会場にて
APEC会場にて

海外に行ったこともない、留学経験もない中で国際関係部署へ

 2年目に入った頃、APEC(アジア太平洋経済協力)の分野別の大臣会合を私が勤務する省庁でも開催することになりました。当時はまだ英語をまったく話せず裏方業務を担当したのですが、会場ではいつも一緒に仕事をしている先輩方が、英語で談笑しながら各国の大臣をエスコートしていく姿を目の当たりにしました。皆さん海外経験がある方ばかりで、その姿にただ単純に憧れを抱いたわけですが、その頃から、自分も英語を扱う業務をやってみたい、いつかは海外ポストへ出向してみたい、自分の可能性をもっと広げてみたいと考えるようになりました。

英会話の先生と
英会話の先生と

 それから大学以来の英語の勉強を再開し、英会話学校にも通い始めました。そしてほぼ同時に業務でカナダを担当することになり、初めての海外出張もオタワで計3回行きました。

ナイアガラにて
ナイアガラにて

 いつだったか、乗継地のピアソン空港に到着する前、飛行機の窓から水面が輝くオンタリオ湖と高くそびえるCNタワーを見ながら、「このような素敵な都市で勤務してみたい」と疲れながらに思ったこと記憶しています。公務員もサラリーマンなのでどこへ行くかは自分で決められないのですが、奇しくもその時の思いが、今まさにこうして総領事館への出向という形で実現できていることは、本当に不思議なご縁をいただいたと思っており、仕事も余暇も充実した日々を過ごしています。

出張先のカンボジア
出張先のカンボジア
グロスモーン国立公園
グロスモーン国立公園
2002~2007年 某経済官庁の地方事務所で勤務
2007~2009年 霞が関の本省で国内政策を担当
2009~2018年 国際関係部署で二国間経済、途上国
        支援、国際機関、国際会議など
        幅広い分野を担当
2018年~現在 在トロント総領事館へ出向

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

70点 自分が100点のパフォーマンスを発揮できる時は、周りの協力があってこそ。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 大学時代。海外へ一歩踏み出すことを怖がっていた自分の背中を押してあげたいです。そうしたら、もっと早く海外の面白さを知ることができ、もっと早くトロントでの素晴らしい生活に出会えていたかもしれないですね。

■ 学生時代のエピソード

 とにかく真面目でマイペース。朝起きたら何も考えずに学校に行って、何も考えずに帰って来て寝る感じです。そのおかげか、通学に1時間以上かけた高校3年間は皆勤賞でした。

■ 人生で大切なことは?

 旅行。日本の国内外、先進国、途上国を問わず、各地の自然や歴史、人々の暮らしに触れることで、自分の仕事や生活、趣味などすべてにおいて新たなインスピレーションが得られると考えています。

■ 将来の夢・ライフプラン

 いまはまだ独身なので、まずは心の支えとなる家族を得られればと考えています。それが叶ったら、ワークライフバランスを大切にしながら四季の移ろいを日々感じられるような生活を送ることができたらいいですね。また、食べることが好きなので、いつの日か世界一周食べ歩きの旅にも出てみたいです。

-座右の銘: すべては時間が解決する。
-好きな本:『老人と海』(ヘミングウェイ)、『三国志』(横山光輝)、『ラオスにいったい何があるというんですか』(村上春樹)
-尊敬する人: 何事にも動じず冷静な人。自分は何かとビビリなので。
-感謝している人と一言メッセージ: 両親。「いつも遠くから何も言わずに見守ってくれてありがとう」
-カナダの好きなところ:厳しい冬の寒さと都会の中の大自然。